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娘と父の関係

「この場に立ち会う多くの皆様、はじめまして。私の名前はメッセ。今ここで裁かれている、ロガンの娘の一人です。しかし庶子のため、これまで皆様の前に出ることはなく、長く城内の『離れ』で暮らしていました。現在はオルグ陛下に王位継承権放棄を宣言し、また王籍からも抜け、一人の国民として暮らしております」


 着ている洋服に比例しない、上流階級者の礼を披露する。先ほど檀上にあげられた青年は、私が挨拶を行っている間に、一旦檀上の隅で控えてもらうよう連れて行かれた。


「親子であるのに、顔を会わせることは初めてですね、お父様」


 檀上に上がった私が睨みながら見下ろすが、父は俯き震えたまま。


「私の母を……っ。産みの母の名を、当てられますか!?」


 叱責するように声を荒げれば、一際大きく肩を動かされた。

 なんと情けない姿だろう。こんな、ただ娘に大声を出されただけで脅える男が、一国の王だったとは。


「そこの貴方。私が父親と初めて顔を会わせたと言われ、信じられますか?」


 隅に置かれた青年へ問う。少しは落ちついたのか、ゆっくりと青年は大きな声で答える。


「噂は聞いてはいた。だけどあんた、城内で暮らしていたんだろう? それが本当なら、信じられない」

「しかし事実なのです。この男は、一度も離れへ足を運んだことはなく、また庶子の人数さえ把握せず、全く気にかけない酷い男だったのです」

「その点については、私、パニエが真実だと述べます。ロガンが当時、離れで暮らして人数を初めて知ったのは、ラコーレ国との会談直前のことでした。ロガンは離れに暮らす自身の子に、ちっとも興味を抱いておりませんでした」


 ラコーレ国との会談。それが最近の話であることは、ここにいる多くの人が知っている。さらにパニエ様が断言されたことにより、人々はざわついた。


「つまりロダンは人数を知らず、ただピカロとリダの二人に王位継承権を与えるため、法律を変えたのです。その結果、どうなったと思います?」

「王位継承者が増えたんだろう?」


 さらに落ち着きを取り戻した青年が答えてくれる。


「はい、その通りです。私たちはただ、権力争いが起きないよう、必要最低限の物を与えられ生かされていました。しかし突然、オルグ陛下やバトル殿下たちと同じ立場になったのです。その為護衛の数は増え、王子や姫にふさわしい教育をと、教師陣が送りこまれてきました。つまり私たちの衣食住に、大きな変化が起きたのです」

「衣食住の変化……。それってつまり、離れに暮らしていた連中にかかる金が、増えたってことか?」

「はい。この男の罪の一つが、まさにそれです。この男は自分が発案した法律によって、どれだけ王族にかかる費用が増大するか考えず、愚かな策を立案したのです。そして足りなければ税を上げ、民から金を得て補充すれば良い。そう思っていた男なのです!」

「な……っ。そのせいで俺たちは苦しめられていたのか……っ? そんな簡単に、税を上げれば、なんでも解決すると思っていたのかっ? 自分たちだけの問題が!」


 この場の庶民の代表者のように、青年が叫ぶ。辺りからはそれに同調するよう、『ふざけるな』という怒声もあがる。


「亡きセミーリャ様、セシア様、そしてパニエ様は国民への負担を考え、反対の声をあげられていました。そしてセミーリャ様から、税が上がった時について教えられていた私達は、王の座がオルグ陛下に移ったと同時に、成人している者は全員、王位継承権を放棄し王族からも離れました。この法案に反対だった皆様の協力により、城を出て、すでに町で暮らしている者が何人もいます」

「ロガン、覚えていますか? あの時、私が伝えた人数を。あれはその時、離れで暮らしていた人数でした。それでも貴方は驚きましたね。しかし実際の貴方の庶子は、亡くなった子も含め、五十三人!」


 パニエ様から援護なのか、容赦ない一撃が放たれる。それにより、今日一番ではというざわめきが発生する。あまりの人数に、動揺している人も多い。


「まったく、女癖の悪い男ですね。次々と新しい女に手を出しては妊娠させ……。次々弟、妹が離れに連れて来られ、軽蔑していました。一体、どれだけの女性が泣かされたことか。コルデに熱を上げ始めてからは、多少落ちつきましたが、それでも一人の女では満足できなかったようで。実際、ピカロ、リダより年下の子が今も離れで暮らしています」


 コルデはそのことに、気がついていたのだろうか。だが、そんなことを問い詰めはしない。この泣きじゃくるだけの姿を見たら、知っていたのだと分かるから。知らなかったら、もっと取り乱す反応を見せるはず。


「ふざけるな! 次々女に手を出したから、税金が上がっていただと? そんなこと、許されるか! しかもなんだ、その人数は! そんな人数の王子と姫がいたら、どれだけ金があっても足りないじゃないか!」

「そんな男、子どもができないよう、切れば良かったのよ!」

「女好きと有名ではあったけれど……。まさか、ここまでなんて……」


 集まった女性の父への評価は、さらに低くなる。今までが底ではなかったのだと分かる。


「……お前、本当に子どもの人数を知らなかったのか? 自分の子どもだろ?」


 ついに舞台の上で青年が動き、中央に戻ると父の胸倉を掴む。


「し、知らない……っ。知らなかった……っ。それに、誰も教えてくれなかった……っ」

「この最低野郎が!」


 堪らずと放たれた青年の拳が、父の頬にめりこんだ。


「お前がそうやって……。そんなのだから、うちは貧しくて、弟の薬が買えなかった! 金さえあれば薬が買えて、弟は……! なあ、こいつと会ったのは本当に初めてなのか? こいつの母親を言い当ててみろよ!」


 殴られた父の肩を掴むと揺さぶるが、もちろん答えられるはずがない。あまりに多くの女に手を出しすぎたから、分からないのだろう。中にはただ目に付いた使用人にまで、なんとなく手を出したという場合もあると聞いている。本当、ろくでもない男。


「……父が愛していたのは、ピカロとリダだけ。それ以外の子どもは、公にされていた四人と、その他だけという認識なのよ……」

「どこまで腐っていやがる!」


 突き飛ばすように肩から手を離し、青年は自分の頭を乱暴にかきむしる。怒りをどこへぶつけたら良いのか、分からないようだ。

 先ほどの青年の発言。察するに、彼の弟は亡くなったのかもしれない。お金さえあれば買える薬で、それを使用すれば治って生きていられたのかもしれない。それか現在生きているとしても、なんらかの後遺症があるか……。どちらにしろ、良くない話だろう。

 こうやって悲しむ民が増えると分かるはずなのに、なぜあんな法律を……。税金を得ようとしても、勝手に無限に生まれるものではないのに。


「青年よ、国民たちよ、ロガンの暴走を阻止できなかった私達にも罪がある。申し訳ない。この場にて、そのことを謝罪する」


 立ち上がったオルグお兄様が皆に向け、頭を下げる。それに倣い、セフォン様以外、檀上にいる現王族の皆が立ち上がり頭を下げる。それでも父はなにも言わない。俯いて黙ったまま。その姿に怒りがこみあげる。


「お父様、なんとか言いなさいな! 他の皆に謝らせ、ご自分だけだんまり? 仮にも国王だった男が、なんて情けない姿なの!」

「……情けない、だと……?」


 お父様がようやく顔を上げ、睨むように私を見る。初めてこの場で、やっと瞳に力が入った。


「ふざけるな! 王族として、王太子として育てられてきた、この私に向け……! 無礼な! どれだけ私が人生で我慢を強いられてきたのか、お前に分かるか! ただ王族、王太子、その理由だけで、どれだけ……っ、私に自由がないと……っ」

「だから女遊びで、鬱憤(うっぷん)を晴らしていたと?」

「ふんっ。こっちが声をかけんでも、向こうが勝手にすり寄ってきていただけよ」


 瞬間、心が冷えた。この男は、どこまで自分にとって都合の良いように物事を考えるのだろう……。許せない。


「……私の産みの母は、嫌がった。抵抗した。それでも無理やり抱かれたのよ、貴方に!」


 本人が文章を残していた。王に無理やり、純潔を奪われたと。どれだけ拒んでも放してくれず、助けを呼んでも誰も来てくれなかったと。それらは嘆きや怒りからだろう。つづられた文字は震え、乱れていた。


「覚えがないのかしら? 自分の誘いを断れば、お前の実家、及び婚約者の家を潰すことなど簡単だと脅した記憶が。母は私を産みたくなかった。けれど気がついた時には、手遅れだった。婚約者とは破局し、私を産んだ母は……。自ら死を選んだ」


 ここまで言っても記憶を探るように、眉をひそめている。

 本当に私の産み母のことを思い出せないなんて……! その瞬間の快楽さえ得られれば、後はどうでもいいの? こんな男が父親なんて、吐きそう!


「離れで育った私たちにとって、親と呼べるのはセミーリャ様だけ! 貴方のような男を、親とは認めない! オルグ陛下、この男を世に放てば、今後も多くの女性が不幸となるでしょう! 娘としても、一人の女としても、極刑を求めます!」


 それだけ言い、一礼すると檀上を降りる。それに倣うよう、青年も降りてくると、振り向き父に向かって言う。


「……あんた、かわいそうだな。実の娘に親じゃないと言われ、極刑を求められてさ。仮に生きられたとしても、その下半身、手術してもらえよ。俺には妹だっているから、あんたみたいな奴になんかされたらと思うと、恐怖でしかないよ」


 父は青年を睨むが、青年は動じず、それ以上相手にする必要はないと、背を向けた。

 壇上を降りた以降はこれもなにかの縁と、二人で並び、最前列に立つ。


「……あんなのが父親なんて、あんたも災難だな」

「ええ。けれど、育てて下さったセミーリャ様が母であることは、私達の誇りよ。私こそごめんなさい。父のせいで、大切な弟様が……」


 きっと青年のような家族は、他にも大勢いるだろう。どれだけの人に何度謝っても、きっと許してもらえない。私たちの一生をかけても、救える人なんていないかもしれない。


 誰にだって、大切な人たちがいる。自分だって、コルデ、リダ、ピカロという存在がいるのに。基本的なことを忘れ、自分は不自由だと言い張り、横暴な振舞いに出ていたとは……。

 祖父母はなぜこんな人間を、王太子として選んだのだろう。故人に会えるのなら、問い詰めたい。でも待って、ディロは祖父の代から横領していたのだから……。もしかしたら祖父母も父と同じく、腐っていた人間なのかもしれない。

 その事実に気がつき、怖気(おぞけ)がする。いつか自分も、この人のような振舞いをしてしまうのではないかと。


「すみません。貴族である私も、ぜひそこへ立たせていただきたい」


 細目の男が笑みを浮かべ、挙手をするとそんなことを言い始めた。それを檀上のお兄様たちは、拒否しなかった。

 檀上へ上がる男を見ながら、青年が問うてくる。


「あの細目の男、知っているか?」

「ええ。間違いなく、貴族よ。それもセミーリャ様に最も近い、貴族の家の息子」


 この局面。面倒だけれど、きっと頼りになる男性だろう。


「皆様、ご機嫌うるわしゅう」


 丁寧にお辞儀をするが、どこか芝居にも見えるのは、私が本性を知っているからだろうか。


「私はセミーリャ様の兄である、マノス侯爵の三男、メティラです。亡きセミーリャ様の甥の一人ですが、三男という立場。しかも優秀な兄が二人もいるため、父の跡を継ぐことはないと考え、商いに精を出しております。主に輸入品を扱う、雑貨店を経営しております」


 その雑貨店は富裕層向けではなく、店名を変え、大衆向けでも営業している。それなりに繁盛しており、名前を聞けばここにいる大半の人が分かるだろう。


「そんな立場上、外国へ行くことも多いのですが……。どこへ行っても最近は、下半身がだらしない国王、泣き虫王妃、躾けをされていない野生の王子と姫のいる国の者と揶揄(やゆ)され、肩身が狭い気持ちを味わっています。これらが誰を指しての揶揄か、皆様もお分かりかと?」


 両手を広げ、答えを待つメティラへ向け、青年が答える。


「そこにいる、四人だろ」

「その通りにございます!」


 正解だと拍手をするが、隣に立つ青年は嬉しそうではない。この茶番、メティラ様はいつまで続けるつもりなのかしら。


「しかし、いくら揶揄される人物とはいえ、こんなにも涙を流される女性を放っておくことは、果たして紳士としてふさわしいのでしょうか」


 まるで悩むように顎に手を当てながら檀上を歩き回り、やがてコルデの前に立つ。それからハンカチを取り出すと、しゃがみ、コルデの頬に優しくハンカチを当てる。


「……ありがとう……」


 そう言った先から、またコルデは泣く。


「貴女もロガンに好意を持たれなければ、この場に引きずり出されることはなかったでしょうに」


 優しく声をかける男の言葉に、コルデは頷く。

 それが(かん)(さわ)った人たちから、声があがる。


「そんな女の味方をするのか!」

「セミーリャ様の甥のくせに!」


 だがメティラはそんな声を無視する。


「貴女からロガンに迫ったのですか?」

「違うわ、陛下からよ……っ。陛下に、呼ばれて……っ」

「そうですね、男爵令嬢からすれば、国王からの誘いなんて断れません。私でも無理です。ところで、先ほどのロガンの娘と名乗る女性の話からすると……。ロガンは噂通り、無理やり関係を持つ男。そんな男の相手は、さぞ大変だったことでしょう。陰口を言われ、泣いたこともあるでしょう?」


 どこまでも優しい口調に、コルデは味方を得たと誤解したらしい。


「そ、そうなの! 皆、酷いのよ! 身分が違いすぎるとか、頭が悪いとか、泣き虫だとか……! とにかく、色々言ってきたの!」


 泣いてばかりだったコルデが渡されたハンカチを握りしめ、肯定する。それを男は頷き、ただ話を聞いてあげるだけ。

 ……本当に愚かな女。父も止めればいいのに。それともメティラ様の思惑に、気がついていないのかしら。


 コルデは不満を訴えた。成り上がりの男爵娘、王に愛されているだけの女。とにかく色々言われ、傷つく毎日だったと。嘲笑され指をさされ、助けてくれる人は少なく、孤独だったと語る。さらには勉強も強要され苦痛だったと言い始めた時は、さすがに罵声が減った。皆、呆れているのだろう。


「そうですか、そんな辛い状況でも子育てをされていたのですね」

「ええ、大変だったわ。それなのにお母様は、小言ばかり。そんなの教育ではないとか言って、意味が分からなかったの」


 マーレは子爵家出身。あの家族の中で唯一、貴族としての矜持を持っていた人物。その彼女から見て、コルデの子育ては、王族の血を引く子どもへの内容として、満足できるものではなかったのだろう。


「二人も勉強を強要されたのかい?」


 二人が頷くと、メティラ様は笑みを浮かべ、わざと外国語で問いかける。

 私も少し勉強をしたので、メティラ様がなにを質問されたのか分かったが、リダとピカロには分からなかったらしい。唯一分かった父は、怪訝そうな顔でメティラ様を見つめる。


「そこの男性、そう貴方。私が今、なにを尋ねたのか分かりますか?」


 見るからに仕立ての良い服を着ている男性は、急に指名され驚いたが、その服装に見合った通り。その外国語を理解できていた。


「年令でしょう」

「そう、私はこの二人に、アナタは何歳ですか? そう尋ねました。しかし二人は分からなかった。しかしそこにいる貴方なら答えて下さると、この私には分かっていましたとも! なにしろ貴方は、高級だけど貴族以外も利用できる店のオーナー! 外国からやって来るお客の相手もされるので、語学に通じていると。ええ、ええ。この私には、分かっていましたとも!」


 そう言われ、多くの人が幾つかの店を思い浮かべたようだ。私はその点は疎いが、隣の青年も幾つか心当たりがあるらしい。幾つか店名を教えてくれた。


「実は私、取引先相手を接待する際、彼が経営する店をよく利用させてもらっていまして。なにしろその店の従業員は、語学に堪能なのです。オーナーが私のように、外国人を接待できる店として利用してもらいたく、従業員に語学を学ばせているのです。オーナーである彼は語学だけではなく、他にも各国の文化等にも精通されている立派な方なのです」


 メティラ様の説明に、感嘆の声があがる。

 こういった形で顔が売れると思っていなかった男性だろうが、まんざらでもない様子で、服の襟を正している。


「さあ、皆様お考え下さい! 料理店のオーナーでさえ、もてなす客人を考え、従業員に語学の勉強をさせる! 従業員もその大切さを理解し、勉強する! ところが! この三人は勉強の大切さを理解せず、むしろ強要された被害者だと訴える! この状況をどう思われますかな? 私からは以上です」


 また丁寧にお辞儀をし、メティラは上機嫌に檀上を降りた。

 すっかり泣き止んでいるコルデは、裏切られた驚きからか、メティラ様を凝視(ぎょうし)している。


「ふ、ふざけるな! なにが裁判だ! こ、こんな! こんなのは一方的で! 裁判ではない!」


 ようやく父が我に返ったように叫ぶ。


「……弁護人が欲しいとでも?」

「当然だ!」

「では皆の中に、この四人の弁護を志願する者はいるか? 遠慮せず、名乗り出よ」


 オルグお兄様がそう問いかけるが、場は静まっていた。誰も手を上げようとしない。ただじっとりとした目で、誰もが父たちを見つめている。


「いやいや、あんたら四人を弁護したいと志願する奴なんて、いないだろ」


 青年のつっこみに、思わず吹き出してしまう。


「それが理解できていないから、ああやって檀上にいるのですよ」


 青年を援護する訳ではないが、私がそう言うと、そうだという声が上がる。


「確かにこの裁判は異例であり、普通の裁判ではない。ロガン、そなたたちの罪を明らかにし、全てを民へ伝えるための場と言える。弁護をしたければ、己の言葉で説明をすれば良い! なぜ税を上げたのか! どうして税を上げる必要があったのか! そこに正当な理由があれば、民も納得できるであろう!」

「……っ」


 悔しそうに父が顔を歪ませる。

 どう言葉を並べても、皆を納得させる言い訳なんて出てくるはずがない。そんなもの、存在しないのだから。


「四人とも自分たちがなにをしたのか理解せず、弁明も謝罪もない! 語ることもなく、この場が無意味だと言うのであれば、その意見を尊重する! 四人を下がらせよ!」


 オルグお兄様が立ち上がって叫べば、軍が動く。


「ロガンは国王という立場を利用し、多くの女性と無理やり肉体関係を持った。また気に入った女性に気に入られようとし、高価な贈り物をするものの、すぐ別の女性に心変わりし……」

「ま、待て! 言わせてくれ!」

「コルデという女性について特に酷く、他の女性に対し比ではない。また二人の間に産まれた子らも……」


 立たされ檀上から連れ出されそうとすれば、ようやく父が騒ぎ出す。だがオルグお兄様は無視をする。


「ラコーレ国で傍若無人(ぼうじゃくぶじん)に振る舞い、かの国の怒りを買い我が国へ信頼を失うという、損害を与えた。またベニックス国内でも様々な場所で暴れ、物を壊し、その弁償代に国庫が使われ、失われる国庫を補うために税金が上げられ……」


 父の叫び声が遠ざかっていく。


「嫌だ! 待て! 謝るから! 最初からやり直しをさせてくれ! 頼む! 処刑だけは……! それだけは……!」


 命乞いをする父の声を聞いても、なにも響かない。

 それこそが、父と私の関係を雄弁に語っている。

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シリ ーズ1作目、2作目は以下、リンク貼ります。

1作目
別れと旅立ち

2作目
敗北の王妃の願い
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