第二十四話
「お名前は?」
あれからしばらくたって、店長は目を覚ましてそうそう俺に尋ねてきた。まだ真っ白なドラゴンのままだが。
「ユウトです。」
「真名は?」
真名?苗字みたいなものだろうか・・・。苗字?そう言えば俺の苗字はなんだったっけか・・・。
「僕は・・・ユウトです。」
覚えているという感覚はあるのに、まるで何かが干渉するかのように思い出すのを防いでいるみたいだ。
「フン・・・言いたくないならそれでいいでしょう。貴方は勝ったのだから約束通りあの張り紙に書いていた通りのことをして差し上げましょう。」
そうだった。質問しなきゃ。
「どうしてあんなに太っ腹なことができるんです?」
「フフ・・・いずれ分かりますよ。」
なぜここで教えてくれないのか分からなかったが、とりあえず成り行きに任せることにした。
しばらくしてケイゴも目を覚ました。
「あれ・・・??このドラゴン誰?知り合い?」
起きて早々ケイゴが俺に聞いてきたが・・・一つも驚きを見せなかったケイゴに俺が驚いてしまった。
「え!?・・・あぁ、この竜はさっきの店長さんで・・・。」
「ドラゴンだったんですか!?しかも白竜族の!」
「白竜族?何それ。」
ケイゴは知っているようなので気になった。
「誰も知らない場所にある小さな島でひっそりと暮らしている白い竜たちだって艦長さんが言ってたような・・・。」
「ふ~ん。」
ケイゴもあまり詳しくは知らないようだ。
俺たちの会話を見ながら店長は首を振り、そして言った。
「貴方がたは、その小さな島に訪れる最初の人間になります。まさかこんなんなことになるとは思ってもみませんでしたがね。気絶させられたのは何百年ぶりでしょう。」
「すみません・・・。」
うん?ということは俺たちはその島に連れて行かれるのか。
話が終わると、俺たちが最初に降り立った浜辺に連れてこられた。
今は店長も人型をとっている。やはり竜の姿は目立つもんな。
「ここからは私の背に乗ってください。ここは人の目がありませんから、飛び立つにはちょうどいい場所です。」
そうですよね、分かります。なんてころっと言いそうになった。危ない危ない。
「今から白竜族の島に行くのか・・・。この世界のことも良く知らないし、最近いろんなことが起こり過ぎて頭がおかしくなっちゃいそうだ。」
ケイゴが笑って言う。まったくそのとおりだ。たくさんのことが一度に起こり過ぎているような気がする。
「ここです。着陸しますから、着地の衝撃で落ちないようにしっかりつかまっていてください。」
「?島なんて見当たりませんけど・・・。」
今店長が降りようとしているのは、陸も何もない、ただの海だ。
「人間に見つからないように幻影を見せて島をかくしているのです。」
「なぜ隠してるんです?」
ケイゴが尋ねた。俺も知りたい。
「我々の島には、人間も白竜族も知ってはならない太古の技術が眠ると言われる神殿があるのです。その神殿の存在が広まらないようにするために、島を隠しています。」
「そうですか。」
理性より興味の方が勝った時、人間は何をしでかすかわかったもんじゃないからな。
「じゃあ降りますよ。」
ある程度降下したところで、突然真下に島が現れた。
「凄い・・・!」
ケイゴが絶句してる。それもそのはず、白壁の家々が円状に広がり、その中心に雪のように真っ白な宮殿があるからだ。それが日差しを美しく反射している。
「これが人間のまだ見ぬ聖地です。ここを私たちはエデンの地と呼んでいます。」
店長は宮殿の目の前に降り立った。
「店長さん、ところで僕たちは今からどうなるんです?」
「店長さん、ですか・・・私はまだ名前を言ってませんでしたね。私の名は、クレル。よろしく申し上げます。」
クレルさんは尻尾を器用に使ってケイゴと俺を背中からおろしながら言った。
「こちらこそ。」
ケイゴと俺は声を合わせて言った。
「では、なぜあなた方をここまで連れてきたかお教えしましょう。」
お!いよいよだ!
「あなた方には、今からここに住んで頂きます。」
クレルさんは宮廷を示して言った。
ここって?まさか・・・!?
「そして、女王陛下の・・・いわゆる召使になって頂きます。」
なんとぉ!?
住む場所の確保、仕事も手に入ったのはいいが・・・想像してたよりもスケールがでかすぎるような気が・・・。って言うかなぜあんな暗い路地で・・・その召使とやらを探してたんですか?しかも“人間”の。ここにはたくさん白竜族が住んでいるのだろうに。
疑問は尽きることはなかった・・・。




