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黒冠のアルク ― 帝国航路に背く者たち ―  作者: 久遠 恒 


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第3話 封鎖された航路

第3章 封鎖された航路


帝国からの通知は、辺境星域を震撼させた。

『辺境星域の治安悪化により、航路を一時封鎖する。

 期限、今夜零時。

 未登録船舶の航行は違法扱い。航路税は三倍に改定し、安全保障費に充当。』

ルナがモニターを睨みつける。

「安全って、誰の安全よ……。」

***

数日後。

ブラッククラウン号には救援要請が次々に入っていた。

短い文章、弱いビーコン、必死の座標。

「医療品不足。」

「燃料枯渇。」

「浄水装置停止。」

ガロンが低く言う。

「こりゃ放っておくと、大勢、死ぬな。」

ノアが淡々と解析を進めている。

救援要請の発信元、不足物資の種類と量、残存人口。

命が数字に換算されていく。

ルナがアルクを見る。

「助けに行くの?」

アルクは椅子から立ち上がり、軽く伸びをした。

「行く。今すぐでないと意味がない。」

「帝国の輸送艦を襲えば、また帝国の艦隊、出てくるよ?」

「来るだろうな。」

「捕まったら……。」

「捕まらない。終わらせない。」

アルクは淡く笑った。

「守るために奪う。俺たちのやり方だ。」

ルナは溜息をつく。

反対したい。怖い。

けれど……。

「船長、分かってる。

操縦と機関部は任せて。」

ノアが言う。

「作戦計画、組むね。」

ガロンは短く頷いた。

「背中は守る。任せとけ。」

彼らが従う理由は、命令だからではない。

この船長が、絶対に“仲間を置いていかない”と知っているからだ。

***

帝国中央星域。

航路統制局。

巨大な航路図がフォロ画面に投影されている。

青い光で表示されるのが帝国正式航路。

その外側、灰色の空白が辺境星域。

その空白の中に、小さな赤い点が光っている。

ブラッククラウン。

会議卓を囲む統制局の高官と軍人たち。

高官の一人が言った。

「また輸送船を襲ったそうです。」

別の高官が肩をすくめる。

「物資はコロニーに配布。

 例によって“善行”ですな。

 狙うのは帝国拠点向けの物資ばかり。」

数人が苦笑した。

「海賊にしては、ずいぶん親切なことだ。」

軍人が言う。

「問題はそこではない。」

航路図を拡大する。

辺境星域に細い線が表示される。

「この航路だ。

 ブラッククラウンが通った後、同じ経路を民間船が通過している。」

「つまり?」

「航路が出来た――。

と、いうことになる。」

沈黙が広がる。

高官の一人が指で机を叩いた。

「帝国の航路管理外……。

由々しきことだ。」

別の者が言う。

「辺境では、こう呼ばれているそうです。

航路をひらく黒冠ブラッククラウン。」

誰かが鼻で笑う。

「英雄扱いか。」

軍人が低く言った。

「英雄は厄介ですぞ。」

高官がうなづく。

「秩序が乱れる。

 この船を放置すると。」

別の高官が言う。

「いずれ辺境は帝国航路に依存しなくなる。

 それは帝国の統治が失なわれるということです。」

短い沈黙。

「捕まえなければ。」

「英雄になる前に。」

軍人が発言する。

「すでに追跡部隊を出している。」

軍人は端末を操作した。

一人の名前が表示される。

帝国士官候補生リア・ソーン。

「誰だ? この女は?」

高官が尋ねた。

「ブラッククラウン船長アルクの幼馴染。

 アルクの行動の癖を熟知している。

 若い士官候補生だが、非常に優秀だ。

 この者に作戦の戦術統制を担当させる。」

軍人が説明する。

「適任なのだろうが、若いな。

 大丈夫なのか?」

軍人が笑う。

「ご心配なく。

 軍高官の推薦状付だ。」

「作戦は軍に任せましょう。」

統制局の高官たちはうなづいた。

***

ブラッククラウン。

数日後、帝国広報はあらためて彼らを「辺境を扇動する海賊団」と発表した。


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