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里美八禿伝(さとみはちとくでん)  作者: レモンティー


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8/11

第八話:フサフサ四天王、現る

夜。

コンビニ前。

禿が四人、たむろしている。

「絵面が終わってるな」

タケルが言う。

「自覚はある」

シン。

マワルはさっき当て逃げされたスロットの話をまだしている。

「いやマジであれ100ゲーム目だったな」

「蒸し返すな!!」

その時。

サラァ……

風が吹く。

だが――

明らかにおかしい。

「……なんだ?」

タケルが顔をしかめる。

「今の風、いい匂いしなかったか」

「シャンプーだな」

シンが即答。

「分かるの!?」

「――気づいたか」

声。

上。

見上げる。

ビルの屋上。

そこに――

スローモーションで揺れる髪。

四人、並ぶ。

全員――

異常にフサフサ。

もう“フサフサ”とかいうレベルじゃない。

概念としてのフサフサ。

シュタッ。

降りてくる。

着地と同時に――

髪が一瞬で整う。

「オートセット機能付き!?」

中央の男が前に出る。

最初に見た長髪。

トリートメントでツヤが異常。

光を反射しているのに、なぜか目に優しい。

「我らは――」

髪を払う。

スローモーション。

「フサフサ四天王」

ザァァァァァ

「どっから音出てんだよ!!」

タケルが指さす。

「お前らさっきからずっと風当たってるけど何なの!?」

長髪の男が答える。

「専属の風だ」

「専属!?」

そして――

一人、静かに前へ出る。

ゆるくウェーブがかかった髪。

妙に“しっとり”している。

空気が――

少し湿る。

「……あ?」

タケルが眉をひそめる。

男が呟く。

「保湿」

シュゥゥゥ……

霧が出る。

細かい。

均一。

明らかに業務用。

「加湿器!?」

「違う」

男は静かに言う。

「ミストケアよ」

「美容寄りのワードやめろ!!」

「乾燥は、敵だから」

ミストが言う。

「戦い方がスキンケア寄り!!」

天然パーマがふわっと笑う。

「我々は“選ばれし毛根”」

「選ばれなかった側に配慮しろ!!」

オールバックが一歩前へ。

「君たちが“八禿”の四人だね」

「いまは我らの敵というほどじゃない」

長髪がうなずく。

「だが、放置すれば増える」

「感染症みたいに言うな!!」

長髪がスマホを取り出す。

スッ。

画面を見せる。

そこには――

“禿レーダーアプリ”

「アプリあるの!?」

「現在、半径5km以内に禿4名を確認」

「GPSみたいに言うな!!」

天然パーマが言う。

「増えすぎると、“バランス”が崩れる」

「何のバランスだよ」

オールバックが指を立てる。

「美のバランスだ」

「価値観が狭い!!」

タケルがため息。

「で?」

腕を組む。

「結局何しに来た」

長髪、ニコッ。

「――顔見せ……そして警告だよ」

沈黙。

1秒。

2秒。

「軽く言うな!!」

その瞬間。

ブワァッ!!

全員の髪が逆立つ。

シン「来るぞ」

タケル「だからなんで分かるんだよ!!」

長髪。

髪が――

無限に伸びる。

「いやもう怖いわ!!」

鞭のようにしなる。

バシィィィッ!!

タケル回避。

「美容院じゃ済まねぇ威力!!」

長髪が指を鳴らす。

「キープ力」

地面に落ちた髪の毛が――

コンクリートを貫通。

「ハードスプレーの概念壊れた!!」

天然パーマ。

「ボリュームアップ」

空気が膨張。

圧で押される。

「物理攻撃!?」

オールバック。

静かに言う。

「艶出し」

ピカァァァァ!!

「まぶしぃぃぃぃぃ!!」

完全に地獄。

タケル叫ぶ。

「なんなんだよこのバトル!!」

その時。

マワルが一歩前へ。

「……なるほどな」

「お前急に冷静になるな」

マワル、敵を見る。

「流れが偏ってる」

「何がだよ」

「こいつら、“全部持ってる側”だ」

沈黙。

妙に説得力がある。

「だから――」

マワルが笑う。

「一回崩せば、デカいのが来る」

「信用できねぇ!!」

長髪が目を細める。

「面白い」

「だが――」

手を上げる。

攻撃停止。

「今日はここまでだ 美容院の予約がある」

長髪がスマホを見ながら言う。

「次は潰す」

「スケジュール管理してる!?」

天然パーマが手を振る。

「じゃあね、禿たち」

「言い方!!」

オールバック。

「整えておけ」

ミスト

「乾燥には気をつけて 頭皮からすぐ分かるでしょう」

「余計なお世話だ!!」

そして消える。

風と共に。

シャンプーの香りだけ残る。

沈黙。

タケル、ゆっくり振り向く。

「……勝てる気しねぇ」

シン。

「だが、やる」

マワル。

「次は来るな」

タケル。

「お前が言うと不安なんだよ!!」

遠くでネオンが光る。

その光は――

もはや“戦場”だった。

残り四禿。

迫る、フサフサ四天王。

そして運は――どちらに流れるのか。

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