第68話:反撃の狼煙と、次なる座標
キールが放った常闇の残滓は完全に消滅し、訓練場には再び澄み渡った青空と、心地よい風が戻っていた。
だが、静寂が戻った戦場を見つめる俺たちの視線は、すでに目の前の勝利ではなく、その遥か先──帝国の心臓部へと向けられていた。
「フッ、一級特務刺客だか何だか知らねぇが、俺たちの絆の強度を測る物差しとしては、少々物足りなかったな」
俺は九色のインナーカラーを指先で弄り、不敵な笑みを浮かべた。
「シリウス様、お怪我はありませんか……!? すぐに聖なる魔力でバイタルをチェックします!」
フェリスがサクラピンクの髪を激しく揺らしながら駆け寄り、俺の体を心配そうに覗き込んでくる。
「心配いらねぇよ、フェリス。お前たちの魔力も、ルナの天秤も、完璧に俺の星痕とスタックしてたからな。ノーダメージだ」
俺は九色の前髪をかき上げ、最高にクールな笑みを浮かべてフェリスの頭をポンと叩いた。
「……すごいです。あんなに恐ろしい帝国の刺客を、本当に傷一つなく蹂躙してしまうなんて……」
ルナが白銀の髪を揺らし、エメラルドグリーンの瞳に深い羨望と確かな信頼を宿して俺たちを見つめる。
「あはは! だから言ったでしょ、ルナちゃん! シリウスとボクたちが揃えば、どんな闇だって一瞬で吹き飛ばせるんだよ!」
シオンが新緑の髪を弾ませ、ルナの肩を親しげに抱き寄せた。ルナも今度は怯えることなく、嬉しそうに頬を緩ませる。
「さて、我が主。先ほどキールを消滅させた際、彼の残した魔導通信端末から、帝国の次なる大規模計画の座標を逆算することに成功したよ」
アクアが清流の髪の眼鏡をキラーンと光らせ、一枚の新たな図面を広げた。
「私の知恵……いや、私の計算によると、帝国はルナの身柄確保に失敗したことで、プランBへと移行したようだ。南の国境沿いにある『黒鉄の要塞都市』に、大量の禁忌魔導兵器を集結させている。おそらく、我が要塞都市を力ずくで圧殺する構えだね」
「ほう、向こうからわざわざスクラップの山を用意して待っててくれるわけか。面白ぇじゃねぇか」
黄金の髪を揺らしたレオンがオッズアイの瞳を獰猛に細め、ゴルドも拳をボリボリと鳴らす。
「他人のルールに縛られてコソコソ逃げ回るフェーズは、もう終わりだ。これからは、俺たちのルールで帝国を正面から蹂躙しに行くぞ」
俺は不敵に口元を歪め、集まった最強の身内たちを見渡した。
ルナの【天秤座】の調停を得て、既存メンバーの連携はもはや神の領域へとスタックされている。受けて立つのではない、こちらから仕掛ける絶対的反撃の旅路が、今ここに幕を開けた。




