イライラする日々
あの日以降、ステファニーはエミリーに絡まれることが何度もあった。
「あ〜あ、今日は雲ひとつない青空なのに、なんで私はこんな庭のすみでお昼を食べているんだろう。」
売店で買ったサンドイッチをひざに乗せて、ステファニーはため息をついた。
ステファニーの言葉どおり、今日は『風薫る5月』と言われるように爽やかな初夏の風が吹く気持ちの良い日だ。それなのに、ステファニーとキャサリンは、建物の北側の肌寒くて暗い場所のベンチに座っている。
「エミリー様に見つからないように、逃げてきたんでしょ?」
キャサリンはタマゴサンドを一口食べた。「早く食べないと、お昼休みが終わっちゃうよ。」
「キャシーは、エミリー様に対して何も思わないの?」
「エミリー様? う〜ん、わざわざ2年生の廊下に来たり、ステフの帰りに合わせたり、大変だなあって思うかな。」
たんたんと話すキャサリンにステファニーは呆れ顔だ。
「はあ〜、大変だったら、私のことなんて放って置いたらいいのよ。きっと暇なんだわ!」
ステファニーが両手を握りしめ大きな声を出していると、よく知る声がした。
「まあ! ブランドン伯爵令嬢は、他人のことを批評するなんて、なんてお行儀がいいのかしら?」
エミリーは、ステファニーを横目で見てクスリと笑った。
「こんな、人のほとんど来ない場所まで来て嫌味を言うなんて、暇と思われても仕方がないと思いますけど。」
ステファニーが頬を膨らませて言う。
「あら? この場所に来るには、ブランドン伯爵令嬢の許可が必要なのかしら? それは知らなかったわ。では、無許可の私は失礼しますわ。」
エミリーは、またクスリと笑うと教室棟へと歩いて行った。
エミリーの姿が見えなくなると、ステファニーがイライラを爆発させた。
「ああ〜、もう、なんなのかしら! 先月からずっと! 私、何かした?」
「ステフは覚えがないの?」
「なーんにもないわよ! 去年までは一言も話したことがなかったのに、今年はなんなのよ! 今週なんて、これで3回目よ! 本当にイヤになっちゃうわ!」
「まあまあ、イライラするステフの気持ちもわかるけど。向こうから来るものはどうしようも出来ないし、今はお昼を食べちゃおうよ。」
キャサリンは、膝の上に乗った最後のサンドイッチを食べている。そんなキャサリンの様子に、ステファニーの気持ちも少しは落ち着いたようだ。キャサリンは、まだ半分以上残ったサンドイッチに急いでパクつき始めた。
「なぜか理由がわかれば、いいんだけどねえ。そうすれば対応もできるのにね。」
食べ終わったサンドイッチの箱を片付けながら、キャサリンが言った。
「理由ねえ。。。」ステファニーは、最後のサンドイッチを急いで口に押し込むと、小さな声で呟いた。




