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第7話

「本当ですか?」


「約束します。」


私は戸惑った。


信じていいのだろうか。


父がいない。


私は一人だ。


何を信じればいいのか分からない。


だが、この人は最初から私の話を聞いてくれた。


他の人とは違った。


どうしよう。


迷っている私を見て気づいたのだろう。


警察官はポケットから名刺を取り出した。


そして私へ差し出した。


「もし私が持って来なかったら。」


穏やかに言う。


「この名刺を持って警察署へ来てください。」


私は名刺を受け取った。


その小さな紙が、不思議と安心をくれた。


信じるしかなかった。


「……分かりました。」


警察官は静かに頷いた。


そしてタイプライターを持って立ち上がる。


二人の警察官は部屋を出て行った。


扉が閉まる。


静寂が訪れる。


私はその場に立ったままだった。


父と出会ってから初めてだった。


家に父がいない夜。


話し相手もいない夜。


食卓にも一人。


部屋にも一人。


世界に一人だけ取り残されたような気がした。


その夜。


私は一睡もできなかった。


窓の外が少しずつ明るくなっていく。


鳥の声が聞こえる。


そして気づけば――


夜が明けていた。


ブーブー。ブーブー。夢うつつのなかで遠くで微かに聞こえたブザー音が頭のなかではっき


りしてきた。私は玄関のブザーがなっていることに気づいた。ボヤ~と時計の針が目に入っ


た。えっ?もうお昼前?大変。おお寝坊した。そして、とにかくブザーのなる玄関へ行った。


あっ、でもパジャマのままじゃと思い、「ちょっと、待ってください。」と言った。ブザーが


止んだ。みると昨日の服のままだった。あのまま、朝方まで起きてそのまま眠ってしまった


ようだ。「はい。」ドアを開ける。昨日の警察官だった。「ごめんなさい。遅くなりました。」


手にはタイプライターのケースらしき物を持っていた。本当に持ってきてくれた。嬉しかっ


た。「午後からの郵便物にはまだ間に合うと思うのでがんばってかいてください。」「あっ、


ありがとうございました。」玄関ドアがしまった。私は親切な人だなと思った。でも、


何よりもこれで手紙が書ける。あっ、そうだ。市役所に電話しなくちゃ。「ああ、君も大変


だったね。しばらく休んで良いからね。給料はちゃんと払うから。」市役所の人も知ってい


たみたいだ。ぐぅ。その時、お腹がなった。そう言えばあのまま食事もせず、朝まで起きて


そのまま寝ちゃった。私は昨日作ったポトフに火を通した。そして、一人で食べ始めた。す


ると、涙がボロボロこぼれてきた。家での初めての父のいない食卓。拭いても拭いても涙が


止まらない。父さん…。私はひとりぼっちになるじゃない。嫌だ。そんなの嫌だ。私も一緒


に逮捕して欲しい。父と一緒に。本気でそう思った。何の味もしないポトフをひたすら食べ


た。今日から私はひとりぼっちだ。また涙がどんどん出てくる。そんな時、お母さんの声が


聞こえた気がした。手紙、待ってるわよって。そうだ。私は母に手紙を書かなくちゃいけな


いんだ。食器を片付けるとタイプライターのケースを開けた。そこにはまっ皿なタイプライ


ターがあった。新品?えっ?私、こんなの借りて良いの?そうだ、郵便ポストへ行ったあと


警察署にお礼にいこう。そんなに遠くないし。とにかく、いまは書こう。お母さんに手紙を。


私は自然と「神様。こんな新品のタイプライターで母に


手紙を書けることを感謝します。」そう言っていつものようにゆっくりと一つ一つタイプを


打っていった。もう午後2時を過ぎていた。あのポストに集配に来る時間には間に合う。私


は家を出て大通りに出て角を曲がったところにあるポストに向かった。そうして、角を曲が


ったところ、ちょうどポストのところで昨日来た警察官二人にばったり出会った。というよ


りは待っていた感じだった。私はタイプライターを届けてくれた名刺のアンドレという警官にお礼を言おうとすると「手紙、書けた?」「はい、ありがとうございます。」そして、私はポストに手紙を


いれようとしたとき、「ちょっと、みて良いですか。」と優しく言って手紙をみた。警察官二人


は顔を見合せ、頷いた。「あっ、ごめんなさい。手紙いれてください。」私は何なのかなと思


ったが深く考えなかった。


「あの……。」


私は少し申し訳なさそうに声をかけた。


「今からちょうど警察署へ行こうと思っていたんです。」


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