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第17話

私は迷わなかった。


 車を降りた時だった。


 ふと、一つの風景が頭に浮かんだ。


 少し広い公園。


 真ん中に立つ塔。


 その上にある丸い時計。


 小さい頃、家族で何度も行った場所。


 私は立ち止まった。


「アンドレ。この辺に丸い時計の塔がある公園、知らない?」


「ああ」


 アンドレはすぐに答えた。


「多分、あの橋を渡った先の公園じゃないかな」


 私は思い出した。


 そうだ。


 いつも橋を渡って行った。


 母さんはきっとそこにいる。


 私はそう確信した。


 私たちは公園へ向かった。


 だが人が多すぎた。


 すぐそこなのに進めない。


 少しずつ。


 本当に少しずつしか進めなかった。


 六歳と三歳の子供もいる。


 迷子にさせるわけにはいかない。


 私もアンドレも、ずっと子供たちの手を握り続けた。


 ようやく公園へたどり着いた頃には、そこも人で溢れていた。


 日は傾き始めていた。


 少しずつ視界が暗くなっていく。


 私は何度も母の名を呼んだ。


 けれど声は人々の喧騒にかき消された。


 そして――。


 ついに、その時が来た。


「セリーヌ!」


 私を呼ぶ声がした。


 振り返る。


「ママ……?」


 母は涙で頷くのが精一杯だった。


 六歳の時の面影があった。


 私は走った。


 母も走った。


 そして――。


 二人は固く抱き締め合った。


 今までの時間を取り戻すように。


 強く。


 強く。


 抱き締め合った。


 涙が止まらなかった。


 ああ。


 暖かい。


 母さんのぬくもりだ。


「セリーヌ……」


「ママ……」


 どれだけこの日を待っただろう。


 きっと母も同じだった。


 私たちはただ泣き続けた。


 その時だった。


 突然、三歳の息子が大きな声で泣き出した。


 私にしがみついてくる。


 母と私は顔を見合わせて笑った。


 そして離れた。


 母の視線がアンドレと子供たちに向く。


「あっ、夫のアンドレと六歳と三歳の息子よ」


 母は目を丸くした。


 そして嬉しそうに笑った。


「私はセリーヌだけじゃなく、一気に三人も家族が増えたんだ」


 母は子供たちを見つめた。


「私も歳を取るはずだ」


 そう言って笑った。


「おばあちゃん?」


 六歳の息子が言った。


「そうよ。いつも話してたおばあちゃんよ」


 二人の子供たちは母に抱きついた。


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