美女への免疫は皆無なんだよ
タルタルソースに溺れたい、今日この頃。
「んじゃあな、ダグ!俺はもう行くぜ!」
自身の年齢について、一段落したのでここを出て行く事をサラリと伝える。
「んー? どこに行くんだ?」
「…………………………………………………」
どこと聞かれると困るな。特に決めていないし、行きたい場所も無いからな。
「思案している最中だな。 ただ、ここ(異世界)での生活は、今後どうして良いのか不安だ」
「そっか。トーゴは貴族の邸に居たんだよな?ならここ(貧民窟)での生活はそりゃあ不安だよな」
「ああ、そうだ。とても不安だ。だが自分でその貴族の邸から逃げる決意を固めたんだ。少し位は苦労しないとな」
「トーゴは偉いな。普通貴族の生活に慣れたら、まずそこから逃げようと何て考えないのにな」
ええっ?マジで? あのぺろぺろを享受しろってか? 無理無理!何時なんどきあの行為がエスカレートするか分かったもんじゃないのに、のほほんとしては居られないんだ。
「そっ…………そうか。まぁ、色々あるんだ……色々、な」
「ああ~そっか………色々か」
言葉を濁した俺にダグは、慰める様にポンッと軽く俺の頭に手を置く。
う~ん………ぺろぺろ行為はバレてなさそうだけど、何か勝手に同情してくれた様だから黙っとこう。うん。特に嘘は付いてないしな。
「じゃあそろそろ行くよ。多分俺がここに居たら、ダグたちにも迷惑になるからさ」
頭に置いてあったダグの手を、そっと下ろすと俺は部屋を後にした。
ダグが「やっぱりちょっと待って!」とか「リケルメたちに聞いてから………」などと言っていたが、リケルメは駄目だ。
バラモス氏と変わらない………てか、それよりもたちが悪い。だってべろちゅーだぞ? ほぼ初対面である筈の俺に、容赦の無いべろちゅーをかます野郎だぞ?そんな奴の側に居たら、何時なんどき後ろを掘られるか分からん。
俺はあくまでも女の子が好きなんだ。
例え現在の俺が、若干女々しい外見をしていてもな。
家から外に出てみると、想像以上に俺の居た場所はボロかった。
家の至るところから雑草が生えており、外壁はひび割れ、陥没した箇所も見受けられた。
うわぁ………こりゃあ立派なホラーハウスだ。
周りを見回しても、ここまでボロくない。
***
グギョルルルル~~~。
トコトコと歩き始めて数分で、俺のお腹が豪快に鳴る。
何故かって? 辺りの家々から、美味しそうな匂いが漂って来たからだ。
そう言えば、バラモス氏の邸でご飯を食べてからどれだけ経ったんだ?
あのギアンって奴のせいで、途中気絶しちゃってたから、良くわからないけどこのお腹の異音具合からして、何食かは食べてないんじゃないかな。
うう~む。 かといって貧民窟の人からご飯を頂けるのだろうか。
だってそうだろ?日々自分達が食べるので精一杯な人達に「テヘヘ!何でも良いんでご飯くださーい☆」とか言えるかっ!!
そんな事いったら、そこら辺にいる厳ついオッサンや、悪そうな二ーチャン等にボッコボコにされて海にプカァか、ギッタギタにされて川にプカァかの2択だっつーの!
あぁどうしよう。
悩みながらも歩くも、お腹からは絶えず騒音の様な音が辺りに響き渡る。怪訝そうな顔でこちらを見てくる多数の視線に、根は小心者の俺は内心で「サーセン、サーセン」と謝りつつ通りすぎる。
「…………ぷっ! ねぇあんた!お腹すいてんのかい?」
艶めいた女性の声が背後より聞こえてくる。
お腹の音……………きっと俺の事であろうと判断して振り向くと、ボンッキュッボーンの魅惑のボディーを、惜し気もなく晒して艶然と微笑む美女が、1部崩れ落ちた壁に背中を預けて寄り掛かって居た。
「……………………………うわぁ…………………」
俺のパッカーーーンと開いた口からは、間抜けな声が出たのち、開きっぱなしになった。
それほどの美女だった。
「うふふ。そんなに口を開きっぱなしにしちゃあ、あんたの可愛らしい顔が台無しさね」
そう言いながら美女の白く細い手が、俺の口元を優しくゆっくりと閉じてくれた。
「…………お腹、空いてんだろ? ついて来な」
はわわ………び、美女が俺の手を引いてくれている。
や、柔らかい………柔らかいよ。それに彼女から漂ってくる香りが、凄く甘い良い匂いだ。
俺は美女に、前世もあわせてご縁がなかったせいなのか、簡単にあてられてしまい彼女の後にフラフラと付いて行ってしまったのであった。
鯵フライのタルタルソース添えで、白飯かっこみたい。
それにしてもタルタルソース…………魔性の調味料よな。何にかけても美味すぎる。
お肉に魚にパンに野菜にご飯に何でも御座れ!
はぁ………お腹空いた…………。