甘い香り
ステファニーとキャサリンは食堂でランチを食べ終えて、教室に戻るところだった。歩いていると、キャサリンにはステファニーがいつもと違うように感じられた。
「ねえステフ、なにかいつもと違う?」
「何かって?」ステファニーには心当たりがない。
「う〜ん、、、よくわからないけど、、、雰囲気が違うのかなあ。」
ステファニーは、キャサリンのことをジロジロと見る。
「お化粧を変えた? 恋する乙女っていうような甘い感じがするのだけど。」
「え〜っ? お化粧はいつもと同じだけど。。。あっ!もしかして、これ?」
ステファニーはもしかして?と思い、スカートのポケットから小さな巾着袋を取り出し、キャサリンに渡した。
受け取ったキャサリンは最初はただ見ているだけだったが、眺めているうちに、何かの香りに気がついた。
「あら? この香りはなに? 柑橘系の爽やかな香りと、桃のような甘い香りがする。」
キャサリンは、巾着袋に鼻を近づけ匂いを嗅ぎながら聞いた。
「この袋にはノエア草が入っているの。マダム・ジュネのお手伝いをして、そのお駄賃代わりにもらったのよ。」
「ノエア草?聞いたことがないわ。いい香りね。」
「でしょう? これは今度の学園パーティーでお茶にするんですって。でも、この甘い香りがする葉は、飲むと痺れるから使えないって。すごくいい香りでとても気に入ったから、マダムに欲しいってお願いしたの。取り扱いには気をつけると約束して、わけていただいたのよ。」
ステファニーが、胸を張って目をキラキラさせて、説明する。
「へ〜、お茶になるの? パーティーの時に気にしてみるわ。」
キャサリンに頷いた後、ステファニーは話題を変えた。
「そうそう、お兄さまからエスコートの話は聞いた?」
「馬車で迎えに来てくださるって事? 去年はできなくて悪かったって、また謝ってくださったわ。」
キャサリンの微笑みに、ステファニーが嫌そうな顔をする。
「どうせ、去年のお兄さまは私の相手で忙しかったわ。今年はちゃんと1人で行くわよ。」
「ねえ、殿下からいただいドレスってどんなのだった?」
ステファニーの拗ねたような怒ったような口調を全く気にせず、キャサリンが聞いた。
「すごく素敵だっだわよ。締め付けが全然なくってね、走ることもできるし、たくさん食べることも出来そうよ。」
「あなたの視点って、なんか違うわよね。私は、色とかデザインを聞きたかったのだけど。」
何事にも動じないキャサリンが、珍しく呆れているようだ。
「え〜! 動きやすいかどうかは、とっても重要でしょ!」
そんな話をしているうちに、教室に着いた。




