ノエア草
「水遣りは、これからの時期は朝と晩の2回必要です。」
女子寮の管理人であるマダム・ジュネが花壇の手入れをしながら説明している。ステファニーは当番の子たちと一緒に、薬草園で作業をしていた。
ジュネは野菜や花に関する知識がとても豊富だ。ステファニーはブランドン家の庭師にもよく話を聞くが、彼らは庭木や花の手入れは熟知しているが、薬効についてはそれほど詳しくない。花壇に植えてある花の根が薬の元になったり、道端で咲いている草から毒の成分が採れたりという話をジュネから聞くのは、ステファニーにとって楽しいことの1つだった。
「皆さん、次は、このノエア草の葉を採ってください。」ジュネが、高さ20センチほどの草を指す。
「これですか? レモンの香りがしますね。何に使うんですか?」
当番の子が質問した。ステファニーがノエア草をよく見ようと顔を近づけると、うすくレモンの香りがした。
「葉っぱを乾燥させてお茶にすると、手足の冷えが改善されます。そのままでも、水に1時間程度浸すと香りが移って、飲むと疲れが取れますよ。他には、匂い袋に詰めてもいいですね。香りを嗅ぐと気分がスッキリして、勉強がはかどりますよ。」
ジュネが葉っぱを採りながら説明する。
「でも、注意が必要です。花が咲いた後の葉は使えません。お茶でも水でも、手足に痺れが出ます。なので採るときは、株にまだ花が咲いていないか十分に気をつけてください。蕾や花芽がついていたら取り除いてくださいね。」
「花を見落としたらどうしよう。」不安の声がもれる。
「そんなに心配しないで大丈夫ですよ。花が咲いた後の葉は、香りに甘いものが混ざります。使う前に私も確認しますから。では、始めましょう。」
ジュネの言葉で、皆んなが作業を始める。ステファニーも、ジュネの言葉どおり花に気をつけながら、葉を採り始めた。
10分程後、どこかから質問が出た。
「今採っている葉は、何に使う予定なんですか?」
「これは20日後の学園パーティーで使う予定です。今日の分は乾燥させてお茶にする分ですね。そのまま使う分は前日に採りましょう。」
「前の日ですか? 量が多くないですか?」誰かから驚きの声が上がる。
「再来週のお当番の子はかわいそうだわ。」同情の声も聞こえる。
ジュネはニッコリ笑って、みんな見回して言った。
「お当番さんだけでは終わらないでしょうから、ここにいる皆さんもお手伝いをお願いしますね。」




