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第26話 帝国の崩壊と【相談室】。そして皇帝への『伴走型』コンサルティング

ガルディア帝国が、「ホワイトな労働環境」と「Web小説」の前に内部崩壊を起こしてから数日。

日本創紀学園の正門前に、ボロボロの衣に身を包んだ一人の老人が倒れ込んでいた。

「……腹が……減った……。誰か、パンを……」

監視モニターでその姿を発見した特務支援チーム【REDANGEL】のコイケたちが、すぐさま対象者を保護し、学園内へと運び込んだ。

「理事長。保護した対象者ですが……信じられないことに、ガルディア帝国の皇帝本人です」

理事長室に報告に来たコイケの言葉に、俺は少しだけ目を見張った。

「国民や兵士だけでなく、皇帝まで国を捨ててやってきたのか?」

「はい。誰もいなくなった広大な城で、餓死寸前だったようです。今は食堂でラーメンとコーラを与え、落ち着かせています」

かつては大陸の半分を支配し、俺たちの学園を力で潰そうとしていた敵国のトップ。

普通ならここで首を刎ねるか、一生牢屋にぶち込むのが異世界のセオリーだろう。

「よし。とりあえず、新設した【相談室】に案内してくれ。俺とアカザワで話を聞く」

俺は立ち上がり、隣のオフィスから財務顧問のアカザワを伴って、学園の【総合相談室】へと向かった。

そこは、対象者がリラックスして悩みを打ち明けられるよう、温かみのある照明と観葉植物が配置された、完璧なカウンセリングルームだ。

ソファーでは、皇帝がラーメンのスープを一滴残らず飲み干し、涙を流して震えていた。

「お……美味しい……。朕はこれまで、これほど心に染み渡る美食を口にしたことがなかった……」

「落ち着きましたか、皇帝陛下。俺がこの学園の理事長、レクトです」

俺が声をかけると、皇帝はビクッと肩を震わせ、ソファーから転げ落ちるようにして土下座した。

「ひぃぃっ! レ、レクト殿! どうか、どうか命だけはお助けを……! 朕が愚かであった! あなたの力を侮り、暗殺者などを差し向けた罪は、いかようにも償う……!」

完全にプライドをへし折られ、ただの哀れな老人となった皇帝。

俺は空中にシステム画面を展開し、一枚の書類を呼び出した。

「顔を上げてください。俺たちは、あなたを裁くためにここに呼んだわけじゃありません」

「え……?」

「今回の帝国の崩壊は、学園の運営における特大の【ヒヤリハット(重大事故の一歩手前)】として処理します。まずは、この【事故報告書】の作成に協力してもらえますか」

「じ、じこほうこくしょ……?」

俺とアカザワは、皇帝から「なぜ国が崩壊したのか」「どの時点で判断を誤ったのか」を丁寧にヒアリングし、システムに打ち込んでいく。

「なるほど。一部の貴族を優遇しすぎた結果、末端の兵士たちの不満が爆発し、そこにうちの『ホワイトな給与システム』の噂がトドメを刺したと」

「は、はい……。それに、八咫日本先生の小説のせいで……」

俺はペンネームの件はスルーしつつ、原因分析(なぜなぜ分析)を完了させた。

「状況は把握しました。帝国は現在、多額の未払い給与とインフラの崩壊で、莫大な負債を抱えていますね」

アカザワが冷徹に事実を突きつけると、皇帝は絶望に顔を覆った。

「終わりだ……我が国はもう、永遠に立ち直れん……」

「いいえ。終わらせませんよ」

俺の言葉に、皇帝が弾かれたように顔を上げる。

「俺がシステムで構築した、帝国の【再建計画】と【返済計画書】です」

俺は空中に、綿密なシミュレーションに基づいたスプレッドシートのグラフを投影した。

「我々【心と暮らし総合協会】が、帝国のインフラ整備と財務整理を全面的にバックアップします。無理のない長期の【返済計画】を組み、民衆が安心して働ける環境を再構築するんです」

「な、なぜだ……!? 敵国のトップであるこの朕を、なぜそこまでして助けようとする!?」

皇帝の震える声に、俺は微笑んで答えた。

「俺たちが掲げているのは、一方的な支配でも、施しでもありません」

「共に歩み、対象者が自立できるまで寄り添い続ける……【伴走型コンサルティング】です。あなたが本気で国をやり直したいと願うなら、俺たちは最強の【伴走者】になります」

皇帝の目から、堰を切ったように大粒の涙が溢れ出した。

「おおおっ……! レクト理事長……! あなたは、神だ……! 愚かなこの老いぼれを見捨てず、共に歩んでくれるというのか……!」

皇帝は俺の手を固く握りしめ、子供のように声を上げて泣き崩れた。

こうして、大陸最大の脅威であったガルディア帝国は、一滴の血を流すこともなく。

俺たちの完璧な【返済計画】と【伴走型コンサルティング】の下で、新たな平和な国家として生まれ変わることになったのだ。

「さて、大きな厄介事も片付いたし、そろそろ学園の文化祭の準備でも始めるか」

すべてを丸く収めた俺は、相談室を出て、よく晴れた異世界の空を見上げて大きく伸びをした。

チートスキルと現代の福祉・ビジネスの概念で無双する俺のスローライフは、これからも果てしなく続いていく。

【キャラクター・プロフィール】

【レクト】

役割:主人公(日本創紀学園・理事長)

状況:国を失った敵国の皇帝を【相談室】に招き入れ、処刑するどころか【事故報告書】を作成して原因を分析。さらに完璧な【返済計画書】を提示し、【伴走型コンサルティング】で国家再建を支援するという圧倒的な器の大きさを見せつけた。

【アカザワ】

役割:財務顧問

状況:レクトの作成した返済計画書のあまりの完璧さに舌を巻きつつ、皇帝へのヒアリングを的確にサポート。学園だけでなく、他国の再建まで担うことになり、仕事のやりがいに満ち溢れている。

【ガルディア皇帝】

役割:元・敵対国家トップ

状況:餓死寸前で学園に保護され、ラーメンの美味さに号泣。レクトの「共に歩む」という言葉に完全に心を救われ、今後は学園の熱心なコンサルティングを受けながら、ホワイトな国家作りに奔走することになる。

REDANGELレッドエンジェル

役割:最上位特務支援チーム

状況:倒れていた皇帝を迅速に保護。対象者が誰であろうと、完璧な手順で支援に繋げる彼らの行動は、もはや職人芸の域に達している。

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