第85話:双璧の凶星と、絶対領域の檻
天空で急速に拡大する二つの波動──それは、歪な紫の光を放つ【双子座】と、禍々しい深紅のハサミを揺らす【蟹座】の守護者だった。
三柱を失った世界のシステムが、即座に次なる刺客をスタックしてきたのだ。
「フッ、今度は双子と蟹か。状況把握──相変わらず、世界のシステムってやつは学習能力がねぇスクラップだな」
俺は九色のインナーカラーを指先で弄り、不敵な笑みを浮かべた。
「主、データの逆算を開始したよ。……チッ、これは驚いたね。私の計算によると、あの二柱は単に並んでいるのではない。【双子座】の『同一概念複製』のルールで【蟹座】の『絶対切断』を無限に増殖させ、この空間全体の防衛対流を完全にシャットアウトするつもりだ。実によろしくない質量スタックだよ」
アクアが清流の髪の眼鏡を焦燥に震わせ、手元の木札に緊急の防衛数式を叩きつける。
「あはは! 無限に増えるハサミ? だったら、ボクの風の道も無限にスタックして、全部へし折っちゃうだけだよ!」
シオンが新緑の髪を激しく弾ませ、疾風弓に嵐のエネルギーを集中させる。
「シリウス様、みなさんを繋ぐ聖なる絆のラインは、私の魔力で1ナノ秒の隙もなくプロテクトし続けます! ルナちゃん、あの二つの息の合ったバランス、一気にひっくり返しちゃって!」
フェリスがサクラピンクの髪をなびかせ、俺たちの足元へ極彩色の強固な結界を展開した。
「はい! 【天秤座】──二つの輝きを、一つの天秤へ!」
ルナが白銀の髪をそよ風に揺らし、エメラルドグリーンの瞳を鋭く光らせて右手の星痕を解放する。
しかし、天空の双子と蟹の守護者は、ルナの天秤の光を冷笑するように見下ろした。
「無駄だよ、天秤の小娘。僕たちの絆は、世界のシステムそのものがデザインした『完全なる双子』。他者が介入できるような比率の隙間なんて、最初から一ミリも存在しないのさ」
双子座の守護者が冷酷に指を鳴らした瞬間、空間そのものが紫と深紅の檻へと変貌し、俺たちの周囲のエネルギー対流を完全に遮断し始めた。
「フッ、完全なるペアねぇ。お前らの作ったニセモノの絆がどれだけ強固だろうが、俺たち既存の身内がスタックしてきた本物の絆の前には、ただのチャチな砂の城だ」
俺は九色の前髪をかき上げ、最高にクールな笑みを浮かべた。
世界のシステムが誇る双璧のルールを、俺たちの極彩色の絆が今、内側から正面から蹂躙せんとしていた。




