四月十三日 月曜日
風船の 紐の一瞬 空遠く
ふうせんの ひものいっしゅん そらとおく
昨日は、風の強い日でした。
薄いブレーカーのフードを目深に被ると、あっけなく吹き飛ばされました。
突風が「そんなものは、通用しねぇ」と笑っていくのです。
帽子を忘れました。
頭から冷え始めました。
散歩の道を引き返します。
その間も、風が体に「ブオーッ」と当たってきました。
このような天気に、花見デートの約束をしたら大変です。
お洒落な薄着をして出掛けると、酷い目にあうのです。
「こんにちはー」の可愛らしい挨拶をしますよね。
「わあーっ、可愛いなぁ」なんて、言われます。
有頂天になるわけです。
でも、次第に現実の厳しさを知ります。
鼻水が垂れます。
髪はボサボサになり、林檎のほっぺが強ばり、笑顔がひきつります。
指先がとにかく冷たく、肩を縮め、袖の中に隠そうと猫背になります。
乙女な心は、放心状態です。
待ち合わせの時とは、バンジージャンプの落差です。
私は、もう一つ、幼い頃のことを思い出しました。
その当時、大きな公園のそばに住んでいました。
夕食後、ふらりと歩いて、花見の見物に出かけられます。
たくさんの出店が道路脇に並んでいました。
アニメキャラクターのお面や、りんご飴、フランクフルトが売られています。
その中で、私が、毎年、引っかかるのは風船でした。
あの、ふわふわ浮いている風船と歩きたくて仕方がないのです。
ところが、毎年、同じ結末を迎えます。
二つのことが同時にできない私です。
例えば、美味しそうなお好み焼きの匂いがしてきます。
屋台に近づき、覗き込むと、紐が手から離れました。
綿飴を買って、受け取ると、紐があるのを忘れました。
こうして、風船は、一瞬に舞い上がっていきます。
「あーあーっ」
私の声を聞き、風船が手の届くところで待ってくれません。
「馬鹿だねーぇ」
周りの大人の声に、風船が戻って降りてもくれません。
風船は、無情です。
「さあーっ!」
と叫んで、天へ上がっていきます。
風船のキャラクターの笑顔は、意地悪な高笑いに見えました。
「風船はどこへ行くの?」
私は、質問した覚えがあります。
「萎んで、どっかでゴミになるよ」
「そうなのかぁ」
私は風船を買わなくなりました。
あれはどこかへ遊びに行きたくて、いつもウキウキしているのです。
紐なんて、意味がない。
風船にも、私にも。
英語
A balloon string
a moment , release from the hand
Far off the sky
中国語
气球线
脱手一刹那
天边远
スペイン語
Globo y su hilo
Se escapa de la mano
Lejos en el cielo




