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クロス・コア 〜転生先はサイバーパンクな滅びの地、いじめられて死んだ俺は強化兵にされていた〜  作者: 炭石鹸
転生したって、クソ野郎は直らないらしい

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12/20

お前、藤津か

扉を蹴り開けると、饗宴の匂いが鼻を突いた。

広い部屋だった。柵の外の廃屋とは比べ物にならない、絨毯敷きの床。壁際には旧文明の調度品らしき品々が並び、天井からは煤けたシャンデリアが下がっている。中央の長机には、皿に盛られた肉と酒瓶が並んでいた。他の区画で騒ぎが起きていることなど、まるで知らないかのような光景だった。

その奥の椅子に、男が座っていた。

身の丈は俺より頭一つ高く、肩を怒らせるようにして座っているだけで威圧感がある。整髪料で固めた七三分けの下、大きく二重がくっきりとした目がこちらを値踏みするように動いた。あばた面の青白い肌に、太く濃い眉が角度をきつく寄せられている。分厚い唇の大きな口、大きく高い鼻、張り出したエラ。顔の造作の一つ一つが無駄に大きく、濃かった。歯だけは白く整っていて、この場に不釣り合いなほど清潔な光を放っている。両手の指という指に指輪をはめ、厚みのある手で杯を持っていた。杯を傾ける仕草にすら、見せつけるような芝居がかった動きがある。

「なんだ、貴様ら」

低い声だった。だが、地声とは明らかに違う、無理に低く響かせている作り声ではなかった。杯を置き、ゆったりと立ち上がる。椅子が床を擦る音が、やけに大きく響いた。その足取りに、怯えの色は微塵もない。

背後で、ジンが低く声をかけてくる。

「レン、気を抜くな」

短く頷き、フジツへと向き直る。

「フジツ・ヒトシだな」

低く問うと、フジツの眉が跳ね上がった。だが、その顔に浮かんだのは動揺ではなく、むしろ愉快そうな薄笑いだった。

「オレ様に向かってその口の利き方、いい度胸だ。どこの馬の骨か知らんが、灰原領主に向かってずいぶん舐めた口をきいてくれるな」

肩を怒らせ、悠然とした足取りで一歩踏み出す。両手の指輪が、松明の明かりを受けて赤く鈍く光った。

「屋敷の中を好き放題荒らし回っておいて、ただで済むと思うなよ。オレ様の下には、まだいくらでも戦力がいる」

声には、揺るぎない力があった。視線もこちらから逸れることなく、真っ直ぐに据えられている。この男は、本気で自分たちが負けるはずがないと信じ切っていた。

喉の渇きを覚えながら、拳を握り直す。長い夜は、まだ始まったばかりだった。

「た、大変! 見張りが破られて……」

長机の陰から、けたたましい声が上がった。丸々と太った女が、香水の匂いをまき散らしながら駆け寄ってくる。横に大きく膨らんだ丸髷が、動くたびに大袈裟に揺れていた。呑気にすら見える登場だったが、纏う空気には妙な余裕があった。侮っていい相手かどうかは、まだ分からなかった。

「落ち着け、ヒトミ」

フジツが鷹揚に答える。声には、余裕すら滲んでいた。

「オレ様の屋敷に踏み込んでおいて、無事で済むと思ってる連中がいるとはな。いい度胸だ」

その陰から、巨漢の少女がのそりと姿を現した。縦巻きの金髪ロールを揺らし、あばた面の頬を膨らませている。年の頃はスズと大差ないはずだったが、体格は俺よりも一回り大きい。両腕には、厚い革の籠手が嵌められていた。

「お父様、あの連中はなんですの?」

太い腕を組み、こちらを睨みつける。長机の脚を片手で軽々と持ち上げてみせる仕草に、警戒を新たにする。

「ネズミが紛れ込んだだけだ」

フジツが素っ気なく答えた。

隣には、痩せぎすの少年が蝶ネクタイを直しながら、粘着質な目でこちらの様子を窺っていた。懐から古めかしい懐中時計を取り出し、指先で弄びながら、出っ歯の口元を歪めている。

「お前らがどれだけの覚悟でここに来たか、その身で味わわせてやる」

フジツが、値踏みするような一瞥をこちらへ寄越した。

指先が、指輪をゆっくりと撫でる。赤い石の奥で、何かが脈打つように光り始めた。

言葉と同時に、拳が突き出された。空気そのものが圧縮されたような塊が、正面から飛んでくる。放たれる直前、苛立ちに任せて声を張り上げた拍子に、指輪の光が一段強くなったのが目の端に映った。

とっさに横へ跳んだ。頬をかすめた衝撃が壁ではなく、後ろにいた仲間の一人を直撃した。短い悲鳴と共に体が吹き飛び、長机を巻き込んで床に転がる。呻き声はあったが、命に別状はなさそうだった。

「ほう、避けたか。案外やるな」

フジツが、愉快そうに目を細める。

不意に、その目の色が変わった。愉悦に、微かな翳りが差す。値踏みするようだった視線が、今度は探るようにこちらの顔の上を這っていた。

苛立たしげに歪んだ口元。追い詰めるように据えられた目。その一瞬の表情が、記憶の中の『誰か』と重なった。うんざりした顔。耳障りな笑い声。槽の中で見上げた、あの光景。断片だったものが、今、目の前の男の顔の上で像を結んでいく。

「……お前、藤津か」

「いかにもそうだが?」

低く漏れた問いに、フジツは涼しい顔で答えた。

「まさか、転生していたのか」

「……ああ、そうか。そういうことか」

得心したように、フジツが小さく頷く。ようやく質問の意図を汲み取ったらしい。

「いかにもオレ様は転生者だ。前世の知識と経験を活かして、君たちのような愚かな下々の民を庇護してやっている、ありがたい存在だよ。感謝したまえ」

芝居がかった仕草で、両手を広げてみせる。

「お前は、覚えてねえのか。俺のことを」

低く問う。

「さあな。オレ様くらいになると、雑魚の顔をいちいち覚えてはおられんからなぁ」

その口ぶりに、腹の底が冷えていくのを感じた。忘れられている。あれほど鮮明に自分を苦しめた記憶が、加害者の側にはまるで残っていない。

「学校の、四階の非常階段」

低く、絞り出すように言う。

「自分で突き落として、殺した奴の顔を覚えてないのか」

フジツの表情が、微かに揺れた。

「……ああ〜、思い出した。そういえばいたなぁ、勝手に非常階段から飛び降りて死んだ奴」

悪びれた様子は微塵もなかった。あの死を、自らの手による殺人ではなく、勝手に起きた事故だとでも思い込んでいるらしい。

「そうか。お前、蓮か。前世でも底辺、今世でも底辺か。つくづく、持たない奴だな。ククク……」

上品ぶった笑い声に、拳を握り直す。

「見ろよ、蓮。オレ様はなぁ、今世でも大活躍だ。こうして領主になり、家族にも恵まれている。オレ様の家族はな、全員名前に『ヒト』が入ってるんだ。妻もヒトミ、娘はヒトコ、息子はリヒト。……分かるか、この誇り」

勝ち誇るような笑みが、家族全員の顔に浮かんでいた。この程度の脅威になど、揺らぐはずがないという確信めいた余裕が、その場を包んでいる。

「アタクシの名も、旦那様が見初めてくださった大事な由来がございますのよ」

ヒトミが甲高い声で割り込む。誰も聞いていないその話を、勝手に続けようとしていた。

「わたくしの名も自慢の一つですのよ」

ヒトコが太い腕を組んだまま胸を張る。

「ボクの名前も、でしょ」

リヒトが気だるげに付け足した。

「今はそんな話をしてる場合じゃねえだろ」

思わず口を挟むと、フジツが喉の奥で笑った。

「まあ、いい。調子に乗れるのも今のうちだ」

背後で、扉から踏み込んできた見張りの二人が得物を構える。ジンともう一人が、素早くそちらへ向かって動いた。

「お前ら、この方をどなたと心得る! 灰原領主、フジツ・ヒトシ様だぞ!」

見張りの一人が叫ぶ。だが、金属同士がぶつかる甲高い音と共に、その声はすぐに途切れた。ジンが得物を弾き飛ばし、抵抗する見張りをそのまま組み伏せる。もう一人は、隣にいた男が短刀を突きつけて動きを封じていた。

「知ってるから来てるんだよ」

言い捨てると、フジツの口元から笑みが消えた。

「オレ様の家族に手を出すつもりなら容赦はしねえぞ! ヒトコ、ヒトミ、リヒト! こいつらを黙らせろ!」

その号令に合わせ、ヒトミが甲高い悲鳴じみた声を張り上げた。首元の飾りが赤く光り、空気そのものが震えるような衝撃波が広がる。近くにいた仲間の一人が、耳を押さえてよろめいた。ヒトコが咆哮と共に長机を蹴り飛ばし、籠手をつけた拳を振りかざして突進する。リヒトは懐中時計の蓋を開き、その場からふっと姿を掻き消した。

「囲まれるな、各個で当たれ!」

ジンの怒声が飛ぶ。仲間たちが即座に散開し、ヒトコとヒトミへとそれぞれ向かっていった。

「お前の相手は、オレ様一人で十分だ」

フジツが低く言い、指輪をはめた拳を握り込む。赤い光が、その拳全体を包み込むように膨れ上がった。

「来い、蓮」

低い挑発と共に、フジツの姿が、想像以上の速さで間合いを詰めてきた。

AIが書いて、私が編集

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