婚約者の選び方
10月の初め、ステファニーは王城の一室にいた。
フレデリック王子とステファニーの他に令嬢が10人ほどが、席についていた。
ステファニーの目の前には、色とりどりのケーキや果物が並べられていた。とても美味しそうなお菓子を前にして、ステファニーは心の中で、悪態の限りをついていた。
キャシーの嘘つき!嘘つき!嘘つき! やっぱり、このメンバー、どう見ても婚約者選びじゃないの! 王城から手紙が来るなんて凶報でしかないのに、なんで来ちゃったのかしら。風邪ひいたと嘘言って、休めばよかったのに!
ステファニーの心の嵐をよそに、フレデリック王子が進行役をしている。
「今日は、集まってくれてありがとう。テーブルの料理を食べながら聞いてもらって構わない。」
王子が話している最中に、誰がスイーツを食べられるっていうのよ!無理に決まっているじゃないの!
「みんなも忙しいと思うから、早速本題に入りたい。今日は私の婚約者を決めたいと思う。夏の兄上のお茶会に参加した令嬢方の中から、私が婚約者でかまわないと思った人に、ここに集まってもらった。」
夏のお茶会ですって?私、フレデリック殿下と話なんてしてないわ!どんな基準なのよ!
「私は、積極的な方はあまり得意じゃなくてね。控えめな方を選ばせてもらった。」
控えめって!王子に関心がなかっただけよ!私はただケーキを食べていただけじゃん!ケーキには積極的だったわよ!
「この中からどなたかを選びたいのだが、特に交流もなく、情報も少ない。」
お茶会の様子で選んだならキャシーもここにいるはずなのに、あの子のお姉さんがギルバート殿下の婚約者だから、今回は外されたんだわ!ズルイ!ズルイ!ズルイ!
ステファニーは、フレデリック王子の言葉の端々に反論しているが、全てが心の中でだ。外からは、少し顔を引きつらせたまま王子の話を聞いているように見える。
ステファニー以外の令嬢たちも、青白い顔をしている人、一切表情がない人、遠い目をしている人など様々だが、ただただ無言だ。
10人ほどの集団の中、フレデリック王子の声だけが話し続ける。
「自己推薦はいるかい? 自分が私の婚約者になりたいって思う人は、手を挙げてくれる?」
そういう積極的な人は除いたのでしょ?いるわけないじゃん!
「逆に、私と婚約したくないと思う人はいる?」
私はお断りだわ!だけど、ここで手を挙げられないでしょ?王子さまじゃなくて、フレデリック殿下がイヤだって言っているみたいじゃん!
「困ったね。どうやって選ぼうかね」
困っているのは私達よ!今日は解散にしちゃえばいいわ!
「じゃあ、くじにしよう。この箱の中に紙が入っている。1枚だけ私の印が押してあるから。じゃあ、箱をこっちから回すよ。」
くじですって!なんで準備してあるのよ!始めからそのつもりだったのね!婚約者をくじだなんてありえないわ!
ステファニーの順番は、6番目だった。




