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里美八禿伝(さとみはちとくでん)  作者: レモンティー


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6/12

第六話:三禿、クセが強い

翌日。

「……で、次はどこだ」

タケルはコンビニ前で缶コーヒーを飲みながら言う。

「ヒントはこれだ」

シンが取り出したのは、あの“紋の紙”。

よく見ると、うっすらと線が増えている。

「……地図?」

「らしい」

紙の中央に、ぼんやりと浮かぶ文字。

> 『第三の禿、隠す物あり』

「隠す物?」

「つまり――」

シンは周囲を見回す。

「……偽装している可能性が高い」

「スパイかよ」


二人が向かったのは、○○公園の隣にある小さな商店街。

八百屋。惣菜屋。古びた本屋。

人通りもそこそこ。空気は平和そのもの。

「ここに禿が……?」

「気配がある」

「どんな気配だよ」

シンは静かに言う。

「……静かなツヤだ」

「わかるかそんなもん!」

タケルのツッコミが商店街に響く。

その時だった。

「いらっしゃいませー」

柔らかい声。

振り向くと、そこには――

帽子屋。

そして店主。

年齢不詳の男。

だが何より目を引くのは――

帽子の量。

キャップ、ハット、ニット帽、サンバイザー――

壁一面、棚一面、天井から吊るされているものまで含めて、

明らかに多い。

**とにかく帽子を揃えている。**

「多くない!?」

「どう見ても飾られている帽子が多い!」

男はニコニコしている。

だが、何かがおかしい。

「……シン」

「ああ」

二人は同時に確信する。

(こいつだ)

「何かお探しですか?」

男は穏やかに言う。

「いや…」

タケルは即答する。

そして男が被っているニット帽に注目する。

この暑いこの季節に…ニット帽…!!!

あきらかにおかしい。

そして怪しい。

シンが一歩前に出る。

「そのニット帽――脱いでみろ」

「今一番触れちゃいけないとこだろ」

空気が一瞬で張り詰める。

シンが一歩前に出る。

「お前――八禿の一人だな」

一瞬。

店の空気が変わる。

だが男は笑ったまま。

「……何のことでしょう」

「とぼけるな」

シンは一切ブレない。

シンは静かに言う。

「この時期にニット帽……どうみてもただのファッションじゃない」

「いやファッションでも怪しいけどな!?」

再び沈黙。

そして――

男はゆっくりとニット帽に手をかけた。

「……バレてしまっては、仕方ないですね」

静かに。

ゆっくりと。

頭からニット帽が外される。

その下にあったものは――

「……あれ?」

タケルは首をかしげる。

「フサフサ……じゃない?」

いや違う。

よく見ると。

中央だけ――

ピンポイントで“空いている”。

「アルシンドかよ!?河童型!?ピンポイント禿!?」

「一点突破だな!」

男は深く息を吐く。

「……私は、犬山カクレ」

「“隠しの禿”です」

「そのまんまだな!!」

「……私のところにも封筒と紙が送られてきました。」

カクレは言う。

「私は能力の代償として――」

「代償あるんだ」

「常に“防御”を維持しなければならない」

「どういうことだよ」

カクレの表情がわずかに曇る。

「外気に晒されると、暴走するのです」

「何が!?」

その瞬間。

風が吹いた。

ヒュウ――

「あ」

カクレの頭頂部に、風が直撃する。

「ちょっ」

ピカッ――

「うわっ!?」

衝撃波。

近くののぼりが吹き飛び、帽子がいくつか宙に舞う。

「威力おかしくない!?」

「……これが、“空力性能”の応用だ」

シンが冷静に分析する。

カケル

「応用で済ませるな!!」

カクレは慌てて帽子を被り直す。

「はぁ……はぁ……危なかった」

「危ないのはこっちだよ!」

「とくかくこれで俺たちは仲間だ!」

その時。

ザッ……

またしても足音。

「……やはりここか」

振り向く。

そこには――

昨日のフサフサ男。

さらに後ろに、もう一人。

ロングヘアの女。

「増えた!?」

「フサフサ連合、第二席――ミスト」

女は微笑む。

髪をふわりと揺らす。

その瞬間。

**ふわっと、いい香りが広がる。**

タケルの動きが一瞬止まる。

「……え、ちょっと待って」

(いい匂いすぎない?)

しかも。

美人。スレンダーで巨乳。なのに存在感がある。

シン

「こいつは危険だ――狩の本能で、匂いがマヒしてる状態だ」

狩の本能により、人は自分の匂いを感じにくくなる。

そのため香水をつけても、しばらくすると自身では匂いが分からなくなり、さらに香水を重ねてしまう。

――そうした現象の結果だ。

タケル

「攻撃が嗅覚!?」

シンが低く言う。

「まずい……“香り系”は厄介だ」

「分類あったの!?」

ミストは微笑む。

「逃がさないわ、“禿の者たち”」

その髪のいい匂いが、ゆっくりと広がる。

まるで霧のように。

「……あれ」

タケルが気づく。

「これ、視界悪くない?」

「そういう能力だ」

「地味に強い!」

シンが叫ぶ。

「タケル!カクレ!走るぞ!」

「また逃げるの!?」

「いまはまだ俺たちの能力では戦えない 」

逃げる

頭のニット帽を押さえながらカクレが叫ぶ。

「私の帽子が!風で飛んでしまう!」

「知らんがな!!」

三人は走る。

霧の中を。

光る頭と、帽子を押さえながら。

その背後で。

フサフサの気配が迫る。

残り、五禿。


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