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里美八禿伝(さとみはちとくでん)  作者: レモンティー


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7/12

第七話:四禿、回す者

夕方。

「……ここに気配を感じる」

シンが立ち止まる。

目の前には――

**パチンコ屋。**

ネオンがギラギラしている。

「いやいやいやいや」

タケルは即ツッコむ。

「こんなところにいるのかよ!!」

「強い“光”が集まる場所だ」

「意味合いが違う光だろそれ!!」

ウィーン……

自動ドアが開く。

**ジャラジャラジャラ……!!**

音。光。騒音。

「うるせぇ!!」

「集中しろ」

「無理だろこの環境で!!」

シンは目を細める。

「……奥だ」

「分かるの!?」

「“不自然な流れ”がある」

「急に玄人っぽいこと言うな」

二人はメダルコーナーへ。

スロットの列。

その一角で――

「……あの台だ」

「どれだよ」

「一番光っている」

「全部光ってるわ!!」

その時。

横から声がかかる。

「兄ちゃん」

振り向く。

そこにいたのは――

やや疲れた顔の男。

年齢は30代後半。

帽子なし。

普通に禿げ……ている。

「千円、貸してくれないか」

「急に!?」

男は台を指さす。

「今、“光物”を打ってるんだが」

「専門用語やめろ 頭の話じゃないよな」

「当たりが成立してる。ほら ここのランプが光ってるだろ。狙えば揃う」

「じゃあ揃えろよ!」

「金がなくなってしまった」

「最低だな!!」

タケルはシンを見る。

シンは真顔でうなずく。

「……こいつだ」

「なんでだよ!!」

「たくっ仕方ねぇな……」

タケルは財布を開く。

「必ず返せよ」

千円を渡す。

男は無言で受け取る。

そして――

サンドに投入。

**ガシャンッ**

メダルが出る。

「よし……来い……」

レバーオン。

リール回転。

「……」

止める。

ズレる。

「え?」

もう一回。

回す。

止める。

ズレる。

「いやいやいやいや!!」

タケルが叫ぶ。

「揃えられる状態って言ったよな!?」

「……おかしいな」

「おかしいのはお前だよ!!」

男は立ち上がる。

周囲を見回す。

そして――

通りすがりの、いかにも上手そうな男に声をかける。

「すみません、これ揃えてもらえます?」

「他力本願!?」

慣れた手つき。

ピタ、ピタ、ピタ。

**カチッ**

揃う。

「おお!!」

タケルが身を乗り出す。

黒い図柄が揃ったぞ!!!

そして――

**レギュラー。**

男は「チッ」と舌打ちする。

どうやら小さい当たりだったらしい。

「……」

「……」

「小当たりじゃねぇか!!」

男はうなずく。

「だが問題ない」

「問題あるだろ」

「ここからが本番だ」

「信用ならねぇ」

「100ゲーム回せば連荘する」

「どこ情報だよそれ」

「流れだ」

「一番信用ならねぇやつ!!」

男は回す。

ガラガラガラ……

止める。

何も起きない。

また回す。

また外れる。

「……」

「……」

カウンター。

98。

99。

タケル

「おい」

「……」

カチッ。

コイン尽きる。

終了。

「……」

「……」

タケルが静かに言う。

「返せよ」

男は目を逸らす。

「……すまん」

「軽いな!!」

マワルは――

スッと立ち上がる。

タケルが固まる。

「おい何してんだ」

「流れが切れた」

「は!?」

マワルはあっさり席を離れる。

完全に台を空ける。

ガタン。

別の男が、すぐに座る。

いかにも慣れている。

無駄のない動き。

レバーオン。

ガラガラガラ……

100ゲーム目。

――ピカッ。

マワル

「……え?」

ランプが光る。

店内の音が一瞬、遠のく。

「……は?」

タケルの声が震える。

その男は冷静にリールを止める。

ピタ、ピタ、ピタ。

カチッ

揃う。

大当たり。

マワル

「うわああああああああ!!!」

タケル絶叫。

「お前ぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

マワルは静かに言う。

「運は流れる」

「流れて全部あいつに行ったじゃねぇか!!」

台の男はフィーバー状態。

ジャラジャラとメダルが増えていく。

タケルは肩を震わせる。

「……お前……」

ゆっくり振り向く。

「責任取れよ……」。

マワルは目を逸らす。

「……すまん」

「……金が返せなくなった。だから仲間になる」

その時。

シンが一歩前に出る。

「お前」

低い声。

「印を持っていないだろう」

男は眉をひそめる。

「……何の話だ」

タケルが紙を見せる。

「これが無いと駄目なんだよ」

あの紋。

円形の、あのテカり。

男の目が、変わる。

「……それ」

ポケットを探る。

くしゃくしゃの紙を取り出す。

広げる。

そこには――

同じ紋。

「家に来てた」

「来てたのかよ!!」

「なんか怖くて放置してた」

「正しい判断だよ!!」

シンがうなずく。

「やはりな」

「やはりじゃねぇよ」

男はため息をつく。

「……あー、なるほどな」

頭をかく。

「ツイてねぇと思ったら、そういうことか」

「全部運のせいにすんな」

「俺は犬飼マワル」

「また寄せてきた!」

「“流れの禿”だ」

マワルは言う。

「運は流れる」

スロット台を指さす。

「来るときは来る。来ないときは来ない」

「さっきは来なかったな」

「来なかった」

「で」

タケルが腕を組む。

「金返せないんだろ?」

「……ああ」

「どうすんだよ」

マワルはシンを見る。

そしてタケルを見る。

少し笑う。

「じゃあ、お前たちの話に乗る」

「何に」

「その“八禿”ってやつに」

「軽いな!!」

シンが言う。

「いいのか」

「どうせ金も無くなったし他にすることも無いしな」

「人生ギャンブルで決めるな」

マワルは紙を握る。

「これで借りはチャラだろ」

「ならねぇよ!!」

だが。

その瞬間。

三人の紙が、同時に――

光る。

ピカッ。

「うおっ!?」

頭の奥に、声。

『四禿、認証』

静寂。

タケルがゆっくり言う。

「……でも、増えたな」

シンがうなずく。

「ああ」

マワルが笑う。

「流れ、来てるな」

「来てねぇよ!!」

こうして。

四人目の禿が、加わった。

残り――四禿。

だがこの時、誰も知らなかった。

この中で一番厄介なのが、

“運任せの男” マワルだということを。

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