内密な話
「それじゃあ、あなたが、じぶんで、当たりくじを引いたのね。」ダイアナは呆れた声を出した。ステファニーがどうやって婚約者になったのか、初めて知った。まさかくじだったとは驚きだ。
「いい、ダイアナ。あれは、外れくじっていうのよ。」
「ステフ、それは殿下に失礼だぞ。」エドワードが妹をたしなめる。
「大丈夫よ、お兄さま。フレデリック様がご自分で『ハズレを引いたのは君か』って、おっしゃったわ。」
ステファニーの声は、なぜだか自慢げだ。
「ねぇ、当たりでもハズレでも、どっちにしても、ステフがフレデリック殿下の婚約者なのだから、お茶会は行かなくちゃいけないのよね。行ってらっしゃ〜い。」
「キャシーは、いいタイミングで人の傷をえぐるのが上手よね。それを無意識っていうのが、怖いわ。」
ステファニーはキャサリンを睨みつけた。
ステファニーは王城を歩いていた。3月の「王妃さまのお茶会」も無事に終わり、帰宅するところだ。
王妃さまの私室から城門までは、案内役の騎士がつく。その騎士の後ろを歩いて門が見える辺りまで来た時、後ろからよく知っている声に呼び止められた。
「ステファニー、ちょっと待って。」
自分の護衛騎士を従えたフレデリック王子だ。
フレデリック王子は、振り向いたステファニーに近づくと、騎士たちに手で合図して数歩下がらせた。
「何かご用でしょうか?」ステファニーがフレデリック王子に言うと、
「内緒の話なんだけど、ちょっといいかな。」と言われた。
2人は騎士からさらに数歩離れた。この程度離れたら、小声で話せば、2人の会話は聞こえないだろう。
フレデリック王子は、声をひそめて話した。
「ギルバート兄上が臣下に降ることになった。週明けに陛下から発表される。ブランドン伯爵は知っているが、発表されるまでは内密にして欲しい。」
ステファニーがうなずいたのを確認して、王子は続けた。
「実際に降るのは数ヶ月先だし、私には直接は影響はないはずだ。ただ、周囲の見る目が変わってくる可能性はある。今まではスペアのスペアだったが、これからはスペアになるから。」
ステファニーは、またうなずいた。
「婚約者である君に近づく者も出てくるかもしれない。もしも何か不都合があったら、遠慮なく言って欲しい。」
フレデリック王子はそれだけ言うと、呼び止めて悪かったと言って、自分が来た方へと戻っていった。
ステファニーは帰りの馬車の中で、先ほどの王子の言葉について考えた。
私には近づくって、何するのかしら?権力者と仲良くなりたいって事? 王族との橋渡しを頼まれる?
う〜ん? そういう人は前にもいたし、不都合が思いつかないわ。
まっ、いざとなったら殿下に言えばいいのよね。なんとかなるでしょ。
この数ヶ月後、ステファニーの生活が一変するようなことになるとは、この時、ステファニーは思いもしなかった。




