第29話 【ウェブサイト】の開設とキャッチコピー。そして新たなるSOS
ガメル子爵の領地での【伴走型コンサルティング】が成功し、スラムに放置されていた引退騎士たちは見事に社会復帰を果たした。
領地の生産性は劇的に向上し、ガメル子爵は今やアカザワの指導を涙ながらに有り難がる、熱心な優良領主へと生まれ変わっていた。
日本創紀学園の理事長室で、俺は財務顧問のアカザワと共に、次なる展開について話し合っていた。
「理事長。ガメル領での成功の噂は少しずつ広まっていますが、まだまだ我々の【福祉コンサルティングRED】の存在を知らない者は多いです」
アカザワが、タブレット端末で大陸の地図を示しながら言う。
「ああ。本当に支援を必要としている経営者や領主たちに、俺たちの理念を正確に届ける手段が必要だな」
俺は空中にシステム画面を展開し、新たな情報発信ツールの構築を始めた。
「以前、小説を配信するために作った【Nコード】のネットワーク網を活用して、我々の【ウェブサイト】を開設する」
「うぇぶさいと……ですか? それは、どのような魔法陣なのでしょうか」
「簡単に言えば、大陸中の誰もがアクセスできる、魔法の『電子看板』兼『案内所』だ」
俺は【生成AI】を起動し、サイトのレイアウトを一瞬で組み上げていく。
清潔感があり、信頼を直感的に感じさせる白と赤を基調とした美しいデザイン。
そこに、我々の事業内容である【居宅介護】【移動支援】、そして経営を根本から立て直す【伴走型コンサルティング】の案内を配置する。
「素晴らしい……! 瞬時にこれほど美しく、情報が整理された案内板ができるとは!」
アカザワが目を輝かせるが、俺は一つだけ空白にしてあるメインの【ヘッダー画像】を指差した。
「デザインはこれでいいが、一番目立つ場所に掲げる【キャッチフレーズ】が必要だ。これを見た経営者の心を一瞬で掴むような言葉がな」
「キャッチフレーズ、ですか。では、『我々があなたの領地をすべて完璧に支配します』というのはいかがでしょう?」
「ダメだ。それじゃあただの乗っ取りだろ」
俺は苦笑しながら首を振った。
「俺たちが目指しているのは、最初から最後までお膳立てをしてやる『過保護な支配』じゃない。相手が自立して歩けるようになるまで、隣で一緒に汗をかくことだ」
俺はキーボードを叩き、一つの言葉をメインスクリーンに打ち込んだ。
【事業主の孤独に寄り添い、共に歩む。――福祉コンサルティングRED】
「……っ!」
その言葉を見た瞬間、アカザワの瞳が大きく見開かれた。
「『共に歩む』……。経営者や領主というものは、常に孤独な決断を迫られ、一人で重圧を抱えているものです」
アカザワは胸に手を当て、深く感銘を受けたように息を吐いた。
「ただのコンサルタントではなく、共に悩み、共に解決へと向かう【伴走者】……。これほど彼らの心に刺さるキャッチフレーズはありません!」
「よし、これでサイトは完成だ。全大陸のネットワークに向けて、公開!」
ピィンッ。
俺がボタンを押した瞬間、【福祉コンサルティングRED】の公式ウェブサイトが大陸全土の魔導具端末に向けて一斉に発信された。
【一方その頃】
学園から遠く離れた、東の商業都市の片隅。
一人の若い治癒士の青年が、今にも潰れそうなボロボロの【治療院】のカウンターで頭を抱えていた。
「どうして……どうしてこんなことに……」
青年の名は、ルーク。
彼は純粋に人々を救いたいという一心で治療院を開いたが、経営の知識が全くなかった。
悪徳商人に高額な薬草を売りつけられ、借金は雪だるま式に膨れ上がり、明日の食事すら事欠く有様だった。
「僕の治癒魔法じゃ、もう限界なのか……。このままじゃ、明日には借金取りにこの場所を奪われてしまう……」
ルークが絶望の涙を流しながら、手元の古い通信魔導具に触れた、その時だった。
パァァァッ……!
魔導具の画面が突然切り替わり、見たこともないほど美しく洗練された【ウェブサイト】が表示された。
『事業主の孤独に寄り添い、共に歩む。――福祉コンサルティングRED』
「共に、歩む……?」
ルークは、その力強くも温かいキャッチフレーズに、吸い寄せられるように画面の文字を読み進めた。
そこには、経営の立て直しから現場の改善まで、あらゆる悩みを解決する【伴走型コンサルティング】の案内が書かれていた。
「これだ……! この人たちなら、僕の治療院を……僕の夢を救ってくれるかもしれない……!」
ルークは震える指で画面に触れ、【お問い合わせフォーム】に決死のSOSを書き込んだ。
【送信】
【日本創紀学園・理事長室】
ピロリンッ。
俺のデスクにあるタブレットから、軽快な通知音が鳴った。
画面には『新規のお問い合わせ:1件』と表示されている。
「さっそく釣れたな。東の商業都市にある治療院の院長……経営破綻の危機で、助けを求めているらしい」
「素晴らしいレスポンスです、理事長。すぐに我々が向かいましょうか?」
アカザワが即座に立ち上がるが、俺はインターホンを押して特務部隊を呼び出した。
「いや、ここは彼らに任せよう。――コイケ、いるか?」
「ハッ! 【REDANGEL】、待機しております!」
扉が開き、真紅のコートを纏ったコイケたち5人の天使が、一糸乱れぬ動きで入室してきた。
「東の都市で、経営に苦しむ若い院長がSOSを出している。お前たち5人で現場に急行し、初期ヒアリングと【伴走型コンサルティング】を開始してこい」
「了解いたしました! 対象者の孤独を取り除き、共に歩む支援を提供してまいります!」
敬礼を交わし、力強く出撃していく【REDANGEL】の背中を、俺とアカザワは頼もしげに見送った。
俺の構築した【ウェブサイト】という名の希望の光は、こうして大陸中の孤独な事業主たちを救い上げていくのだった。
【キャラクター・プロフィール】
【レクト】
役割:主人公(日本創紀学園・理事長)
状況:Nコードのネットワークを活用し、【福祉コンサルティングRED】の公式ウェブサイトを開設。『共に歩む』という伴走型の真髄を突いたキャッチフレーズで、大陸中の悩める事業主に向けて完璧なプロモーションを仕掛けた。
【アカザワ】
役割:財務顧問 兼 コンサルタント
状況:レクトの考案したキャッチフレーズに、ビジネスのプロとして深い感銘を受ける。学園の事業を拡大させることに無上の喜びを感じている。
【REDANGEL】
メンバー:コイケ、ミクニ、タダ、アンドウ、タダノ
状況:ウェブサイト経由で届いた初めてのSOSを受け、東の商業都市へと出撃。ただ戦うだけでなく、経営相談までこなす究極の特務部隊として活動の幅を広げている。
【ルーク】(New)
役割:治療院の若き院長(コンサル対象者)
状況:経営の知識がなく、悪徳商人に騙されて治療院が倒産寸前。絶望の淵でレクトの【ウェブサイト】を発見し、すがるような思いでお問い合わせフォームからSOSを送信した。




