第82話:三位一体の神威と、絶対の矛盾
「ククク……。一柱を蹂躙した程度で調子に乗ったか。我ら三柱の絶対ルールが合一せし今、貴様らのいかなる絆も、届く前に霧散すると思え!」
中央に立つ【獅子座】の守護者が黄金の髪を激しく揺らし、傲然と吼える。
彼の言葉通り、東の【牡羊座】からはあらゆる干渉を弾き返す『絶対反射』の障壁が展開され、西の【乙女座】からはこちらの戦意を根底から削ぎ落とす『精神剥奪』の紫霧が、戦場全体へと対流し始めていた。
反射、剥奪、そして最強──。
それは個々の異能がただ並んでいるのではない。アクアの言う通り、お互いの弱点を完璧に補完し合う、世界が構築した美しくも冷徹な三位一体の絶対防衛陣形だった。
「主、精神剥奪の霧によるこちらの魔力対流減退確率、98%。さらにそこへ攻撃を仕掛けた場合、牡羊座のルールにより100%の威力でこちらにスタックが逆流してくるよ。……物理的にも、概念的にも、完全に『手詰まり』の数式だね」
アクアが清流の髪の眼鏡をきしませ、冷汗を流しながらも冷静に状況を逆算する。
「あはは! 手詰まり? そんなの、ボクたちの辞書にはないって、シリウスがいつも言ってるじゃん!」
シオンが新緑の髪を弾ませ、疾風弓に嵐をスタックさせながら不敵に笑う。
「シリウス様、剥奪される精神なら、私の聖なる祈りで1秒間に何万回でもスタックし直します! ルナちゃん、あの完璧な三つの比率、一気にグチャグチャにしちゃえ!」
フェリスがサクラピンクの髪をなびかせ、限界突破の癒やしの波動で紫霧の干渉を強引に相殺し始めた。
「はい! 【天秤座】──三つの因果を、一本の天秤へ!」
ルナが白銀の髪を激しく乱しながら、エメラルドグリーンの瞳を限界まで見開いて叫ぶ。右手の星痕が神聖な白銀の光を放ち、『絶対反射』と『精神剥奪』、そして『絶対強者』のエネルギー比率を無理やり一つの天秤へとスタックさせていく。
「な、何だと……!? 我ら三柱の神聖なる対流のバランスが、あの小娘の異能によって強制的に傾けられていく……っ!?」
乙女座の守護者が驚愕に表情を歪めた。
「フッ、完璧な陣形ねぇ。お前らのルールがどれだけ完璧だろうが、俺たち既存の身内の絆はな、その『完璧』の上から土足で踏み潰すためにあるんだぜ」
俺は九色のインナーカラーを指先で弄り、不敵な笑みを浮かべた。
ルナの調停によって、敵の『反射ルール』の矛先が、今や敵自身の『精神剥奪』へと逆流し始めている。世界のシステムが作った完璧な数式は、俺たちの絆の対流の前に、自壊の矛盾を引き起こしていた。
「おい、お前ら。神サマたちのチャチなルール、ここから一瞬で蹂躙してやる」
俺は九色の前髪をかき上げ、最高にクールな笑みを浮かべながら、極彩色の神光を両拳へとスタックさせた。




