第二十三話
そう簡単には倒せないだろうと思いながら、試験始めの合図で戦闘は始まったけれど・・・。
試験は数秒のうちに終わった。がたいのいい男性二人は開始と同時にケイゴに殴りかかったが、それが当たる寸前にケイゴの拳がその二人のみぞおちにクリーンヒットして・・・。二人ともその場で失神してしまった。
えっ・・・。
俺の出る幕なし。
そんなことより、ケイゴの力の強さに驚くべきなんだろうけど・・・俺自体ドラゴンになってしまったわけだから、あまり気にならなかった。
「終わりましたよ。」
「はい、では次に移ります。」
さっきまでの態度とは打って変わって、かなり真剣な態度に変わった。これほど簡単に倒してしまうとは思っていなかったのだろう。
「これで終わりじゃないのかよ!」
ケイゴが不満そうに店長に叫ぶ。
「これだけでお終いだなんて誰が言いました?」
「ま・・・まぁ、そうだけどよ。」
二回戦もあるのか。
「次の相手はこの私です!」
「なんだってぇ!?」
ケイゴとハモってしまった。まさか店長直々に試験に参加するとは思ってもみないことだ。
結構な高さのある審判台から飛び降りてきた。さっきの二人よりもかなり弱そうな雰囲気だが、今の動きから考えて身軽さを武器に戦ってくるんだろうと想像した。
「では、始めましょう。」
店長はさっきの戦闘で全く活躍しなかった俺を狙って殴ってきた。多分俺のデータも収集するためだ。
でも・・・ドラゴンの動体視力をなめちゃいけない。
俺はさっとその拳をよけて、下からアッパーをくらわせた・・・はずだった。俺の腕は店長の右手にやすやすとつかまれていた。振りほどこうと腕を振っても無理だった。
「私もばかにできないでしょう?」
そう言って店長がほほ笑む。
「うらぁぁぁっぁ!」
ケイゴが俺を助けようと店長の左から飛び込んできたが、こちらも簡単に腕を掴まれてしまった。
「二人とも凄い力ですね。二人とも簡単に倒されてしまうわけだ。」
納得するようにうんうんうなずくと、勢いをつけて俺たちを放り投げた。腕を支店に投げられたのに、すごいスピードだ。
やばい!このままじゃ壁にぶつかる!横でケイゴの悲鳴が聞こえる。
俺も叫んだが、何か柔らかいものに受け止められて壁にぶつからずにすんだ。
「なに?」
俺は瞑っていた目を開けた。何か皮のような張って・・・。
見上げるとそこには・・・真っ白なドラゴンが翼で俺たちを受け止めていた。竜体の時の俺と同じくらいの大きさだ。そのドラゴンが、こちらを体とは対照的な真黒な瞳でこちらを覗きこんでいる。
「だから言ったでしょう。そんな年齢で試験に挑戦するなんて生き急ぎにもほどがある。」
しゃべった!さっきの店長さんの声だ・・・。人に化けるドラゴンは俺以外にもいたのか!?
ふと横を見ると、ケイゴが気を失っている。
「まさか、まだ試験を続けさせてくれなんて言いませんよね?」
ケイゴはきっと、「続ける」というだろう。なら俺も・・・。
「続けます!」
「そうですか・・・では今度は手加減しませんよ?大切な友達のためにも、ここで試験を中断して生きておくことをお勧めしますがね!」
そう言うと、さっきまで店長だったドラゴン・・・いや、店長は俺にかみついてきた。とっさにその攻撃をよける。
よけるのはたやすいことだ。でも、どうやって攻撃を加えるかが問題だ。
人型じゃあ完全に不利だが、竜体に化けることはケイゴに禁止されている。・・・どうしよう。
そうだ!皮膚を鱗に変えることはできるだろうか・・・。ほんの少しだけ人型に化けるために必要な魔力を緩めてみた。
すると、メキメキメキという音とともに腕に鱗が生え始めた。まじめに見てると気持ちが悪いものだ。
これなら相手の攻撃を気にせず戦える!
ばれないようにまくっていた袖をおろし、相手に近づいた。
「そんなに近くに来たら、私の炎で焼き殺しちゃいますよ?」
どうやら笑っているようだ。まるで戦闘を楽しむかのように。
言った通り店長は火を吐いてきた。辺り一面真っ赤な炎に包まれる。非常に熱い。
炎に焼かれないように俺は上に飛び上がった。
うひょ!物凄い跳躍力。少しでも力を解放しただけでもこんなことになるのか。
店長のの後ろ側に着地して、すぐに殴りかかった。が、ドラゴンの首は長い、簡単に振り向いてきた。でも、店長は振り向いたことがまずかったことに気づかない。力を解放した俺のスピードは・・・半端ないものだった。俺を視界にとらえた店長は目を丸くした。
俺は竜の眉間に振りかぶった拳を突っ込んだ。
「グワァァァァ!」
店長は叫び声をあげてその場に倒れた。
「勝った!?」
勝ったのは良かったが、店長もケイゴも俺がたたいても目を覚まさない。これは待つしかなさそうだ。
店長の方は一瞬死んだようにも見えたが、耳をすますとちゃんと心臓の音が聞こえてきた。多分大丈夫だろう。早く目を覚ましてもらって、どうしてあんなに都合のいい見返りがあるのか教えてもらわなければならない・・・。




