第30話 悪徳商人への【監査】と、最新端末『アビッドパッドS80』による逆転劇
東の商業都市の裏路地にある、今にも潰れそうな治療院。
若き院長ルークは、ガタガタと震えながら扉を見つめていた。
(あと一時間で、悪徳商人のガルダが借金の取り立てにやってくる……。もう終わりだ……)
絶望に打ちひしがれていたその時。
コンコン、と丁寧なノックの音が響き、治療院の扉が開いた。
「ルーク院長ですね。ウェブサイトからのSOS、確かに受信しました」
そこに立っていたのは、借金取りのゴロツキではない。
真紅のスタイリッシュなロングコートを身に纏った5人の男女――特務支援チーム【REDANGEL】だった。
「あ、あなたたちは……! 本当に、あの電子看板から……!?」
「はい。我々は【福祉コンサルティングRED】。あなたの経営の悩みに寄り添い、共に歩む伴走者です」
リーダーのコイケが爽やかに微笑み、ルークに温かいコーヒーを差し出した。
「まずは落ち着いて、お話を聞かせてください」
タダとアンドウの巧みなメンタルケアによって心を開いたルークは、これまでの経緯を涙ながらに語った。
治療院を開いたばかりで経営の知識がなかったルークは、ガルダ商会から「最高級の回復薬草」を市場価格の百倍で買わされるという悪質な契約を結ばされてしまったのだ。
「なるほど。典型的な、若手事業主を狙った【詐欺まがいの押し売り】ですね」
サブリーダーのミクニが、ルークから預かった契約書と帳簿の束を手に取った。
その時だった。
バンッ!!
治療院の扉が乱暴に蹴り開けられ、下品な装飾品をじゃらじゃらとぶら下げた太った男が入ってきた。悪徳商人のガルダだ。
背後には、いかにも凶悪そうな用心棒を十人ほど引き連れている。
「ひゃははっ! 時間だぜルーク! 金が払えねえなら、この治療院の権利書と、お前の両腕を――ん?」
ガルダは、ルークを守るように立つ真紅のコートの5人組を見て鼻で笑った。
「なんだこの派手なコスプレ集団は? ルークの友達か?」
「我々は彼の経営コンサルタントです。ガルダ商会ですね、あなた方の契約には重大な瑕疵が存在します」
コイケが一歩前に出て、懐から一枚の真新しいタブレット端末を取り出した。
レクト理事長から前線部隊にのみ支給された、最新鋭の高スペック魔導端末『アビッドパッドS80』である。
「なんだその薄っぺらい板は? 魔法の盾にでもなるつもりか!」
ガルダが嘲笑う中、コイケはアビッドパッドS80のカメラを契約書と薬草に向け、瞬時にスキャンを実行した。
ピィンッ。
『アビッドパッドS80』の高性能な処理能力と、レクトが組んだ【AI監査アプリ】が即座に解析結果を空中に投影する。
【Scan_Result:契約書の金利設定が大陸商法第42条に違反(違法高金利)】
【Item_Analysis:納品された『最高級薬草』の成分は、その辺に生えているだだの雑草(偽装品)と判明】
空中に浮かび上がった真っ赤な警告文に、ガルダの顔が引き攣った。
「なっ……!? なぜ納品した薬草の成分が一瞬で……! い、いや、ただの幻影魔法だ! そんなデタラメな証拠が通じるか!」
「デタラメではありません。このデータはすでに、この都市の商業ギルドと衛兵隊の本部にリアルタイムで共有(クラウド送信)されています」
ミクニがアビッドパッドの画面をタップしながら冷徹に告げる。
「詐欺、優越的地位の乱用、そして違法金利。ガルダ商会は本日をもって営業停止ですね」
「おのれぇぇっ! ふざけるな、こうなったら証拠ごと全員消してやる! やれッ!」
ガルダが叫び、用心棒たちが一斉に武器を振り上げて襲いかかってきた。
「ルーク院長、下がっていてください。――タダノ、アンドウ、対象の排除を」
コイケの指示と同時だった。
「「了解!」」
【Application_Start:Asset_Freeze(資産・物理凍結)】
タダノとアンドウがアビッドパッドを操作すると、用心棒たちの足元から光の鎖が発生し、一瞬にして全員を床に縫い付けた。
「ぐわぁぁぁっ!?」
「な、なんだこの魔法は!? 動けねぇっ!」
暴力による制圧など、最新のIT魔導システムを駆使する【REDANGEL】の前では無意味な攻撃でしかない。
「ひぃぃぃっ! ば、化け物……!」
腰を抜かして逃げようとしたガルダの首筋に、コイケが冷たい声とともに契約破棄の同意書を突きつけた。
「さあ、ガルダ代表。この【契約無効および損害賠償合意書】にサインを。さもなくば、あなたの商会の裏帳簿もすべてAIで解析し、全財産を差し押さえますよ」
「サ、サインします! サインしますぅぅぅっ!」
ガルダは泣き叫びながら同意書に署名し、駆けつけた衛兵隊によって用心棒ともども連行されていった。
あっという間の逆転劇に、ルークは呆然と立ち尽くしていた。
「借金が……無くなった……。僕の治療院は、助かったの……?」
「ええ。悪性のウイルスは駆除しました。ですが、ルーク院長」
コイケが振り返り、ルークの肩に優しく手を置いた。
「我々の仕事は、借金をチャラにして終わりではありません。あなたが二度と悪徳商人に騙されず、この治療院を立派に経営していけるよう……今日から本格的な【伴走】を始めます」
「コンサルティング……!」
「まずは在庫管理システムの導入と、無駄の多い治癒魔法のコード最適化です。我々と一緒に、頑張りましょう」
コイケの力強くも温かい言葉に、ルークはついに大粒の涙をこぼし、深く頭を下げた。
「はいっ……! よろしくお願いします、REDの皆さん……!」
【日本創紀学園・理事長室】
「うん、アビッドパッドS80の現場での挙動は完璧だな。AI監査アプリのレスポンスも申し分ない」
俺はデスクのモニターでルークの治療院の様子を監視しながら、満足げにコーヒーをすすった。
「コイケたちも、すっかり一人前のコンサルタントの顔になった。これなら、大陸中のどんな依頼が来ても任せられるな」
新たに支給した最新端末と、確固たる【伴走】の理念。
福祉コンサルティングREDの快進撃は、ここからさらに加速していくのだった。
【キャラクター・プロフィール】
【レクト】
役割:主人公(日本創紀学園・理事長)
状況:前線のREDANGELに最新鋭端末『アビッドパッドS80』を支給。遠隔で彼らのコンサルティングと戦闘を見守り、システムの完璧な動作に満足している。
【コイケ】
役割:特務支援チーム【REDANGEL】リーダー
状況:アビッドパッドS80を駆使し、悪徳商人の契約を秒速で論破。対象者をただ救うだけでなく、自立に向けた「真の伴走」をルークに約束する頼れるリーダー。
【ガルダ】(New)
役割:悪徳商人(ざまぁ完了)
状況:世間知らずの若者を騙して治療院を奪おうとしたが、REDANGELのAI監査アプリの前にすべての不正を暴かれ、資産凍結アプリで物理的にも縛り上げられて衛兵に連行された。
【ルーク】
役割:治療院の院長(コンサル対象者)
状況:絶望の淵から救い出され、コイケたちの温かい伴走支援に涙する。今後はREDの指導の下、立派な経営者へと成長していく予定。




