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第17話 特権階級の【査察】と、おっさん職人のワンクリック無双

帝国の暗殺部隊を返品し、平和な日常を取り戻した創紀学園。

生徒たちの魔法技術は、俺が提供した【タブレット端末】と【アプリ開発環境】によって、凄まじい速度で進化していた。

そんなある日の午後。

「レクト理事長! 大変です、王都から保守派の貴族が【査察】にやってきました!」

アリシア王女が、少し慌てた様子で理事長室(俺のマイホームの隣に建てた快適なオフィスだ)に駆け込んできた。

「査察? 王国の干渉は受けないって約束だったはずだが」

「お父様(国王)は好意的なのですが、特権を奪われることを恐れた一部の古い貴族たちが、勝手に乗り込んできたようで……!」

俺が学園の入り口のモニターを確認すると、そこには豪華な馬車と、鼻持ちならない顔をした恰幅の良い貴族の男が映っていた。

結界のパスポート機能(来客用)を使って、すでに敷地内に入ってきている。

「まあいいさ。適当にあしらってくるよ」

俺がグラウンドに出ると、その貴族――バルザック子爵は、学園の設備や生徒たちを見て鼻で笑っていた。

「ふん。王女殿下が入れ込むから見に来てみれば……なんだこの下品な施設は」

「平民や、魔法も使えないような年老いた職人ばかりではないか。このようなゴミ箱に、王国の予算が使われているとは嘆かわしい!」

バルザック子爵は、熱心にタブレットを操作していた45歳の職人、ガンツを扇子で指差した。

「おい、そこの薄汚いおっさん。お前のような底辺の平民が、高貴な魔法を学べるなどと勘違いするな」

「ひっ……! も、申し訳ありません、お貴族様……!」

長年、身分制度に縛られてきたガンツは、反射的に体を縮こまらせてしまう。

そこへ、俺はゆっくりと歩み寄り、ガンツの前に立った。

「うちの優秀な生徒に、何か用ですか? 子爵サマ」

「貴様がここの理事長か。生意気な若僧め」

バルザックは俺をねめつけ、傲慢に言い放った。

「私は王国の魔法監査院のトップだ。身分も年齢も問わないなどという、王国の秩序を乱すふざけた校則は今すぐ撤廃しろ」

「そして、この学園のすべての管理権限を私に譲渡するのだ。さもなくば、王家への反逆とみなし、この学園を武力で解体する!」

どうやら、俺の作ったチート設備を合法的に乗っ取ろうという魂胆らしい。

俺はため息をつき、ガンツの肩をポンと叩いた。

「ガンツさん。さっき作ってた【あのアプリ】、もう動くか?」

「え……? は、はい。レクト理事長にコードを最適化していただいたので、完成していますが……」

「よし。じゃあ、ちょっとテストに付き合ってもらおうかな」

俺はバルザックに向き直った。

「あんた、魔法監査院のトップってことは、魔法の腕には自信があるんだろ?」

「当然だ! 私は宮廷魔法使いを凌駕する、王国屈指の炎魔法の使い手であるぞ!」

「じゃあ、魔法も使えないこの平民のガンツさんと、模擬戦をやってみてくれないか?」

俺の提案に、バルザックだけでなく、アリシアや他の生徒たちも息を呑んだ。

「理事長!? ガンツ殿は生活魔導具の職人です! 戦闘など……!」

アリシアが止めようとするが、俺は目で彼女を制した。

「もしガンツさんが負けたら、学園の権限はあんたに譲る。だが、ガンツさんが勝ったら、二度とこの学園に口出しするな。どうだ?」

「はははっ! 狂ったか理事長! 攻撃魔法すら使えない平民が、この私に勝てるわけがなかろう!」

バルザックは嬉々として杖を構え、ガンツと対峙した。

「さあ、底辺の平民よ! 我が究極の業火で、黒焦げにしてやろう! 【エクスプロージョン・フレア】!!」

バルザックの杖から、学園のグラウンドを焼き尽くさんばかりの巨大な火球が放たれた。

「ひぃぃぃっ!?」

ガンツは悲鳴を上げながらも、俺に言われた通り、手元のタブレット端末の画面をタップした。

彼が開発し、俺がバグで最適化したアプリ。

それは、【魔法の無効化】などというありきたりなものではない。

【Application_Start:Auto_Temperature_Controller(全自動室温調整システム)】

ピィンッ。

ガンツのタブレットが起動した瞬間。

バルザックが放った巨大な火球が、ガンツの目の前で「シュゥゥゥ……」という音と共に、一瞬にして冷気へと変換された。

「……なっ!?」

バルザックの目が限界まで見開かれる。

「あ、あれ……? 涼しい……?」

ガンツ自身も、迫り来る死の炎が、心地よい【クーラーの風】に変わったことに驚いている。

「馬鹿な!? 私の究極魔法が、ただのそよ風になっただと!?」

「室温を常に『22度』に保つアプリだからな。あんたの魔法の熱エネルギーを、全部【冷房の動力】に変換させてもらった」

俺が種明かしをすると、バルザックは顔を真っ赤にして激昂した。

「おのれぇぇ! ならば、これでどうだ!」

彼は今度は、巨大な土のゴーレムを召喚しようと地面に杖を突き立てた。

だが、ガンツはすでに次のアプリを起動していた。

【Application_Start:Auto_Cleaning_Robot(全自動お掃除ロボット)】

ウィィィィィンッ!

地面から隆起しようとした土のゴーレムが、ガンツの端末から発生した【不可視の吸引フィールド】によって、チリ一つ残さず「掃除」されてしまった。

「あ、私のゴーレムが……吸い込まれた……?」

「泥汚れはしっかり掃除しないとダメだぞ。ガンツさん、仕上げだ」

「は、はいっ! 【ゴミ捨て(パージ)】!」

ガンツがタブレットのボタンを押す。

ポンッ!

掃除機アプリの中に圧縮されていた大量の土砂が、バルザックの頭上からドサドサッと一気に降り注いだ。

「ぶべっ!?」

王国屈指の魔法使い(笑)は、平民の作った【お掃除アプリ】の前に、泥まみれになって無様に倒れ伏した。

「……勝負あり、だな」

俺が冷酷に見下ろすと、バルザックは震える手で泥を拭いながら、完全に戦意を喪失していた。

「ひぃぃ……! 平民が……指一本で、私の魔法を完全に……っ!」

「わかったら、二度と俺の生徒たちを侮辱するな。とっとと帰れ」

バルザックは半狂乱になって馬車に逃げ込み、逃げるように王都へと走り去っていった。

「や、やりました……! レクト理事長! 私が、お貴族様に……!」

ガンツがタブレットを抱きしめ、信じられないという顔で涙を流す。

「だから言ったろ。お前たち職人の技術は、古い魔法使いなんて軽く凌駕できるんだって」

学園中から、ガンツを称える割れんばかりの歓声が巻き起こった。

俺の創紀学園は、特権階級の古い常識すらも【ワンクリック】で破壊し、さらなる進化を遂げようとしていた。

【キャラクター・プロフィール】

【レクト】

役割:主人公(創紀学園・理事長)

状況:貴族の理不尽な査察に対し、生徒が作った生活家電アプリ(エアコンと掃除機)の概念で完封勝利を演出。生徒たちに「自分たちの技術は最強だ」という絶対の自信を植え付けた。

【ガンツ】

役割:創紀学園・生徒

状況:長年見下されてきた貴族に対し、自分の作った魔導アプリで見事なジャイアントキリングを達成。トラウマを完全に克服し、涙を流して喜んだ。

【バルザック子爵】(New)

役割:保守派の貴族(ざまぁ完了)

状況:学園を乗っ取ろうと乗り込んできたが、45歳の平民のおっさんが指一本で起動した【クーラー】と【掃除機】の前に手も足も出ず、泥まみれになって敗走した。

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