第28話 【福祉コンサルティングRED】の始動。傲慢な領主と『真の伴走型』
学園祭の大成功と【一般社団法人】の設立から数日後。
日本創紀学園の理事長室には、俺と財務顧問のアカザワ、そして分厚い依頼書の山が置かれていた。
「レクト理事長。我々の福祉システムとAIの噂を聞きつけ、周辺の領主たちから『我が領地にも導入したい』という依頼が殺到しています」
アカザワが眼鏡を押し上げながら、一枚の依頼書をピックアップした。
「特にこの隣領の領主、ガメル子爵からの依頼は強引です。莫大な金を払うから、AIと魔導タブレットのシステム『だけ』を寄越せ、と言ってきています」
「システムだけ、ねえ」
俺は依頼書を一瞥し、ため息をついた。
「便利な道具だけを導入しても、扱う人間に『対象者に寄り添う心』がなければ、ただの搾取の道具になるだけだ」
「おっしゃる通りです。彼は領内で怪我をした引退騎士たちを『生産性のないゴミ』としてスラムに隔離しているという黒い噂もあります」
怪我や障害で動けなくなった者たちを切り捨てる。
それは、俺たちが掲げる【伴走型】の福祉理念とは対極にある、最も許しがたい行為だ。
「アカザワ。ただシステムを売るだけのビジネスはしない。俺たちが提供するのは、組織の根幹から意識を改革する【伴走型コンサルティング】だ」
俺はシステム画面を展開し、新たな事業部門の設立を宣言した。
「今日から、他領や他組織への指導・支援を専門に行う新部門、【福祉コンサルティングRED】を立ち上げる」
「素晴らしい……! 単なる物売りではなく、対象者が自立して運営できるようになるまで『共に歩む』究極のコンサル事業ですね!」
数日後。
俺とアカザワ、そして護衛の【REDANGEL】のメンバーたちは、ガメル子爵の領地へと直接出向いていた。
応接室で葉巻をくゆらせる肥満体のガメル子爵は、俺たちを見て下品に笑った。
「ひゃははっ! わざわざ学園のトップが出向いてくるとはな。で、あの便利なタブレットとやらは何台持ってきたんだ?」
「ガメル子爵。我々はシステムだけを売りに来たわけではありません」
俺の隣で、アカザワが静かに、しかし威圧感のある声で告げた。
「我々【福祉コンサルティングRED】は、あなたの領地の福祉体制を根底から見直し、共に改善していくための指導を提供しに来たのです」
「……ああん? コンサルだぁ?」
ガメル子爵が不機嫌そうに葉巻を灰皿に押し付ける。
「ふざけるな! 俺は領民を効率よく働かせる『道具』が欲しいだけだ! 特に、スラムで寝たきりになっている役立たずの元騎士どもを強制労働させるシステムをな!」
「寝たきりの方々を、強制労働、ですか」
アカザワの目が、スッと細められた。
「彼らには、適切な【重度訪問介護】と環境整備が必要です。それを怠り搾取しようとするあなたの経営方針は、完全に破綻しています」
「うるさい! 平民上がりの学園長と商人が、貴族である俺に説教する気か! ええい、こいつらから無理やり魔導具を奪い取れ!」
ガメル子爵が叫ぶと、部屋の奥から数十人の私兵たちが武器を構えて飛び出してきた。
だが、俺の背後に控えていた【REDANGEL】のコイケたちが、一瞬で私兵たちの前に立ち塞がった。
「対象者の安全と尊厳を脅かす者は、我々が排除する!」
コイケの号令とともに、5人の天使たちがタブレットを操作する。
ピィンッ!
【Application_Start:Non_Lethal_Suppressor(非致死性制圧フィールド)】
「ぐわぁぁぁっ!?」
私兵たちは一切の傷を負うことなく、不可視の重力場によって次々と床に縫い付けられ、一瞬で無力化されてしまった。
「ひぃぃぃっ!? な、なんだお前たちは!?」
腰を抜かして震えるガメル子爵の前に、俺とアカザワが歩み寄る。
「ガメル子爵。あなたのやり方では、領地はいずれ崩壊します」
俺は空中にシステム画面を展開し、【生成AI】に弾き出させた『ガメル領の未来予測シミュレーション』を投影した。
そこには、数年後に領民の不満が爆発し、暴動によってガメル子爵が処刑されるという真っ赤なデータが示されていた。
「な、なんだこれは……!? 俺が、処刑されるだと!?」
「これが現実です。ですが、今から我々の【伴走型コンサルティング】を受け入れ、正しい福祉体制を構築するなら、最悪の未来は回避できます」
アカザワが契約書を突きつけ、冷徹に選択を迫る。
「我々がスラムの引退騎士たちに【重度訪問介護】を行い、彼らが再び領地のために貢献できるシステムを構築してみせます。契約しますか、それともこのまま破滅しますか?」
「け、契約する! 何でも言う通りにするから、助けてくれぇぇ!」
完全にプライドを粉砕されたガメル子爵は、泣きながらコンサルティング契約書にサインした。
こうして、【福祉コンサルティングRED】の最初のプロジェクトが幕を開けた。
俺たちはスラムに放置されていた引退騎士たちを保護し、医療アプリと手厚い介護で彼らの心身を回復させていく。
「おお……! 動かなかった腕が……! 俺たちはもう一度、誰かの役に立てるのか……!」
涙を流して喜ぶ元騎士たちを見て、俺たちは確かな手応えを感じていた。
ただ道具を与えるだけではない、心に寄り添う【真の伴走】。
日本創紀学園の影響力は、こうして確固たる理念と共に、大陸全土を優しく包み込んでいくのだった。
【キャラクター・プロフィール】
【レクト】
役割:主人公(日本創紀学園・理事長)
状況:システムの切り売りを拒否し、組織の根幹から改善する【福祉コンサルティングRED】を設立。傲慢な領主をAIのシミュレーションと圧倒的武力で分からせ、真の福祉を叩き込んだ。
【アカザワ】
役割:財務顧問 兼 コンサルタント
状況:レクトの右腕として、悪徳領主に冷徹な事実を突きつけて論破する。伴走型支援のプロフェッショナルとして、他領の経営指導にも辣腕を振るう。
【ガメル子爵】
役割:隣領の領主(ざまぁ完了・コンサル対象)
状況:怪我人を使い捨てにするブラック領主だったが、REDANGELに私兵を秒殺され、AIの破滅予測を見せられて完全降伏。現在はアカザワの厳しい指導の下、泣きながら領地の福祉改革に取り組まされている。




