第75話:束の間の安息と、次なる星の呼び声
黒鉄の要塞都市を正面から蹂躙し、帝国の野望を文字通り粉砕した俺たちは、再び自分たちの本拠地である要塞都市へと帰還していた。
激戦の疲れを癒やすように、都市の広場では、帰還した俺たちを歓迎する臨時の宴が催されている。
「さあ、みなさん! 帝国との戦いで消費したバイタルを、私の特製薬膳ハーブスープと焼き立ての特大肉料理で一気にスタックしちゃってください!」
フェリスがサクラピンクの髪を軽快に揺らしながら、湯気の立つ大皿を次々とテーブルへ運んでくる。その手際の良さは、相変わらず一級品の料理人のそれだった。
「ふむ、やはりフェリスの料理は対流するエネルギーの質が違うね。私の計算によると、一口摂取するごとに体内の魔力対流効率が120%ずつ回復していくよ」
アクアが清流の髪の眼鏡を美しく押し上げ、手元の木札に素早く回復効率の数式を書き込んでいく。
「あはは! 美味しい! 帝国との戦いもボクの風の敵じゃなかったけど、やっぱりこの要塞都市で食べるフェリスのご飯が世界で一番最強だよ!」
シオンが新緑の髪を弾ませ、豪快に肉に噛み付きながらルナのコップに特製ジュースを注いだ。
「ルナちゃんもたくさん食べなきゃダメだよ! これからはボクたちがついているんだからね!」
「あ……はい! ありがとうございます、シオンさん。……本当に、胸の奥がぽかぽかと温かいです」
ルナは白銀の髪をそよ風になびかせ、エメラルドグリーンの瞳を嬉しそうに細めた。右手の甲にある【天秤座】の星痕は、今や濁り一つなく、俺たちの絆とスタックされて神聖な白銀の光を放っている。
「フッ、当然だ。お前はもう、俺たちの身内だからな。理不尽なルールに怯える必要は二度とねぇ」
俺は九色のインナーカラーを指先で弄り、最高にクールな笑みをルナに向けた。
「シリウス様……っ!」
ルナが感動に瞳を潤ませた、その刹那。
俺の胸の奥に宿る星痕レーダーが、かつてないほど「冷徹で、広大な異次元の波動」を検知して、ドクンと激しく脈打った。
「――チッ、状況把握。どうやら、帝国を蹂躙したくらいじゃ、世界のシステムは俺たちを放っておいてはくれないらしいな」
俺は九色の前髪をかき上げ、不敵に口元を歪めながら遥か東の空──未知なる魔力が渦巻く『混沌の海』の方向を睨み据えた。
新たなる章の幕開け。極彩色の魔王軍の前に、今度は世界の理そのものを司る、さらなる「黄道十二星座」の影が動き出そうとしていた。




