第70話:国境の激突と、鉄壁の防衛線
黒鉄の要塞都市へと続く一本道。その国境線に差し掛かった俺たちの前に、文字通り鉄の壁が立ちはだかった。
帝国の最前線死守部隊──その数、およそ数千。さらにその後方には、重厚な装甲に身を包んだ巨躯の禁忌魔導兵器『アイアン・タイタン』が十数体、地響きを立てて迎撃陣形を敷いていた。
「来たな、無魔力の皇子シリウス! ここから先は帝国の絶対防衛圏だ! 貴様らのような不規則分子を、これ以上我が領土へ一歩たりとも踏み込ませるわけにはいかん!」
前線を率いる帝国将軍が、巨大な大剣を俺たちへと突き付け、大音声で叫ぶ。
数千の兵力と、一国を滅ぼしかねない魔導兵器の軍勢。常人ならばその威圧感だけで絶望し、膝を突くであろう圧倒的な質量がそこにはあった。
「フッ、絶対防衛圏だぁ? 相変わらず、お前らは自分たちに都合のいいルールを作るのが好きだな」
俺は九色のインナーカラーを指先で弄り、不敵な笑みを浮かべた。
俺の背後では、既存の身内たちが今か今かと暴れ狂う瞬間を待ち侘び、それぞれの最強のオーラを爆発させている。
「主、小細工は不要ですね。私の計算によると、あの前衛の装甲を一点突破すれば、敵の防衛対流は30秒以内に完全崩壊するよ」
アクアが清流の髪の眼鏡を美しく押し上げ、冷徹に侵攻ルートを確定させる。
「ルナちゃん、準備はいい? ボクたちの力が一番引き出せるように、バチッと天秤を傾けちゃって!」
シオンが新緑の髪を弾ませ、疾風弓の弦をギリィと鳴らした。
「はい……! 【天秤座】、開門──!」
ルナが白銀の髪をなびかせ、右手の甲の星痕を眩く解放する。
彼女の調停能力が発動した瞬間、戦場に漂うエネルギーの比率が、圧倒的な質量差を無視して俺たち側に100%有利な対流へと強制的に書き換えられていった。
「な、何だこの感覚は……!? 我が軍の魔導兵器の出力が、急速に低下していく……!?」
帝国の将軍が驚愕に目を見開く。
「フン、俺たちの絆の前に、数の暴力なんてルールは通用しねぇんだわ。……おいレオン、アルゴ、正面から粉砕してこい」
俺の言葉と同時に、黄金のレオンと深藍のアルゴが弾丸のような速度で前線へと躍り出た。
ルナの天秤によって限界突破したレオンの黄金闘気が一振りで数百の兵士を吹き飛ばし、アルゴの『氷結の絶対時間』が巨躯のアイアン・タイタンを駆動概念ごと一瞬でカチコチに凍てつかせて粉砕していく。
「バ、バカな……! 帝国の誇る鉄壁の布陣が、たった二人に蹂躙されていくというのか……っ!?」
「だから言っただろ。俺たちが、新しい世界のルールだ」
俺は九色の前髪をかき上げ、最高にクールな笑みを浮かべながら、崩壊していく敵陣の真ん中を堂々と突き進む。
黒鉄の要塞都市の陥落まで、もはや時間はかからなかった。




