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ディ〇ニーランド行こうぜ 〜著作権がマズイですよ〜

発端は細田だった。

「なぁ、ディズニー行こうぜ」

「は?」と加賀。

「突然どうした。夢の国にVTECを布教しに行く気か」と準。

「違う。聖地巡礼だ。涼宮ハルヒの憂鬱にもディズニーっぽいシーンがあっただろ」

「"っぽい"で行くな。訴えられるぞ」と雅紀。

「ミッ○ーと写真撮りたいYO」とマイケル。

「その伏せ方も危ない」と準。

「カタカナにしたYO」

「カタカナにしても危ない」

「じゃあどうするYO」

「行かなければ危なくない」

「デモ行くYO」

「……行くのか」

「行くYO」

加賀がため息をついた。

「駐車料金はいくらだ」

「3,000円らしい」と細田。

「普通車が3,000円か」

「そうだ」

「高い」

「でも行く」

「高いが行くのか」

「行く。聖地巡礼だから」

「鷲宮の巡礼とはかけ離れた聖地だ」

「でも聖地だ」

「……わかった。行く」

「行ってくれるのか」

「駐車料金が3,000円というのが気になるので確認しに行く」

「確認しに行くついでに入場するということか」

「そういうことになる」

「……走り屋的な理由だ」

「走り屋の理由しかない」


川越を朝6時に出発した。

関越道に乗った。

川越ICから入った。

「関越道は空いてるな」と加賀。

「朝6時だから」と雅紀。

「こういう時間が好きだ」

「走り屋の時間か」

「そうだ。車が少なくて路面が読みやすい」

「ディズニーに行く道でも走り屋目線か」

「走り屋だから」

外環道に入った。

三郷JCTを通過した。

湾岸線に入った。

「……あ」と加賀。

「何だ」

「湾岸線だ」

「何が」

「この直線、知ってる。走り屋の話に出てくる道だ」

「湾岸戦争か」と雅紀。

「そうだ。ZやGTRやスープラが競い合った場所だ。今は取り締まりが厳しいが——夜は違ったらしい」

「昔の話だ」と準。

「昔の話だが——この直線は同じ直線だ。アスファルトの下に伝説がある」

「走り屋的に言うと何が特別なんだ、この道」

「直線が長い。視界が開けている。海が見える。風が違う」

「風が違うのか」

「海沿いの風だ。川越の風とは密度が違う。タイヤへの影響が微妙に変わる」

「ディズニーに行く前に走り屋の話をするな」と細田。

「走り屋だから走り屋の話をする」

「まあ、そうだな」

浦安IC。

舞浜IC。

降りた。


TDL駐車場。

精算機の前で加賀が止まった。

「3,000円か」

「そうだ」

「普通車が3,000円だ」

「そうだ」

「呉さんへのオイル代が2,000円だから、それより高い」

「オイル代と比べるな」と雅紀。

「比べた結果、高いということがわかった」

「わかったなら払え」

「払う。でも高い」

「払いながら文句を言うな」

「払うことと文句を言うことは別の話だ」

加賀が3,000円を払った。

「……払った」

「よし入ろう」と細田。

「払った事実を確認した。次は入場料だ」と加賀。

「入場料は——」

「いくらだ」

「一人あたり大人は——」

「言うな」

「なぜ」

「聞くと行きたくなくなる」

「もう来てるぞ」

「来てるが聞くと余計気持ちが——」

「気持ちより行動だ。走り屋の原則だ」

「……そうだな。行く」


入場した。

ワールドバザール。

アーケード状の屋根がある商店街だった。

クラシカルなアメリカの街並みだった。

「おお」と細田。

「……クラシックカーの時代の街並みだな」と加賀。

「クラシックカーの時代か」

「1900年代初頭のアメリカだ。フォードのモデルTが走っていた時代」

「走り屋が走り始める前の時代だな」

「モデルTが走り始めた時代だ。自動車の黎明期だ」

「加賀、ディズニーランドで車の歴史の話をするな」と準。

「ワールドバザールの建物を見ていたら自動車の話になった」

「なるのか」

「なる。あの建物のラインは1920年代の様式だ。自動車の普及とともに変わった建築様式だ」

「……加賀がディズニーランドを車の歴史で解釈してる」と細田。

「走り屋だから」

「そうか」

奥に進んだ。

シンデレラ城が見えた。

「おおー」と全員。

「でかいな」と加賀。

「でかい」と雅紀。

「あれ、中に入れるのか」と準。

「入れる。でも待ち時間がある」と細田。

「何分だ」

「……70分と書いてある」

「70分待つのか」

「70分だ」

「70分でセリカのオイル交換ができる」と加賀。

「オイル交換と比べるな」と雅紀。

「比べた結果、時間の使い方として——」

「使い方の話をするな」

「……わかった」


トゥモローランド。

スペースマウンテン。

「乗るか」と細田。

「乗る」と全員。

「どんなアトラクションだ」と加賀。

「暗闇の宇宙空間を走るコースターだ」と細田。

「暗闇か」

「そうだ」

「暗闇では路面が見えない」

「コースターだから路面は関係ない」

「路面が見えないと速度感が失われる」

「それがスペースマウンテンの魅力だ」

「走り屋として路面と速度感は重要だ。それが失われるのは——」

「楽しいんだよ、それが」

「……乗ってみないとわからない」

並んだ。

50分待った。

乗った。

暗闇の中を走った。

降りた。

「……どうだった」と細田(加賀に)。

「暗闇で速度感がわからなかった。走り屋として不快だった」

「それが感想か」

「それが感想だ」

「楽しくなかったのか」

「楽しいかどうかと不快かどうかは別の話だ。速度感がわからないことは不快だった。でも暗闇でGがかかる感覚は悪くなかった」

「悪くなかったのか」

「悪くなかった。コーナリングの感覚だけは走り屋として理解できた」

「……走り屋目線のスペースマウンテン評だ」

「走り屋だから」

「そうか」


ウエスタンランド。

ビッグサンダーマウンテン。

「これは」と加賀(乗り終わった後)。

「どうだった」と細田。

「良かった」

「良かったのか」

「コースが読めた。コーナーの角度が予測できた。コースターとしての設計が走り屋的に理解できた」

「走り屋がコースターを走り屋目線で評価した」

「コーナリングの手前でGがかかる感覚、コース全体のリズム——あれは設計した人間が車の動きを理解していたと思う」

「ウォルト・ディズニーが車を理解していたということか」

「設計者が理解していたということだ」

「……加賀、ディズニーランドで設計者の話をするな」と準。

「良い設計は語りたくなる。走り屋として」

「走り屋だから」

「走り屋だから」


トゥーンタウン。

耳の大きいキャラクターが遠くにいた。

細田が近づこうとした。

「細田、近づくな」と加賀。

「なんで」

「著作権的に——というより、俺たちが近づくと何か起きる気がする」

「何かとは」

「わからない。でも俺たちが耳の大きいキャラクターに近づくと宇宙の法則が乱れる気がする」

「走り屋が宇宙の法則を語るな」と雅紀。

「経験則だ。俺たちが行くところ、何かが起きる」

「確かに何かが起きるが——」

「近づかない方が安全だ」

「安全優先か」

「走り屋は安全を確認してから走る」

「ディズニーランドでも安全確認をするのか」

「する」

細田が少し引き返した。

「……わかった。遠くから見る」

「それでいい」

「でも写真を——」

「写真は自分たちだけで撮れ。耳の大きいキャラクターを入れるな」

「著作権的に?」

「著作権的に、と朱音さんに後で言われそうだから」

「走り屋が著作権を心配するのか」

「心配というより、朱音さんが怖い」

「……正直だ」

「走り屋は正直だ」


アドベンチャーランド。

ジャングルクルーズ。

「乗るか」と細田。

「乗る」と全員。

ボートが動いた。

ジャングルの中を走った。

動物のモデルが出てきた。

「このルート、意外とコーナーが多いな」と加賀。

「ジャングルクルーズの感想がコーナーの多さか」と雅紀。

「そうだ。水上のコースとして、コーナーが多く曲率が大きい。走り屋的には面白い設計だ」

「加賀、ボートのコーナリングを走り屋目線で評価するな」

「評価した」

「評価するな」

「した」

「……まあ、面白い感想だ」


アトラクション内でアクシデントが起きた。

細田だった。

スペースマウンテンで。

「VTEC入ったァァ」

係員が来た。

「お客様、大声はご遠慮ください」

「すみません」と細田。

「大声を出した理由は何ですか」

「VTECが——」

「VTECとは何ですか」

「ホンダのエンジン機構で——Variable Valve Timing and Lift Electronic Controlの略で——L15AのSOHC VTECが——」

「……お客様」

「はい」

「大声はご遠慮ください」

「……わかりました」

全員が謝った。

係員が去った。

「なんでアトラクション内でVTECの話をするんだ」と加賀。

「感動したから」と細田。

「VTECが入ったのか、コースターで」

「感覚が似てた。高回転で突然伸びる感じが——」

「コースターとVTECは違う」

「でも似てた」

「違う」

「でも似てた」

「……まあ、お前がそう感じたなら仕方ない」

「ありがとな、加賀」

「認めていない。仕方ないと言った」

「それで十分だ」


帰路。

舞浜IC。

湾岸線に乗った。

「……何しに行ったんだ、俺たち」と加賀。

「聖地巡礼だ」と細田。

「ハルヒっぽいシーンはあったか」

「……なかった」

「そうか」

「でも楽しかった」

「それはよかった」

「加賀は楽しかったか」と準。

「ビッグサンダーマウンテンの設計が良かった」

「それが楽しかったということか」

「楽しかった、とは言いにくいが——走り屋として学べるものがあった」

「遊園地で学ぶのか」

「設計から学べることがある。走り屋の道路設計と遊園地のコース設計には共通点がある」

「そうか」

「そうだ」

「訴えられなかっただけ奇跡だ」と準。

「訴えられる理由が俺にはわからない」と加賀。

「俺たちが行くと何かが起きるから」

「何も起きなかった」

「細田のVTECが起きた」

「それは起きた。係員に注意された」

「それが何か起きた、だ」

「……まあ、軽かった」

「次は富士スピードランドにしようぜ。夢より速さだ」と細田。

「それはただのサーキットだ」と全員。

「サーキットの聖地巡礼だ」

「聖地巡礼にサーキットを含めるな」

「含める」

「含めるな」

「含める」

湾岸線を西向きに走った。

「……この直線、帰りに走っても同じ感触だな」と加賀。

「感触が同じか」と雅紀。

「往路も復路も同じ道だ。でも走り屋は同じ道を往復するときに違いを見つける」

「違いは何だ」

「荷重が違う。行きは疲れていない。帰りは疲れている。疲れているとステアリングへの力が変わる」

「疲れているとわかるのか、ステアリングで」

「わかる。セリカが教えてくれる」

「セリカが教えてくれるのか」

「そうだ。俺の状態をセリカが反映する」

「走り屋とセリカの話に戻った」

「走り屋だから」

「そうだな」

セリカが、湾岸線を走り続けた。

川越まで、あと1時間だった。


朱音がメモ帳に書いた。

「ディズニーランド遠征:川越IC→外環道→湾岸線→舞浜IC。駐車料金3,000円(加賀がオイル代と比較した)。加賀の評価:スペースマウンテン"路面が見えず速度感不明・不快だがコーナリングGは悪くない"、ビッグサンダーマウンテン"コースが読めた・設計が走り屋的に良い"。細田がスペースマウンテン内で"VTEC入ったァ"と叫び係員に注意された——記録しておく」

「帰路の湾岸線:加賀"疲れているとセリカが教えてくれる"と言った——走り屋とセリカの関係の深さとして記録しておく」

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