第73話:概念消滅の虚空と、星の覇王
「死ねぇぇぇ! 極彩色の魔王軍ども! 存在ごと世界から消え失せるがいいッ!」
帝国将軍の絶叫と共に、総督府の屋根に据えられた『黒鉄の崩界砲』から、天地を裂くほどの漆黒の消滅光線が放たれた。
光すらも吸い込み、触れたものの概念そのものを無に帰す絶対絶命の虚空。それが、真っ直ぐに俺たち目掛けて殺到する。
「シ、シリウス様……! あの光、私の天秤の力で調停しようとしても、触れた瞬間に星痕のルールごと消されてしまいます……っ!」
ルナが白銀の髪を激しく乱し、エメラルドグリーンの瞳に恐怖を浮かべて叫ぶ。概念消滅のルールの前には、あらゆる異能の干渉すらも無効化されるのだ。
「フッ、慌てるなルナ。お前の天秤は、俺の背中にある『最強の絆』を調停するためにある。あんな鉄屑の相手は、最初から俺一人で十分だ」
俺は九色のインナーカラーを指先で弄り、不敵な笑みを浮かべた。
無魔力の俺。だが、俺の胸に宿る星痕には、既存の身内たち──フェリス、レオン、アルゴ、シオン、アクア、ゴルド全員の魂のエネルギーが、ルナの天秤を介して一切のロスなく限界突破でスタックされている。
「主! データの逆算は不要だ! そのまま正面から、帝国の傲慢を捩じ伏せてやってくれ!」
アクアが清流の髪の眼鏡を押し上げ、確信に満ちた声で叫ぶ。
「シリウス様ぁーっ! ぶっ飛ばしちゃってください!」
サクラピンクの髪をなびかせたフェリスの祈りが、俺の星痕をさらに輝かせる。
俺は一歩、前に出た。
迫り来る漆黒の消滅光線に対し、極彩色の神光を宿した右拳を真っ直ぐに突き出す。
ズガァァァァァァァァァァンッ!!!!
概念を消滅させる虚空の光と、俺の星の拳が正面から激突した。
周囲の空間がバリバリと悲鳴を上げて割れ、次元の隙間から極彩色の火花が飛び散る。
「な、何だと……!? バカな、あり得ん! 我が帝国の崩界砲は、神の概念すら消し去る至高の遺産だぞ!? なぜ、無魔力の落ちこぼれ風情が、正面から受け止めて押し返してきているんだッ!?」
城壁の上の将軍が、目玉が飛び出んばかりに驚愕し、腰を抜かして悲鳴を上げた。
「だから言っただろ。お前らのチャチな兵器が消せるのは、せいぜい『世界が作った概念』までだ。あいにく、俺と身内たちを繋ぐこの極彩色の絆は、世界のルールなんかより遥かに重てぇんだよ」
俺は九色の前髪をかき上げ、最高にクールな笑みを浮かべた。
ルナの調停によって純度100%の星の概念へと変換され、スタックされ続けた既存メンバーの総エネルギーが、ついに概念消滅の光を文字通り「正面から蹂躙」し、逆流を始める。
「これが──俺たちの、新しい世界のルールだッ!!」
俺が右拳をさらに一歩踏み込んで振り抜いた瞬間、極彩色の神光が黒鉄の崩界砲をエネルギーごと包み込み、総督府もろとも跡形もなく粉砕した。




