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黒冠のアルク ― 第一部完結/第二部・皇女編連載中 ―  作者: 久遠 恒 


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決断

第11章:細い回廊


ブラッククラウンはレイグナー艦隊から離れ、全速で「小規模星間乱流帯」に向かっていた。

数時間で目標座標に近づく。

今まで無人観測機も通ったことがない危険宙域。

ノアがセンサーを見ながら言った。

「星間流に小規模な乱れ。続いている。

 乱流強度は帝国の観測と一致。」

ノアが続ける。

「周期変動は不規則。これも帝国の観測と同じ。」

ガロンが腕を組む。

「つまり通れねえ場所だな。」

アルクは何も言わなかった。

ただ前方の宙を見ていた。

しばらくしてアルクがルナに声をかける。

「ルナ、操縦、替わる。」

ブラッククラウン号は航路を外れて、低速で乱流帯の外縁に沿って進んだ。

ノアがセンサーをチェックして言う。

「星間流に不規則に乱れが発生している。

 周期性は無し。」

ノアが顔を上げてクルーに言う。

「これ以上、センサーで観測しても意味ないよ。

 帝国が過去に観測してるんだから。」

その時、アルクが操縦席から立ち上がり、ゆっくり前に出た。

正面スクリーンの前に立ち、宙の一点を指さした。

「ここだ。」

ガロンが小さい声で尋ねる。

「通れるのか?」

アルクが答えた。

「中型艦までなら……、

 誘導すればどうにか。」

ノアがセンサーをチェックする。

特に情報はない。

「駄目だ。センサーの観測結果は変わらず。

 道が分かるのはアルクだけ。」

ノアは肩をすくめた。

「危険だけど、通れる。」

アルクはつぶやいた。

「リア、レイグナーさんに連絡。

 『道を見つけた』と。」

通信が開かれる。


第12章 決断

レイグナー艦隊旗艦艦橋。

通信士が報告する。

「ブラッククラウンより連絡。

 『道を見つけた』。

 繰り返します。

 『道を見つけた』。」

レイグナーが命令する。

「通信、回せ。」

通信が接続される。

スクリーンにリアの顔が現れる。

『道を見つけました。通れる場所があります。』

司令室に緊張が走る。

「航行可能帯の座標は特定できるか?」

レイグナーが尋ねる。

『それは無理です。』

リアが即答する。

『座標は不規則に変動しています。

 以前の帝国の観測結果通りです。

 乱流帯の中のチューブ状空間を把握できるのはアルクだけです。』

予想通りの答えだった。

やはりアルクに賭けるしかないか。

リアが続ける。

『大型艦は機動性が低いので危険です。

 巡洋艦、駆逐艦ならアルクの誘導に従ってもらえれば航行可能です。』

「分かった。

 すぐに奇襲部隊を向かわせる。

 以後は奇襲部隊指揮官の指示に従って欲しい。」

『了解しました。』

リアは敬礼して通信を切った。

レイグナーは副官の顔を見る。

「任せたぞ。

 時間がない。先行してくれ。

 我々も後に続く。

 君が敵後方に出る頃に、戦闘が始まるだろう。」

「お任せください。

 足の速い艦だけで、すぐに出撃します。

 戦艦は置いていきます。」

レイグナーはうなずいた。

足早に去る副官の後ろ姿を見送る。

すぐに航法参謀を呼ぶ。

「予定通り、小規模星間乱流帯に敵艦隊を誘い込む。

 艦隊運動の指揮を頼む。

 奇襲部隊は現地到着後、乱流帯の中のチューブ状空間を通過して敵の背後に出る。

 戦闘開始直後に奇襲できれば理想的だ。

 その時間を考慮して艦隊を動かしてくれ。」

***

「休憩時間だね。」

ルナが言う。

「のんきな奴だ。

 奇襲部隊が到着したら、すぐにドンパチだぞ。」

ガロンがあきれた声で言う。

「到着まで、数時間はかかります。

 到着次第、乱流帯の中を誘導することになります。」

リアが説明する。

「ブラッククラウンの仕事は乱流帯を抜けるとこまでだよね?」

ノアが尋ねる。

「奇襲部隊の指示に従えと言われていますが、この船で敵の艦隊に突っ込めとは言われないと思います。」

リアが真面目に答える。

ガロンがうなずいて言う。

「船によって強み弱みがあるからな。

 艦隊戦のど真ん中じゃ、この船は二分と持たねえ。

 頼まれてもお断りだな。」

「ねえ、レイグナーさんが勝ったら、ちゃんとお礼、もらえるかな?」

ルナが心配そうに言う。

「大丈夫です。

 ケードさんが払ってくれます。」

リアがまた真面目に答える。

アルクは操縦席に座り、静かに目をつむっている。


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