衝撃
4月、ステファニーは2年生になった。
進級したとはいえクラス替えもないため、学校生活に大きな変化はない。
授業終了後、ステファニーは、いつものようにキャサリンと門へと歩いていた。
「キャシー、土曜日に時間ある?」
「今週の土曜? お姉さまと買い物に行く予定があるけど。」
「じゃあ、来週の土曜は?」
「たぶん大丈夫。」
「美味しいパンケーキのお店が出来、、、痛っ、だれ?」
2人で話しながら歩いていると、ステファニーが突然に誰かとぶつかり、その勢いで尻餅をついてしまった。
「『だれ?』ではありません。あなたこそ、どなたですか?」
ぶつかった彼女は、立ったままステファニーを見下ろしていた。ステファニーは驚いて言葉が出ない。
「ごめんなさい、前を見ていなかったものですから。」キャサリンはとっさに謝った。
「私にぶつかったのは、キャサリン様ではありませんよ。ブランドン伯爵令嬢は、謝罪の言葉をご存知ないのかしら?」
彼女はステファニーを見下ろしたまま冷ややかに言うと、クルリと踵を返して行ってしまった。
ステファニーはようやく立ち上がったが、まだ頭が回っていない。「一体、何だったの?」
「彼女は3年生のエミリー様よ。クーパー伯爵家のご令嬢の。」キャサリンが簡単に説明する。
「前を見ていなかった私も悪いけど、向こうもよけなかったのでしょ? 何で私が怒られるのよ。」
ステファニーはムスッとした顔だ。
「う〜ん、彼女、階級意識が強いっていうか。。。たぶん『自分は3年生でクーパー家だから、格下のステフが横にどいて当然』って考えたんだと思う。」
キャサリンが、特に感情のこもっていない声でたんたんと言う。
クーパー家もブランドン家と同じ伯爵位であるが、クーパー家は歴史も長く重職を務めることも多いため、伯爵位の中では最上位の家の1つである。ブランドン家は伯爵位の中で中堅である。
「階級って、、、ぶつかったら謝るのが、普通じゃないの?」ステファニーはムスッとしたままだ。
「私に言われても困るわ。それに、ステフも謝っていないから同じじゃないの。」
キャサリンはここで声を1段明るくした。「で、美味しいパンケーキってどこにあるの?」
ステファニーはまだ納得がいかないが、つまらないことを考えても仕方がないと思い直した。
「私もまだ行ったことがないんだけど、、、」
そして、2人でまた歩き出した。




