第19話 退学
「僕たち2人は退学を申し出る」
人間に失敗はつきものだ。ここで退学させられたって母親は許してくれる。だって母親がこの高校を受験させた理由は……なのだから。
試験が終わりを迎えると、扉が開いて雅が入ってくる。
「お見事。君たち2人は試験に合格だ。だがここで、規則にのっとり退学とする」
ゆかりの方をみると表情が動かない。僕が見るとすぐに嬉しそうな表情をしていた。
「作兎。今からお前には校長室に行ってもらう。ゆかりはそのまま」
そのあとは彼女にしか聞こえない声で話していて聞き取れなかった。僕だけが残され、1人の先生らしき人がやってきた。
「これをつけろ」
もちろんアイマスクのことだ。僕はつけてから説明を受ける。
「まずはAクラスに戻ってもらう。そのあとに校長室をたずねるように」
クラスに戻って時計を確認するとまだ短針は3をさしていた。クラスには誰もいない。すぐにマップを確認して校長室へと向かう。
ノックは3回、常識だ。
「はいれ」
扉を開けて、礼をする。
「失礼します」
目の前には校長が座っていた。それ以外は誰もいない。
「作兎くんか。まずは座ってくれないか」
やはりなぜか既視感を覚える。見たことあるような気がする。
「まずは退学したことについてだが、こちらで取り消しをしておいた」
やっぱり校長は僕のことを信用しているし、何より期待をしている。
「ありがとうございます」
教頭の顔を拝んでみたい。僕を陥れようとした彼を。
「このテストは教頭が考えた。だが、今日は出張で学校にはいない。僕は普通に賛成をした。内容がおもしろかったからね」
なるほど、つまり今ごろ教頭はニヤニヤしながら出張先にいるんだろうな。
「教頭の名前を教えてほしい。彼は僕のなにだ?」
核心をつく質問に校長は一瞬動揺したがすぐに冷静になる。
「今は教えられない。ただ君の覚悟は伝わったし、教頭の考えもわかった。ただそれだけは僕の口から伝えておくよ」
まだ僕と教頭は会ってはいけない存在になっているということか。僕は1つ礼をした。
「それでは失礼します」
その場を立ち去ろうとしたその時、
「ちょっと待ってくれないか。ギリギリまで言おうか迷ったのだが、いうことにする」
また僕は腰を下ろして真剣な眼差しを受ける。
「実は昨日、君のお母さんが亡くなってしまった」
昨日はずっと家にいてお母さんも元気に暮らしていた。そして、今日の朝だって僕を送り出してくれた。あれは紛れもなく、氷室賢理の実の母だった。
「君がこの事実をどう受け入れてもらっても、構わない。自主退学をしてもらっても問題ない。もちろん実験施設に放り込まれることはなく、普通の日常に戻れる」
こんな形で訃報を受けることになるとは思っていなかった。どうするべきだ?急に涙が溢れてきてしまった。
「他殺か?急な病死はありえない。これは事件だろ」
入院なんて家族そろって誰もしたことはない。たった1度も。なんで校長も……。
「失礼します。僕は退学する気なんてさらさらありません。母親との約束は絶対に守ります」
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