第63話:天秤の覚醒と、志を共にする誓い
「バカな、モンスターどもめ……! 我が部隊が、これほど一方的に蹴散らされるなど……!」
帝国の指揮官が、腰を抜かして地面を這いずりながら絶叫する。
周囲では、レオンの金剛闘気とシオンの嵐、そしてアルゴの氷結が文字通り敵をチリ一つ残さず蹂躙し終えたところだった。残るは、この指揮官ただ一人。
「フッ、手品も軍隊も、俺たちの絆の前にはただの児戯にすぎねぇんだわ」
俺は九色のインナーカラーを指先で弄り、冷徹に口元を歪めた。
その背後で、ずっと呆然としていたルナが、おそるおそる俺の背中に声をかけてくる。
「どうして……。本当に、私の力を奪おうとしないの? 私を縛って、無理やり命令しないの……?」
そのエメラルドグリーンの瞳には、まだ過去のトラウマによる戸惑いが残っていた。利用されるためだけに生きてきた彼女には、見返りを求めない俺たちの強さが、どうしても信じられなかったのだろう。
「何度も言わせるな。俺たちは今いる身内だけで完成された『最強』だ。お前の力をアテにして助けたわけじゃねぇ。お前が、ただ理不尽に泣いていたから手を貸した。それだけだ」
俺は九色の前髪をかき上げ、最高にクールな笑みを浮かべた。
するとその瞬間、俺の胸の星痕レーダーが過去最大級の光を放ち、目の前のルナの右手の甲にある紋章と、眩い極彩色の光のラインで結ばれた。
「──なるほどな。状況把握、なんて野暮な計算は不要だ。お前が宿しているその紋章の正体……今、俺の星痕がハッキリと識別したぞ」
俺はルナの目を真っ直ぐに見つめ、その名を呼んだ。
「お前の右手に宿る力は、世界のあらゆるパワーバランスを正しく調停する、黄道十二星座が一つ──**【天秤座】**の星痕だ」
「天秤座……それが、私の力の名前……?」
ルナが自身の右手を愛おしそうに見つめる。その瞬間、彼女の心を満たしていた疑心暗鬼の霧が、俺たちの真実の絆に触れて綺麗に消し去られた。
「私……利用されるだけの道具じゃない。シリウス様、あなたの、あなたたちの力になりたい……! 私のこの天秤の意志を、あなたたちの絆にスタックさせてください!」
ルナの瞳に、初めて自らの意志による強い信頼の光が宿る。志を共にする、真の仲間が生まれた瞬間だった。
「あはは! よく言った、ルナ! これでボクたちの新しい妹ができたね!」
シオンが新緑の髪を弾ませて大喜びし、フェリスもサクラピンクの髪を揺らして優しい笑みを浮かべる。
「フフ、素晴らしいね。ルナが志を共にしたことで、私たちのエネルギー対流の効率はさらに跳ね上がるよ」
アクアが清流の髪の眼鏡を押し上げ、満足げに微笑んだ。
「よし、お前ら。新しい身内の歓迎会だ。要塞都市に戻って、フェリスの美味い飯で盛大に祝杯を挙げるぞ」
俺は不敵に笑い、ルナを中央に迎え入れた極彩色の魔王軍と共に歩み出した。
天秤座の調停を得て、既存メンバーの能力すらもさらなる次元へと引き上げられた俺たち。帝国への絶対的な蹂躙劇は、ここから第二幕へと突入する。




