第67話:極彩色の神光と、崩れ去る常闇
ズガァァァァァァァァァァンッ!!!!
俺の右拳から放たれた純度100%の『星の概念エネルギー』が、訓練場を覆っていた絶対絶命の闇を、内側から文字通り粉々に叩き割った。
バリバリとガラスが割れるような音と共に、世界に光と音が引き戻される。
「ごふっ……ぁ、あり得ん……! 我が固有異能【常闇の牢獄】が、五感を奪われたただの無魔力の拳に打ち破られるなど……そんな不条理な因果があってたまるかッ!」
キールが大量の鮮血を吐きながら吹き飛び、地面を無様に転がった。空間を腐食させていた黒いオーラは完全に霧散し、その赤い単眼は恐怖で激しく見開かれている。
「フッ、因果だの不条理だの、お前らが勝手に作ったルールを俺たちに押し付けるなよ。俺の横には、世界のバランスを正しく導く最高の『天秤』がいるんだ」
俺は九色のインナーカラーを指先で弄り、不敵な笑みを浮かべた。
俺のすぐ隣では、白銀の髪をなびかせたルナが、右手の甲の【天秤座】の星痕を美しく輝かせながら、エメラルドグリーンの瞳でキールを毅然と見据えていた。彼女の調停がなければ、いくら既存メンバーの絆があっても、五感を遮断する闇を逆算して捉えるのは難しかっただろう。
「ルナちゃん、ナイス調停! おかげでボクの風の道もバッチリ通ったよ!」
シオンが新緑の髪を弾ませ、疾風弓をキールの眉間へと引き絞る。
「フフ、私の計算通りだね。ルナが私たちの絆にスタックしてくれたことで、我が主の星痕の出力はこれまでの理論上の限界値を遥かに凌駕した。これこそが完全なる『最適解』だよ」
アクアが清流の髪の眼鏡を美しく押し上げ、冷徹に微笑んだ。
「ひ、ひぃっ……! 化け物どもめ……! 帝国を、我が至高のプランをコケにしおって……!」
命の危機を察したキールが、残る魔力を振り絞って再び黒い霧へと姿を変え、決死の速度で上空へと逃亡を図る。一級特務刺客としてのプライドを捨てた、一目散の敗走だった。
「――私の『氷結の絶対時間』からは、光も闇も、逃げることなど許されません」
アルゴが深藍の髪の騎士服を翻し、静かに剣を鞘へと収める。
パキィィィィィィンッ!!!
その刹那、キールが逃げ込もうとした上空の空間そのものが、絶対零度の氷の結晶となって完全にフリーズした。霧の姿のまま空間ごと凍りつき、身動きを一切ロックされるキール。
「さあ、シリウス様! 仕上げをお願いします!」
フェリスがサクラピンクの髪をなびかせ、両手から極上の聖なる魔力を俺の胸へと注ぎ込む。レオンの黄金の闘気、ゴルドの金剛闘気、既存の全員のエネルギーが、ルナの天秤を介して一切のロスなく俺の星痕へとスタックされていく。
過負荷でバチバチと大気をきしませる極彩色の神光を右拳に宿し、俺は九色の前髪をかき上げた。最高にクールな笑みが、凍りついた刺客の瞳に映る。
「帝国に帰ったら、上司に伝えておけ。次に向こうのルールを破りに行くのは、俺たちの番だってな」
極彩色の星の力が、夜空へと逃げようとした帝国の悪意を、跡形もなく蹂躙した。




