第81話:夜明けの進軍と、三柱の影
要塞都市の地平線から、ゆっくりと朝陽が昇り始める。
だが、その光はいつもと違っていた。東からは不気味な紅、西からは冷徹な紫、そして中央からは眩いばかりの金色の光が、世界の空を三つに引き裂くように這い上がってくる。
ガルシアの消滅から一夜──世界のシステムが放った三人の守護者が、ついにこの要塞都市の防衛圏内へと同時にスタックしてきたのだ。
「フッ、状況把握。挨拶代わりに空の色を変えてくるとは、随分と派手な演出じゃねぇか」
俺は九色のインナーカラーを指先で弄り、不敵な笑みを浮かべた。
都市の城壁の上に並び立つ既存の身内たちは、誰一人として怯んでなどいない。むしろ、最高のご馳走を前にした獣のように、その牙を研ぎ澄ませている。
「主、データの逆算を完了したよ。東の紅は【牡羊座】の絶対反射、西の紫は【乙女座】の精神剥奪、そして中央の金は──【獅子座】の絶対強者ルール。私の計算によると、三つの異なる概念が同時に対流することで、こちらの攻撃効率を相互に相殺し合う完璧な陣形だね。実によろしくない効率だ」
アクアが清流の髪の眼鏡を美しく押し上げ、手元の魔導図面に敵の神威対流を素早く書き込んでいく。
「あはは! 三つのルールが混ざってるなら、ボクの風で全部まとめて一つの渦にスタックして、シリウスの拳の的にしちゃうだけだよ!」
シオンが新緑の髪を弾ませ、疾風弓の弦を限界まで引き絞る。
「シリウス様、みなさんの背後は私が聖なる魔力で100%守り抜きます! ルナちゃん、あの三人の神威のバランス、一気にガタガタに傾けちゃいましょう!」
フェリスがサクラピンクの髪を激しくなびかせ、戦場全体へ極上のヒーリングオーラを対流させ始めた。
「はい、フェリスさん! 【天秤座】──開門! 三つの星の因果、すべて私が調停します!」
ルナが白銀の髪をそよ風に揺らし、エメラルドグリーンの瞳を鋭く光らせて右手の星痕を解放する。彼女の天秤が発動した瞬間、迫り来る三柱の圧倒的な威圧感が、俺たちの絆の対流によって強制的に中和され、比率が書き換えられていった。
「ほう……。ガルシアを屠ったイレギュラーどもめ、我ら三柱が揃ってなお、その傲慢なルールを突き通すつもりか」
黄金の光の中から、一際巨大な獅子の影をまとった男が、傲然と見下ろしてくる。そのプレッシャーは、これまでの帝国のスクラップどもとは文字通り次元が違っていた。
「傲慢じゃねぇよ、これが俺たちの『当たり前』だ。おいお前ら、神サマのルールがどこまで俺たちの絆に耐えられるか、正面から試してやろうじゃねぇか」
俺は九色の前髪をかき上げ、最高にクールな笑みを浮かべて一歩を踏み出した。
世界の理を司る三柱の守護者を相手に、極彩色の魔王軍による前代未聞の同時蹂躙劇が、今ここに幕を開ける。




