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里美八禿伝(さとみはちとくでん)  作者: レモンティー


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第十一話:第七禿 現る

朝。まだ人の少ない公園。ベンチ。自販機。鳩。

タケル。「……平和だな」

マワル。「流れが穏やかだ」

エコ。「無駄が少ない」

シン。「……静かすぎる」

タケル。「不穏なフラグ立てるな!!」

その時。

カタン。

音。

見る。

ベンチ。

誰かいる。

座っている。

動かない。

タケル。「……人?」

近づく。

男。

細い。

猫背。

帽子を深くかぶっている。

そして――

微動だにしない。

タケル。「おーい……」

反応なし。

エコ。「……止まってるな」

マワル。「流れが“無い”」

シン。「……消えてる」

タケル。「いや怖い怖い怖い!!」

さらに近づく。

男の前。

地面。

パンくず。

鳩がついばんでいる。

しかし。

男は動かない。

瞬きすら、しない。

タケル。「生きてる?」

その瞬間。

ピタッ。

鳩が止まる。

風が止まる。

音が――消える。

「え?」

タケル。

自分の声だけが響く。

振り返る。

マワル。

動かない。

シン。

止まっている。

エコ。

そのまま。

「……は?」

男。

ゆっくり。

顔を上げる。

帽子の下。

――光る頭頂。

タケル。「うわ出た!!」

男、ぼそっと。

「うるさい」

「喋った!!」

男、立ち上がる。

その動きだけが、世界で唯一動いている。

「俺は」

「静止の禿」

「トメル」

「また名前そのまんま!!」

トメル、周囲を見る。

止まった世界。

「無駄な動きが多すぎる」

タケル。「お前が止めてんだろ!!」

トメル。「必要なものだけでいい」

一歩近づく。

「選ぶ」

「何を!?」

「動くものを」

その瞬間。

指をさす。

タケル。

「え」

動ける。

他は全部止まっている。

タケル。「うわ俺だけ!?」

トメル。「会話は必要だからな」

「合理的!!」

タケル。「いやでも怖いわこれ!!」

トメル。「静かだろ」

確かに。

音がない。

風もない。

世界が“止まっている”。

トメル。「これが本来の状態だ」

タケル。「いや絶対違う!!」

トメル。「動きすぎなんだ」

タケル。「お前が止めすぎなんだよ!!」

その時。

ピカッ。

トメルの胸元。

紋。

「……来てたか」

タケル。「お前もか!!」

トメル。「無視してた」

「だろうな!!」

間。

トメル。

じっとタケルを見る。

「……うるさいけど」

「なんだよ」

「悪くない」

タケル。「評価が雑!!」

トメル。

指を鳴らす。

パチン。

その瞬間。

世界が――

動き出す。

風。

音。

鳩が飛ぶ。

マワル。「……流れ、戻ったか」

シン。「……いたな」

エコ。「停止は非効率だ」

タケル。「全部止まってたんだよ!!」

トメル。「静かだっただろ」

タケル。「認めるけど怖い!!」

トメル。

少しだけ口元が緩む。

「じゃあいい」

「何が!?」

「ついていく」

「軽いな!?」

ピカッ。

『七禿、認証(トメル適合)』

光。

トメル、ベンチに座る。

また動かない。

タケル。「いや動けよ!!」

トメル。「必要ない」

シン。「……省エネだ」

エコ。「理想的だ」

タケル。「お前ら価値観がおかしい!!」

その時。

遠く。

木の陰。

カクレ。

小さく笑う。

「……止める、か」

「厄介だな」

消える。

朝の公園。

鳩がまた歩く。

七つの影。

その中で一つだけ――

ほぼ動かない。

静止の禿、トメル。

その力は、世界そのものを“止める”。

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