第四話:敵、現る
その時――
ザッ……
背後から足音。
「……来たか」
シンの声が低くなる。
振り返ると、そこには一人の男。
豊かな黒髪。
風になびくサラサラヘア。
明らかにトリートメントが行き届いている。
(……トリートメントの次元じゃねぇ)
「……見つけたぞ、“禿の者たち”」
低く、よく通る声。
声帯まで整っている気がする。
「うわっ!!明らかに強者!!」
タケルは一歩後ずさる。
「我らフサフサ連合が、貴様らを滅ぼす」
タケル
「なんでそんな対立してんの!?」
タケルの叫びはもっともだが、誰も答えない。
男は髪をかき上げる。
その動き一つで、周囲の女子たちがざわめく。
「キャー!」
「なにあの人!モデル!?」
「シャンプー何使ってるんですかー!」
タケル
「戦闘中だぞ!?」
「黙れ」
男が一言発するだけで、空気が締まる。
「貴様らのような“輝き”は、秩序を乱す」
「くっ……これが……フサフサのカリスマ……!」
シンが歯を食いしばる。
その額に汗。
――いや、違う。
それは自然な皮脂の反射だ。
「タケル……下がれ」
「え、戦うの!?」
「ここは俺が抑える」
シンは一歩踏み出す。
対するフサフサの男は、余裕の表情。
「面白い。」
「俺の“フラッシュ”を見せてやる」
シンは一歩踏み出し――
太陽の位置、雲の流れ、周囲の建物の反射を確認する。
「……そこ計算するんだ」
次の瞬間。
**キィィィィィィン!!**
頭頂部が、完全反射。
「うおっ!?」
タケルが思わず目を覆う。
シンの頭頂部が、完全な鏡面と化す。
反射された光が一点に収束し――
まるでレーザーのように放たれる。
「ぐああああああ!?」
フサフサの男が目を押さえる。
「くっ……視界が……!」
その美しい髪が乱れる。
初めて、隙が生まれた。
「今だ、逃げるぞ」
「勝たないの!?」
「眩しいだけだからな」
「知ってたけどさ!!」
シンは即座に方向転換。
全力疾走。
タケルも慌てて追う。
背後から声。
「逃げるな……禿ども……!」
「めっちゃ悔しそう!!」
「だが……次はない……!」
振り返ると、男はまだ目を押さえている。
だがその髪は――
一切崩れていない。




