第53話:深海の撃破と、進化する絆
「状況把握。──アクア、座標の固定は完了したな」
俺は九色のインナーカラーを指先で弄り、不敵な笑みを浮かべながら敵の本陣を睨み据えた。
上空では、フェリスの【乙女の処女宮】によって浄化された聖水が、恵みの雨となって要塞都市の農地を潤している。フェリスの神聖バフにより、俺たちの魔力はすでに上限を超えて滾っていた。
「当然さ、我が主。敵の本陣、深海王の依り代となっている巨大イカの核──その座標はすでに私の『知恵の水瓶』が完全にロックしている。そこへ君の圧倒的なスタックを叩き込めば、数式は美しく完結する」
清流の髪を揺らすアクアが、眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせて断言した。
「よし。おいお前ら、あの海のゴミ溜めごと、一撃で蒸発させるぞ!」
「おうよ! 俺の金剛闘気、すべて魔王様の右腕にスタックだッ!!」
「僕の風で、シリウスの進む道を真空の超特急にしてあげる!」
「私の毒熱、極限まで圧縮してその拳に宿してあげるわ」
ゴルドの剛力、シオンの神速の風、サシャの猛烈な毒炎、さらにレオンの規律、カインの破壊、アルゴの氷結概念。既存メンバー全員の最大魔力と意志が、俺の肉体へと一気に重ね掛け(スタック)されていく。九つの個性が一つに溶け合い、俺の右拳は世界のルールを書き換えるほどの極彩色の神光を放ち始めた。
「状況把握──。これで終わりだ」
ドンッ……!!!
シオンの風が拓いた真空 of 光道を、俺は『縮地』すら超えた絶対的な神速で駆け抜けた。一瞬で平原を飛び越え、数万の深海軍勢の頭上をすり抜け、敵の総大将である超巨大魔獣の眼前に君臨する。
「ギ、ギガァァァァァッ!?」
巨大魔獣が恐怖に無数の触手を蠢かせるが、すでに遅い。
「すべてを耕し、蹂躙する。それが俺たちのルールだ」
極彩色の神光を纏った俺の拳が、アクアの示した座標──魔獣の核へと真っ直ぐに突き刺さった。
ズガァァァァァァァァァァンッ!!!!!!
平原全体、いや南の海そのものが激しく震動するほどの、規格外の爆破エネルギーが炸裂した。サシャの毒熱とカインの破壊概念が魔獣の内側から完全に融解させ、空間ごと敵の本陣をチョキンと消滅させる。
数万を誇った深海の軍勢は、拠り所である依り代を失い、一瞬にしてただの水泡となって平原へと霧散していった。
「状況把握。──開戦からわずか数分だな。お前ら、最高の計算通りだ」
俺は九色の前髪をかき上げ、最高にクールな笑みを浮かべて要塞都市へと舞い戻った。
「シリウス様、お疲れ様です! 街もみんなも、無事で本当によかったです……! 私、もっと美味しいご飯を作ってみんなを元気にしますね!」
フェリスがサクラピンクの髪をなびかせ、大仕事を終えて少し疲れた様子ながらも、最高の笑顔で迎えてくれた。
「よくやった、フェリス。お前の大防御がなきゃ、街が水浸しになるところだった。最高の聖女様だな」
俺が無骨にその頭を撫でると、フェリスは顔を真っ赤にしながら嬉しそうに微笑んだ。
「フフ、実に見事な勝利数式だ。私の計算を遥かに超える、極彩色の魔王軍……この知恵を君に捧げて正解だったよ」
アクアも満足げに頷き、レオンやゴルドたち既存の身内も、フェリスとアクアの活躍を称えて大歓声を上げた。
大砂海の知略に続き、深海の脅威すらも完璧な総力戦で退けた要塞都市。
仲間は十分に揃った。これからは、この最強の既存メンバーたちと共に、世界をさらに深く蹂躙し、耕していく。進化した要塞と極彩色の魔王軍の絆は、何者にも引き裂けない。




