第58話:新たなる予兆と、謎の少女
帝国の牙を完璧に退けた要塞都市は、かつてない活気に満ち溢れていた。
既存の身内たちの絆と能力は完全に研ぎ澄まされ、もはや一国の軍隊すら正面から蹂躙できるほどの進化を遂げている。
だが、夕暮れの城壁に立ち、南の大地を見つめていた俺の胸の奥で、しばらく鳴りを潜めていた星痕レーダーが突如として微かに震えた。
「……ん?」
俺は九色のインナーカラーを指先で弄り、不敵に目を細める。
これまでの誰とも違う、極めて純粋で、どこか儚くも芯の強い、未知の波動。それは遠く離れた平原の境界から、まるで助けを求めるかのように微弱に、だが確実に俺の星痕へと響いてきていた。
「我が主、どうされましたか?」
黄金の髪をなびかせたレオンが、オッズアイの瞳を鋭く光らせて俺の隣に並ぶ。
「いや……。どうやら、まだ見ぬ『イレギュラー』が、向こうからこちらへ近づいてきているらしいな」
俺の言葉に、アクアやフェリスたち既存のメンバーが静かに集まってくる。
すでに十分すぎるほどの布陣が揃った極彩色の魔王軍だが、星の運命が引き寄せる新たな出会いまでは止められない。
「アクア、その座標の先にあるのはどんな場所だ?」
「フフ、私の計算によると、その先にあるのは古代の精霊が眠るとされる『迷いの森』の境界線だね。現在、そこへ向かっていくつかの不審な魔力反応が移動しているよ」
清流の髪を揺らすアクアが、眼鏡の奥の瞳を光らせて図面を指し示す。どうやらその未知の波動の主は、何者かに追われているらしい。
「あはは! 誰だか知らないけど、シリウスの星痕に引っかかったってことは、ボクたちの新しい身内になるかもしれない子だよね!」
シオンが新緑の髪を弾ませ、好戦的に微笑む。
「……どんな子が待っているにせよ、私の『氷結の絶対時間』でその行く手を阻む敵を凍てつかせ、安全に我が主の元へとエスコートしてみせよう」
アルゴが深藍の髪の騎士服を翻し、静かに剣の柄に手をかけた。
「シリウス様、もしその子が怪我をしていたり、お腹を空かせていたら、すぐに私が特製のご飯で看病しますね!」
フェリスがサクラピンクの髪を揺らし、新しく訪れるかもしれない仲間を思いやるように、優しい瞳で微笑んだ。
仲間たちの信頼を背に、俺は九色の前髪をかき上げ、最高にクールな笑みを浮かべた。
「おいお前ら、出陣だ。俺たちのルールに従って、その運命ごと綺麗にスタックしてやる」
迷いの森の境界で、ボロボロになりながらも必死に逃げ続ける、一人の見知らぬ少女。
彼女が秘める未知なる星座の力と、極彩色の魔王軍が交わる時、新たなる蹂躙の幕が上がる──。




