第4話 帝国士官候補生リア
第4章 帝国士官候補生リア
帝国士官学校。
白い床、白い壁、無駄のない動線。
秩序は美しく、そして冷たい。
リア・ソーンは、戦術シミュレーターで最終局面の陣形を完成させた。
封鎖宙域における追跡、補給線の遮断、目標捕縛までの時間短縮。
評価はSS。模範解答。
教官がうなづく。
「リア・ソーン。君は特任任務に就くことになった。」
資料がリアに転送される。
リアは送られてきた任務データを開いた。
画面に表示された船の名を見た瞬間、指先が止まる。
ブラッククラウン号。
そして船長の欄に表示された名前。
アルク。
リアの視界が、ほんの一瞬だけ遠くなる。
赤い警報灯。
傾いた通路。
差し出された少年の手。
「こっちだ。」
次の瞬間、リアは瞬きをして端末を見直した。
画面には、帝国軍の報告書が並んでいる。
帝国輸送艦への攻撃。
物資の強奪。
その下に、辺境星域での呼び名が記されていた。
――航路をひらく黒冠。
リアは小さく息を吐く。
そして資料の確認を続ける。
作戦目標:ブラッククラウンの拿捕
重要参考:船長アルクの思考傾向を把握している者の起用
画面に映る少年の顔。
アルク。
(………どうして、そっちへ行ったの。)
海賊団ブラッククラウン。
その船長アルク。
幼馴染のアルクが海賊になり、帝国輸送艦を襲っていることは知っていた。
しかし、実際に自分がその拿捕作戦への参加を命じられると動揺を抑えられない。
教官が説明する。
「君は対ブラッククラウン作戦の戦術統制担当だ。
追跡・封鎖・捕縛、その指揮を任せるとのことだ。
一時的に特務少尉扱いとなる。」
十六歳、士官候補生の私が? という、疑問はあった。
今回はアルクの知り合いという点が考慮されたのだろう。
ブラッククラウンが辺境星域での政治案件になっていることもある。
「捕縛の成功が最優先。君の航路予測の能力は極めて優秀だ。
“彼”を捕まえるんだ。」
リアは一瞬、唇を噛んだ。
「……任務を遂行します。」
理性がそう言わせた。
けれど心がどこかで、別の言葉をつぶやく。
捕まえなければ、彼はいずれ殺される。捕まえれば、生きることができる。
生かすために、捕まえる。
それが、リアの自分への言い訳だった。




