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第4話

翌日はちょうど休日だった。


二人は街へ出た。


足りない生活用品を買う。


食器。


洗剤。


タオル。


新しいカーテン。


そして帰り道だった。


父は電器店へ入った。


「テレビを見ていこう。」


そう言った。


私は少し驚いた。


店先には新しいテレビが並んでいる。


どれも高価なものばかりだ。


ところが父は値札を見ても迷わなかった。


「これにしよう。」


あっさり決めてしまった。


セリーヌは思わず目を丸くした。


テレビは高い。


それくらいは知っている。


だが父にとっては大したことではないらしかった。


父はお金を持っている。


市役所勤めとしては給料も良いのだろう。


もっとも、自分の給料がいくらなのか私は知らない。


知ろうとしなかった。


働き始めてからも給料の管理は父がしていた。


「着たい服とかあるだろ?」


ある日、そんなことを聞かれたこともある。


だが断った。


孤児院から引き取られた自分を育てるために、どれほどのお金がかかったのか。


想像もつかない。


これ以上もらうわけにはいかなかった。


それでも父は買い物へ行くたびに服を買ってくれた。


私にはそれで十分だった。


休みが終わる前日。


父が言った。


「これからは少し時間をずらして出よう。」


「どうして?」


「お前は朝、手紙を書くからな。」


私は苦笑した。


確かにその通りだった。


毎朝、タイプライターに向かう。


同じ相手へ。


同じような手紙を書く。


もう十年になる。


それなのに、いまだに早く打てない。


一文字ずつ確認しながら打つから、一時間近くかかってしまう。


そのせいで毎朝アランを待たせていた。


「それに。」


父は少しだけ真面目な顔になった。


「あの時みたいなこともある。」


爆破事件。


私は黙った。


「一緒に巻き込まれない方がいい。」


そういうことなのだろう。


「わかった。」


「次のバスでも十分間に合う。」


父は笑った。


それなら問題ない。


私もそう思った。


翌朝から新しい生活が始まった。


父を見送る。


それからタイプライターの続きを打つ。


手紙を書き終えたらバスへ乗る。


市役所へ向かう。


毎日同じ繰り返しだった。


ただ一つ、不思議なことがあった。


毎朝一緒に市役所へ向かっていたはずなのに。


働き始めて数か月が過ぎても。


私は市役所の中で父に会ったことがなかった。


父は別棟で働いていると言っていた。


だから気にしていなかった。


そういうものなのだろうと思っていた。


そして――。


ちょうど一年後の春だった。


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