第84話:三柱の残滓と、次なる二つの輝き
三柱の守護者が因果の彼方へと粉砕され、要塞都市を覆っていた異界の神威は完全に消滅した。
あとに残されたのは、世界のシステムが崩壊したことを示す、極彩色の微粒子だけだった。
「フッ、三柱同時でもこの程度か。状況把握──やはり俺たち既存の身内の絆の前には、神サマのルールもただの燃えないゴミだな」
俺は九色のインナーカラーを指先で弄り、不敵な笑みを浮かべた。
「主、驚異的なエネルギー効率だね。私の計算によると、今回の同時蹂躙によって私たちの絆の総スタック量は、以前の戦闘時の240%へと急上昇しているよ。もはや世界のシステム自体が、私たちの存在確率を計算しきれなくなっているね」
アクアが清流の髪の眼鏡を美しく押し上げ、手元の木札に歓喜の数式を刻み込んでいく。
「あはは! さすがシリウス! 反射だの剥奪だの言ってた神様たち、最後はボクの風の渦の中で自滅しちゃって超ウケる!」
シオンが新緑の髪を弾ませ、ルナの手を握ってピョンピョンと跳ねた。
「……はい! 私、自分の天秤がこれほど大きな因果を調停できるなんて、夢にも思いませんでした。シリウス様と一緒にいると、本当に『絶対』なんて言葉がちっぽけに見えます」
ルナは白銀の髪をそよ風になびかせ、エメラルドグリーンの瞳をきらめかせて微笑んだ。その右手の星痕は、三柱の概念を吸収したことで、さらに深く神聖な輝きをスタックさせている。
「シリウス様ぁーっ! お疲れ様です! すぐに聖なる魔力で極上のリフレッシュ対流を──」
フェリスがサクラピンクの髪を揺らしながら駆け寄ろうとした、その刹那。
ドクン……ッ!!!
俺の胸の星痕が、今までにない「二つの奇妙な、だが完全に同調した波動」を捉えて激しく脈打った。
それは、先ほど消滅した三柱の残滓を栄養にするかのように、要塞都市の遥か上空で急速にその質量を拡大させていく。
「──チッ、状況把握。どうやら休む間もなく、次のスクラップが並び始めたらしいな」
俺が九色の前髪をかき上げ、冷徹な視線を天空へと向けると、そこには双子のように寄り添う二つの巨大な星の影が、不気味な紫と深紅の光を放ちながら出現していた。
世界の理を司る黄道十二星座──その中でも一際異彩を放つ、双子と蟹の守護者が、俺たちの極彩色の絆を完全に消滅させるべく、その姿を現そうとしていた。




