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第二十二話

 さぁ、まずは住居探しからだ。

 




 海岸から少し行ったところに町に続く道を見つけた。それを辿って町に入ったのだけれど・・・。

 

 中世だ・・・これ中世ヨーロッパ風の街並みだ。教科書とかでこんな風景を見たことがある。ただ、人々の服装はその教科書で見たような貴族な服装ではなく、つぎはぎだらけのジーンズや、簡素なTシャツなんかを着ている人を良く見かけた。多分これが一般市民の服装なのだろう。


 ケイゴや俺はフリーダムにいた時から着ていた作業着姿だったからそんな中でも目立たずに済んだ。軍服とか着せられてなかったことに感謝するしかない。




 とりあえず中世風の街並みを歩いて行った。

 

 「おい!ユウト。こんな張り紙があるぜ!・・・“住める場所と仕事を用意します。あなたの個人情報も一切尋ねません。興味を持った方は②番道路Ⅲ-Ⅰにいらしてください”だってよ!」

 ケイゴが突然、煉瓦の壁に無造作に張られた壁紙を指さして言った。

 「なんかあやしくない?“あなたの個人情報は一切尋ねません”って・・・。」

 「でもよ、今の俺たちにこんなにいい条件他にないと思うぜ?」

 確かにその通りだ。もしかしたらこれは神が与えてくれた救いなのかもしれない・・・なんて、神が本当に存在するかなんて定かじゃないか。

 

 


 


 

 さっきのチラシに書いてあった通りの場所に俺たちはやってきた。なんだか薄気味の悪い路地裏である。書いてあった住所らしき文字が導いたのは、一軒のバーのような店だった。


 「これって店だよな・・・それならノックも何もせずに入ってもいいよな?インターホンみたいなのもないし・・・。」

 「大丈夫なんじゃない?」

 ケイゴはそのバーっぽい店のドアを開けた。

 

 ドアを開けると、ちりんちりんと鳴った。よく散髪屋なんかのドアにかかっているアレである。名称は知らない。


 「いらっしゃい。」

 カウンターに立っているバーテンダーな服装の男性が声をかけてきた。見事な鉤鼻をしているが、紳士的な感じがする顔立ちのおじさんだ。そんなことより・・・この世界の店も客が入ったら「いらっしゃい」って言うんだ。なんだか感動。

 

 勝手に一人で感動している俺をよそにケイゴがその男の店員に話し始めた。

 「あなたは一人のようですが・・・あなたがこのお店の店長さんですか?」

 「ええ。どうしてです?」

 何を言われるのか心配そうな顔をして店長は答えた。

 「じゃあこのチラシを作ったのも貴方ですか?」

 俺が見ていないうちにはぐっていたのだろうか、さっき見たチラシをケイゴは手に持っていた。

 「そうです・・・ということは、あなた方は・・・そうですか。ではこちらにどうぞ。」

 

 





 店の奥に連れて行かれた俺たちは目を疑った。


 なんとそこには屋内闘技場があるではないか!なんということだ・・・こんな路地裏のバーに!

 「あなた方には試験を受けてもらいます。合格すれば、なぜこんなことをするのか理由を教えて差し上げましょう。そして、住む場所も仕事ももちろんあなた方のものです。どうです試験を受けますか?出来ればあなた方のような未青年には受けてもらいたくないのですがね。」

 「どんな試験なんです?」

 思わず俺は尋ねた。試験を受ける受けないに関係なく、どんなものか知りたかった。恐らく頭脳系ではなく身体系な試験だと思うが・・・。

 「内容は簡単です。そこの闘技場で、人間と素手で戦って倒せばいいんです。」

 「ふ~ん、ユウト。俺たちならいけるよな!」

 俺はケイゴの発言に自分の耳を疑ってしまった。店長の方を見ると、店長も店長で目を大きく見開いて、かなり驚いているようだ。

 「ケイゴ・・・ほんとに受けるの?」

 「そうするしかないだろ!」

 そう言ったあと、俺の耳元でこうつぶやいた。

 「今の俺なら絶対に勝てる。勝つ自信がある。俺のこっちの世界に来てからの身体能力の上昇率、半端ないんだ。だから心配するなよな?」

 かなりの自信があるようだ。もう、後戻りという選択肢はないようだ。それでも俺としてはケイゴのことが心配だが・・・。

 「あと、どんなことがあっても、本当の姿に戻るんじゃない。ユウトが正真正銘のエルデドラゴンだってばれたらいろいろめんどくさそうだしな。」

 「俺がエルデドラゴンで悪かったな。」

 わざと俺がそうささやくと、ケイゴは「悪いことを言った、ゴメン」とでも言うようにわざと悲しそうな顔をして首を横に振った。

 「そんなことは別に気にしてないから。俺も心の整理ついたし、試験・・・受けよう。」

 ケイゴの顔を見て笑いそうになるのを抑えて、俺も受けることに決心したことを伝えた。

 

 「じゃあ決まりだな。試験受けます!」

 「命の保証はできませんよ?いいんですね?」

 眉をひそめて店長さんは言う。どうやら俺たちを見限っているようだ。いや、それが当然の反応か。

 「じゃあ、試験を始めますから、二人とも闘技場の中に入ってください。」




 



 どうやら2対2の形式のようだ。俺とケイゴが闘技場に入ると、奥の扉から二人のがたいがよろしい男が入ってきた。いかにも二人とも格闘技が似合いそうな人たちである。ちなみに二人とも丸坊主。

 

 店長さんの「はじめ!」の合図で試験は始まった・・・。

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