表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/8

路地裏の守護者たち

崩落する地下実験場から、ラミエラたちは間一髪で地上へと脱出した。夜が明け始めたギネタールの街に、灰と埃にまみれた彼らが転がり出る。


地上では、地下の崩落音を聞きつけた市民たちが何事かと集まっていた。そこへ、レイヴンが準備していた情報網が火を噴く。街中の広場や掲示板に、エリスが解析し、ルナが監視していた「地下実験の実態」を告発する資料が一斉に貼り出されたのだ。


もはや騎士団は、隠蔽を続けることは不可能だった。

汚職に関与した騎士団の幹部たちは、駆けつけた王室直轄の監査局によって、その場で次々と拘束されていった。かつての権威は地に落ち、市民たちの怒りと困惑の熱気が、街を覆いつくしていた。


数日後。

騎士団の詰所は一時的に閉鎖され、ガレウスら、腐敗に染まっていなかった若い騎士たちが中心となって、組織の再建が始まった。


ラミエラの自宅兼探偵事務所には、連日、多くの依頼人が訪れるようになった。しかし、以前のような猫探しではない。「街の小さな困りごと」から「貴族の不当な圧力の相談」まで、ラミエラはF級冒険者のまま、街の人々の相談役として信頼を勝ち取っていた。


「まさか、こんなに有名になっちゃうなんてね」


エリスの研究所で、ラミエラは苦笑いしながら紅茶を啜った。窓辺ではルナの黒猫が日向ぼっこをし、ルナも珍しく外の空気を吸いに姿を見せている。


「君が騎士団を引退させちゃったからね。おかげで街の魔導管理はめちゃくちゃだよ。しばらくは僕たちの商会が、物流を支えることになるだろうね」


レイヴンはそう言いながらも、その瞳には以前のような「権力を塗り替えたい」という野心ではなく、より大きな「この街を自分たちの手で良くしたい」という穏やかな情熱が宿っていた。


「ねえ、ラミエラ。これからも、その『蟲使い』の仕事、続けるの?」


ルナの問いに、ラミエラは肩に止まるチョウチョさんを見つめた。

彼らとの冒険は終わったのではない。むしろ、この街を本当の意味で見守るための、ようやく始まったばかりの日常なのだ。


「ええ。騎士団がどんなに立派になっても、見えない場所の痛みは、騎士にはわからないわ。路地裏の小さな声を聞くのは、私の仕事だもの」


ギネタールの街は、相変わらず騒がしく、権力争いの火種は尽きないだろう。けれど、路地裏にはもう、隠された真実を暴く準備ができた四人の幼馴染がいる。


ラミエラは事務所の看板を掛け直した。

『ラミエラの相談所 ―蟲と仲間と、真実の行方―』


路地裏の蟲使いの物語は、これからも静かに、しかし確実に、この街の根っこで紡がれていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ