第3話 デバッグ完了、そして忠誠の誓い
少女の体に刻まれた、赤黒い紋章。
それは、見る者の精神を削るような禍々しい輝きを放っていた。
【Target: Ciel / Curse: Eternal_Death_Sentence / Time_Limit: 120sec】
「あと2分か。……よし、書き換えるぞ」
俺は少女の胸元に手をかざし、頭の中に展開されたソースコードを指でなぞる。
【Eternal_Death_Sentence(永遠の死の宣告)】
この最悪な文字列を、俺は一気にデリートした。
そして代わりに、現代知識を応用した最適解を入力する。
【Action: Overclocking_Regeneration(超加速再生)】
直後、少女の体が淡い黄金の光に包まれた。
ひどい裂傷がみるみるうちに塞がり、毒に冒されていた肌に赤みが戻っていく。
「ふぅ……。ひとまず、これで死ぬことはないはずだ」
俺が息を吐くと同時に、少女がゆっくりと瞼を開けた。
「……ここは、冥府……?」
「いや、残念ながらまだ現実だ。気分はどうだ?」
俺が声をかけると、少女――シエルは驚いたように跳ね起きた。
そして自分の体を見回し、さらに周囲に目を向ける。
そこには、すやすやと眠りこけているSランクの魔竜の姿。
「死の呪いが……消えている? それに、あのデス・ドラゴンを、あなたが……?」
シエルの瞳に、信じられないものを見るような驚愕の色が浮かぶ。
「ああ、ちょっとした【バグ】を利用してな」
「バグ……? ……わかりませんが、あなたが私の命を救ってくださったのは理解しました」
シエルはよろよろと立ち上がると、俺の前に跪いた。
銀色の髪がさらりと流れ、彼女は真剣な眼差しで俺を見上げる。
「私は神狼族のシエル。この御恩、一生をかけてお返しいたします」
「いや、そんな大げさな……」
「いいえ。死を待つのみだった私に、新たな生をくださった。今日から、あなたは私の『主』です」
どうやら、とんでもなく重い忠誠を誓われてしまったらしい。
だが、この魔境で生きていくなら、土地勘のある彼女の協力は不可欠だ。
「わかった。じゃあ、まずはこの物騒な場所を、もう少し住みやすく【翻訳】するとしようか」
俺は、荒れ果てた大地を「理想の拠点」に作り変えるべく、再びシステム言語に手を伸ばした。
【キャラクター・プロフィール】
【レクト】
役割:主人公
職業:翻訳家
能力:【バグ修正】。今回は即死の呪いを「超再生」に書き換えるという、医療の常識を覆す力を見せた。
【シエル】
役割:メインヒロイン
種族:神狼族
年齢:外見16歳前後
性格:生真面目で義理堅い。自分を救ったレクトに対し、絶対的な忠誠心と、それ以上の「執着」を抱き始めている。
【新設定:魔境のシステムコード】
名称:【Eternal_Death_Sentence(永遠の死の宣告)】
概要:解呪不能とされる古代の呪い。対象の生命維持システムを強制終了させるコード。レクトによってデリートされ、跡形もなく消滅した。




