第二十一話
俺はケイゴをのせてかつてファズと暮らしていた島から遠く離れた海上にいた。
時の神や時の旅人やらの単語を聞いたことすらなかった俺たちにアルフさんがこう言ったのだ・・・。
「何も知らないのか・・・それなら一度ジャハル共和国に行って国内最大のイレシア図書館でさまざまな文献を調べてみるといい。時の神の伝説など、もはや昔の言い伝えだと思っていたが・・・貴様たちを見ていると、その言い伝えが現実になっている・・・そんな気がしてきた。」
時の神の伝説とは、この世界にいる人間ならほとんどが知っている超有名な昔話だそうだ。そこに、俺たちのように異界から来た人間が登場人物として出てくるらしい。少し興味あるかも。
こうして俺たちはジャハル共和国への旅に出かけることになったのだが、あまりにも展開が早すぎて、ついていけてない部分もあったりする。
「おいユウト!アルフを本当においてきて良かったのか?」
上空の吹き付ける風に負けないようケイゴが声を張り上げて尋ねてきた。念話で話してくれればそんな風に大声出さなくても大丈夫なんだけどなぁ。
「アルフさんがあの島でゆっくり過ごしたいから残るって言ってたじゃん。だからそれでいいんじゃない?」
アルフさんは俺たちに、ジャハル共和国に着いたらしばらくそこで暮らすといいと言ってたっけ。かの伝説の時の旅人であろうがなかろうが、この世界のことをもっと知るべきだって言ってた。でも、アルフさんがあの島で暮らしていてくれるならいつでも会いに行けるから心配はないはずだ。
「そうじゃなくて!ジャハル共和国まで送ってもらわなくて大丈夫なのかってことだよ!」
ケイゴの言うとおりだが、今の俺にはアルフさんからどの方角へ飛べば着くか聞いただけでたどり着く自信があった。実際アルフさんからジャハル共和国のある方角しか聞いてないし・・・アルフさんもそれ以上伝えられることはないようだった。何せ目印になるような島もないだだっ広い海の上を飛んで行くのだから仕方がない。
「大丈夫だよ。俺を信じて!」
自信満々にそう答えた。
結局、一時間もしないうちにジャハル共和国のひとけのない海岸に降り立った。ここなら俺の姿が見られずに済む。
「もう・・・着いたのか?」
飛んでいる最中に寝てしまっていたケイゴが、地面に着地した衝撃で目を覚ましあくびをしながら言った。
「着いたよ。きっとここがジャハル共和国だ。」
空から見てもかなり大きな島だったから、ここがジャハル共和国に違いない。
「今からどうすんの?」
まだ眠そうなケイゴを背中からおろし、俺は人型に変身しながら答えた。
「とりあえずアルフさんにここで暮らしてこの世界のことについて知れって言われてるんだから、まずは住む場所と仕事を探さなきゃ。」
「そうだよな・・・でも、どうやって?」
ケイゴが首をかしげて尋ねてきた。
「これだけ大きな島なんだから、そういうことの専門のお店ってどこかにあるんじゃない?」
「身分証明書とか求められたらどうすんの。」
「そんときはそんときでしょ。」
またもや無謀な計画に二人で笑ってしまった。
笑いを止めようとふと見上げた空には、真夏の昼のような太陽の強い日差しがあった・・・。




