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第14話

こうして私たちは夫婦になった。


 その後、二人の子供を授かった。


 そして、一人目の子が一歳になった春。


 父が逮捕されてから、ちょうど五年後だった。


 父が釈放される日がやってきた。


 私は朝から落ち着かなかった。


 待ち続けた五年。


 やっと会える。


 そう思うだけで胸がいっぱいだった。


 アンドレと子供を連れて、私は刑務所へ向かった。


 けれど――。


 父の姿はなかった。


「えっ……?」


 私は呆然と立ち尽くした。


 何かの間違いだと思った。


 だが刑務官は困ったような顔で言った。


「アランさんなら、もう出られましたよ」


「どうして……?」


「待ってるって言ったのに……」


 声が震えた。


「どこに行ったんですか?」


 刑務官は首を横に振った。


「申し訳ありません。それは私たちにも……」


 私は必死だった。


「お願いです。どこへ行ったのか教えてください」


「本当に分からないんです」


「どうして……」


 頭の中が真っ白になった。


 やっと会えると思ったのに。


 五年間ずっと待っていたのに。


 どうして。


 なぜ。


 その間、アンドレは事務室へ呼ばれていた。


 事務室を出た時、その手には一通の封筒があった。


 差出人は――アラン。


 アンドレは静かに封を開いた。


 中には短い手紙が入っていた。


『アンドレ。


 セリーヌと結婚したと聞いた時、嬉しかったよ。


 君ならきっとセリーヌを幸せにしてくれると思ってな。


 子供も生まれたそうだな。


 地獄耳だと言われそうだが、大きな声では言えない。


 これでも元スパイだからな。


 はははっ。


 セリーヌをよろしく頼むな。』


 それだけだった。


 アンドレはしばらく手紙を見つめていた。


 そして静かに折りたたみ、ポケットへしまった。


 外へ出る。


 セリーヌはまだ刑務官たちに食い下がっていた。


「お願いです」


「どこへ行ったんですか」


「父はどこにいるんですか」


 涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら尋ね続けていた。


 刑務官たちも困り果てていた。


 アンドレは何も言わなかった。


 ただセリーヌの肩をそっと抱いた。


 セリーヌは振り向いた。


 その顔を見た瞬間、すべてを悟ったように泣き崩れた。


 春の風が静かに吹いていた。


 父はもう、どこにもいなかった。


その頃――。


 アランは一つの墓の前に立っていた。


 墓石には、小さな写真が添えられている。


 五、六歳くらいの少女とアランが並んで写った写真だった。


 多少色褪せてはいたが、誰かが時々手入れをしているのだろう。


 墓の周りは綺麗に掃き清められていた。


 アランは苦笑した。


 そして静かにしゃがみ込む。


 しばらく写真を見つめた後、小さく呟いた。


「パパは……おまえのような良い子と出会えた。幸せだったよ」


 その声は震えていた。


 目には涙が浮かんでいた。


 アランはしばらく動かなかった。


 やがて立ち上がる。


 そして振り返ることなく去っていった。


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