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里美八禿伝(さとみはちとくでん)  作者: レモンティー


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第五話:八禿の運命

街はオレンジに染まり、人の流れもゆるやかになっていた。

――その中を、全力で走る二人。

「ハァ……ハァ……!」

「まだだ……止まるな……!」

「いやもう十分逃げたろ!!」

タケルは息を切らしながら叫ぶ。

走りながら、シンは言う。

「あと六禿を集めるんだ」

タケル

「で、八人集めたらどうなる」

シン

「“完全なる輝き”が世界を変える」

タケル

「ふわっとしてるなぁ!」

シン

「だが確実に、何かが起きる」

だがタケルは、少しだけ思った。

(……悪くないかもしれない)

ようやく二人は足を止めた。

沈黙。

荒い呼吸だけが響く。

シンは少しだけ空を見上げる。

タケルは黙る。

(……何かが起きる、か)

正直、意味はわからない。

戦いの理由も、敵の正体も、全部曖昧だ。

だが――

(……悪くないかもしれない)

ふと、思ってしまった。

どうせ。

何もしなくても進行する。

この生え際は止まらない。

抗っても、いずれは――

(だったら)

いっそ。

乗ってしまうのも。

この、意味不明な運命に。

タケルはゆっくり立ち上がる。

「……分かったよ」

「……」

「残り六禿、集めてやる」

シンは、静かにこちらを見る。

そして――

うなずいた。

「その意気だ」

短い言葉。

だが、妙に重い。

夕陽が沈みかけている。

空の色が変わる。

太陽が地平線へと沈み――

世界が、赤に染まる。

二人の影が長く伸びる。

そして。

頭部が。

やけに強く、光を返す。

「これ、普通に目立たない?」

「誇れ」

「誇れないよ!!」

だが、タケルは笑っていた。

さっきまでの焦りや恐怖が、少しだけ薄れている。

(……まぁいいか)

理由はない。

だが、確かに。

何かが始まっている。

その感覚だけは、あった。


夕陽が沈む。

二人の頭が、赤く染まり――

そしてやはり、無駄に輝いていた。


通行人が一人、立ち止まる。

「……あれ、夕陽多くない?」

「片方人だよ」

「嘘だろ」

「いやマジで」

目を細めて見るがよく分からない。

視線の先。

沈みゆく夕陽と――

並ぶ、もう二つの“光”。

それはまだ、小さいように見える。

だが確実に。

これから広がっていく。

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