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第16話 【ZIP圧縮】と【送信元へ返送】。そして帝国の絶望と、平和な学園のバーベキュー

翌朝。

俺は日課の領地見回りを兼ねて、学園の正門脇にあるゴミ集積所へと足を運んだ。

そこには、昨日の夕方に【ゴミ箱】へとダンクシュートされた帝国の暗殺部隊たちが、下着姿のままガタガタと震えていた。

「あ、あぁ……悪魔……バグの悪魔が来た……!」

部隊長のヴァイパーとかいう男が、俺の顔を見るなり悲鳴を上げてゴミの山に潜り込もうとする。

「おいおい、そんなに怯えなくていいだろ。俺はただの心優しい理事長だぞ」

「嘘だ! 我々を一瞥もせずに全裸にしてゴミ箱に捨てた男が、優しいわけがない!」

まあ、確かに彼らにとってはトラウマものだろう。

とはいえ、いつまでもゴミストレージに不要なデータを入れておくのは、システムの容量の無駄だ。

「よし、ゴミ箱を空にしよう」

俺は空中にシステム画面を展開し、彼らを範囲選択した。

「ひぃっ!? や、やめてくれ! 消滅だけは……デリートだけは勘弁してくれぇぇぇ!」

暗殺者たちが一斉に土下座して命乞いを始める。

「安心しろ、殺しはしない。ただ、送り主のところに【着払い】で返品するだけだ」

俺はコマンドを入力した。

【Action:Zip_Compression(ZIP圧縮)】

「……え?」

ヴァイパーが間抜けな声を上げた次の瞬間。

暗殺部隊の数十名の体が、まるで掃除機に吸い込まれるようにギュルルルッと収縮し、一つの小さな【光る箱】の中に押し込められた。

箱には『assassins.zip』というラベルが貼られている。

「よし、あとはこれを……」

【Action:Return_to_Sender(送信元へ返送)】

ピィンッ。

俺が空中で箱を指先で弾くと、箱は光の粒子となって彼方の空へと飛んでいった。

これで学園のセキュリティと衛生管理は完璧だ。

【一方その頃】

ガルディア帝国の荘厳な玉座の間。

豪奢な椅子にふんぞり返る皇帝と、その傍らに立つ情報大臣は、勝利の美酒を味わっていた。

「そろそろ、ヴァイパーたちから吉報が届く頃合いだな」

「ええ、陛下。王国の希望である【創紀学園】は今頃、血の海に沈んでいることでしょう」

大臣が下卑た笑いを浮かべた、その時だった。

空間が突如として歪み、玉座の目の前に小さな【光る箱】が出現した。

「な、なんだあれは!?」

護衛の近衛騎士たちが慌てて剣を抜く。

箱の表面には、帝国語ではない未知の言語でメッセージが表示されていた。

【Unzip_Process_Started(解凍を開始します)】

ポンッ!

軽い破裂音と共に、光る箱が弾け飛んだ。

そして、中から大量の「何か」が、玉座の間の赤い絨毯の上にドサドサドサッ!と降り注いだ。

「な、なんじゃこいつらは!?」

皇帝が悲鳴を上げて後ずさる。

絨毯の上に折り重なるように倒れていたのは、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにし、無様な下着姿でガタガタと震える数十人の男たちだった。

「ひぃぃぃっ! ごめんなさい! もう絶対に逆らいません、どうかデリートだけはぁぁぁ!」

「ゔ、ヴァイパー!? お前、ヴァイパーなのか!?」

情報大臣は、自らが送り出した最強の暗殺部隊長のあまりにも無惨な姿に、目をひん剥いた。

「だ、大臣閣下……陛下……! あ、あそこはダメです……! 王国に、絶対に手を出してはなりません……!」

ヴァイパーは白目を剥きながら、皇帝の足元にすがりついた。

「あそこには……理を書き換える神がいます……! 我々の魔法も、国宝の短剣も、あの男の前では……ただの【バグ】に過ぎないのです……!」

その言葉を残し、ヴァイパーは完全に泡を吹いて気絶した。

玉座の間は、水を打ったような静寂に包まれた。

「最強の暗殺部隊が……傷一つつけられず、正気を失わされて送り返されてきた、だと……?」

皇帝の顔から血の気が引き、持っていたワイングラスが床に落ちて粉々に砕け散った。

帝国が、自分たちの隣に誕生した【絶対不可侵のバケモノ】の存在を悟り、恐怖のどん底に突き落とされた瞬間だった。

【そして、平和な学園では】

「理事長! このお肉、信じられないくらい柔らかいです!」

「主様! あーん、してください! あーん!」

帝国の絶望など知る由もない俺たちは、学園のグラウンドで盛大な【バーベキュー大会】を開いていた。

「こらシエル、理事長を困らせるんじゃない。ほらレクト様、私の焼いたお野菜もどうぞ」

俺が【システム】で錬成した極上の霜降り肉と新鮮な野菜を、最新鋭の無煙グリルで焼き上げる。

学園の第一期生であるガンツや、王女のアリシア、そして精霊たちも入り乱れての大宴会だ。

「しかしレクト理事長……この黒くて甘い液体は、一体何なのでしょうか? 飲むと喉の奥で弾けて、スカッとしますぞ!」

ガルド騎士団長が、【コーラ】の入ったグラスを片手に感動の涙を流している。

「それはコーラって言って、肉料理に最高に合う飲み物だ。好きなだけ飲んでいいぞ」

「おおおっ! やはり理事長は食の神! 王国の未来は安泰ですな!」

青空の下、美味しい肉と冷えたコーラ、そして笑い合う仲間たち。

俺が求めていたストレスフリーな異世界スローライフは、学園という最高の形で完全に実現しつつあった。

【キャラクター・プロフィール】

【レクト】

役割:主人公(創紀学園・理事長)

状況:ゴミ箱に捨てた暗殺部隊を【ZIP圧縮】して帝国へ【着払い返送】した。その後は仲間たちとBBQを開き、コーラで騎士団長を昇天させている。

【ヴァイパー】

役割:帝国暗殺部隊【黒き刃】隊長(ざまぁ完了)

状況:ZIP圧縮されて玉座の間に排出される。完全にトラウマを植え付けられ、皇帝の前で「あそこには神がいる」と泣き叫び気絶。帝国の戦意を完全にへし折った。

【ガルディア皇帝】(New)

役割:敵対国家のトップ

状況:自慢の暗殺部隊が半裸で梱包されて送り返されてきたのを見て、王国に誕生した未知のバケモノ(レクト)の存在に底知れぬ恐怖を抱く。

【ガルド】

役割:創紀学園・警備員(元王国騎士団長)

状況:ラーメン、回転寿司に続き、【コーラとBBQ】のコンボを喰らい、完全にレクトを信仰の対象としている。

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