第十話:第六禿 現る
夕方。
ゴミ捨て場の裏。
カラスが鳴く。
ビニール袋が風で転がる。
どこか湿った匂い。
「……もったいない」
声。
そこにいる。
男。
やせ細っている。
だが妙にツヤのある頭皮。
光を反射して、やけに目立つ。
服はボロい。
でも――
全部、丁寧に継ぎ接ぎされている。
ボタンの種類すらバラバラなのに、妙に整っている。
「まだ使えるのに」
足元。
捨てられたシャンプーボトル。
男はそれを拾う。
振る。
チャポ。
「……残ってる」
ニヤッと笑う。
「三回分はあるな」
「不衛生だぞ!!」
背後。
タケル。
「誰だお前!!」
男、ゆっくり振り向く。
「……拾うのか?」
「何を!?」
「それ」
男はタケルの頭を見る。
じーっと。
「まだあるのに 捨てるのはもったいない」
「やめろその査定みたいな目!!」
シン。
「……気配が薄い」
マワル。
「流れ、循環してるな」
男、ゆっくり立つ。
関節が軽く鳴る。
「俺は」
「再利用の禿」
「エコ」
「名前そのまんま!!」
エコ、ボトルを掲げる。
「捨てられたものには」
「まだ価値がある」
間。
その瞬間。
ブワッ!!
周囲のゴミが――浮く。
ペットボトル。
紙くず。
ビニール。
壊れた傘。
片方だけのサンダル。
「うおっ!?」
タケル。
それらが――
勝手に動き出す。
ギシギシ。
バキバキ。
「え、ちょ、やばい感じの音してる!!」
組み合わさる。
圧縮。
再構築。
一つの形になる。
巨大な拳。
「嘘だろ!?」
エコ。
「戻すだけだ」
「元の“役割”に」
「拳だったことないだろ!!」
ドンッ!!
拳が地面に落ちる。
衝撃。
地面が揺れる。
タケル。
「普通に兵器じゃねぇか!!」
シン。
「……戦える」
マワル。
「いいな」
タケル。
「評価ポイントそこ!?」
エコ。
じっと三人を見る。
「お前らも」
「削れてる」
「……は?」
「捨てられた側だ」
沈黙。
タケル。
「急に重いこと言うな」
エコ。
気にしない。
一歩近づく。
「だから」
「使える」
「言い方ァ!!」
マワル。
「理にはかなってるな」
タケル。
「お前はもうちょっと疑え!!」
その時。
ピカッ。
紙。
エコのポケット。
同じ紋。
シン
「……お前にも来てたか」
タケル。
「またかよ!!」
エコ、ため息。
「無駄が多い」
「どこがだよ」
「説明が長い」
「お前が言うなランキング1位!!」
間。
エコ、少しだけ視線を落とす。
手の中のボトルを見る。
「……でもいい」
握る。
「お前ら」
「まだ残ってる」
「何が!?」
少し笑う。
「可能性」
沈黙。
風が吹く。
タケル。
「……急にいいこと言うな」
エコ。
「だから」
「使い切る」
「やっぱ怖ぇ!!」
その瞬間。
ピカッ。
強い光。
『六禿、認証(エコ適合)』
周囲のゴミが――
ゆっくり、元の場所に戻る。
だが一つだけ。
さっきの“拳の一部”。
それがエコの背後に浮いたまま残る。
シン。
「……残しているのか」
エコ。
「次に使う」
タケル。
「節約が戦術に組み込まれてる!!」
エコ。
「無駄はない」
「全部、使う」
マワル。
「いい流れだ」
タケル。
「ついにゴミも流れに乗り始めた!!」
エコ、軽く頷く。
「よろしく」
シン。
「歓迎する」
ソル(どこからか現れる)
「整う」
タケル。
「いつの間にいた!!」
その時。
少し離れた場所。
影。
カクレ。
しゃがんでいる。
エコの動きを見ている。
「……面白いの拾ったな」
少し笑う。
「“残り物”で戦うタイプか」
目を細める。
「嫌いじゃない」
マワル。
「流れ、増えてきたな」
タケル。
「あと2人だ!!」
エコ。
ぼそっと。
「増えるほど、使える」
「発想が完全に資源管理!!」
夕焼け。
長く伸びる影。
その中に。
六つの影。
再利用の禿、エコ。
その力は、戦いを“長引かせる”。




